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カテゴリ:文化
日本人は他人に意地悪な国民なのかもしれない。 成田空港から家に向かう電車の中、私の足を踏んだ人が二人いた。そして、二人とも、謝るどころか何も言わずに通り過ぎていった。あれだけあからさまに踏んでおいて気が付かないはずはないのだが。 驚きながら、私は、10年以上前に起きたひとつの小さな ―― 非常に小さな ―― 出来事を思い出していた。 当時、通学に利用していた電車は非常に混雑しており、乗り降りに私は毎朝難儀していた。ある朝、いつものように品川駅で乗り換えようとした私だったが、あまりの混雑に電車を降りることができない。 「すみません、降ります」 と言いながら進もうとするのだったが、身動きが取れない。通常は出口付近の人がいったんホームに降りるなどして道を空けてくれるのだが、その日に限って、ひとりの男性が頑なに立ちはだかり、私が進もうにも進めないのだった。 私はその男性に向かって、「すみません、降りたいのですが」 と告げた。しかし、聞こえないフリをしているのか、その男性は一向に動く気配がない。仁王立ちの姿勢に、歯を食いしばったような表情。私は大きな声でもう一度言ってみる。 「すみません、降りたいのですが」 しかし反応はない。 ほどなく乗車する人の波が押し寄せてきて、私は周りの人に訴えるように 「すみません、通してください」 と繰り返すのだったが、ベルの音とともにあえなくドアは閉まった。数人の乗客の同情するような顔。仁王立ちの男性の勝ち誇ったような顔。 私は怒るより以前にびっくりしてしまった。どうしたらそんなにいじわるになれるのか。日本はストレスの多い社会であるから、そうやって、見ず知らずの他人にささいな意地悪をすることによりストレスを解消しようというのか。 私もきつい性格をしているが、そういった陰惨なものではないことに我ながら安堵した。 ★ ★ ★ 駅に着いたら見覚えのある顔があった。母と姪 (その一) と友人である。これはかなりの奇遇だな、と思いながら改札を出ると、またしても見覚えのある顔があった。姉と姪 (そのニ) である。これまたかなりの奇遇だな、と思った。 夜、隣の市の花火大会が屋根越しにちらっと見えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 4, 2004 01:40:53 PM
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