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カテゴリ:劇団四季(観劇)
引き続き、ネタバレありです。
---☆☆☆ 冒頭は李香蘭の裁判の場面。 憎しみに満ちた法廷。とてもショッキングな始まり方だけど、これで一気に物語に引きずり込まれる感じでした。 ここから、香蘭が過去に思いを馳せるというか…過去を告白するような形で舞台は展開。 幼い山口淑子さんが養女となって、李香蘭という名前をもらうところから始まるのだけど… ここで登場の玉林の台詞が、余りにもりに抑揚がないのにちょっと「えー…?」と。でもこれは杉本に距離を感じているという表現なのかもしれないです。 関東軍が歌う『満蒙は日本の生命線』 曲の内容はともかく、男声コーラスがとてもかっこいいと思ったナンバーです。 そして踊る種井さんが何だかとても楽しそうに見えてしまったのは私だけでしょうか。 あと川地さん(たぶん)がとっても渋くてかっこよかった! そんな(どんな?)軍人たちが陰謀をめぐらす中、満州国が誕生。マンチュリアンドリームの場面です。 川島芳子は「おせっかいな奴」と言ったけど、心から五族協和の夢を満州に託した人々がいたことは事実のようです。 そういう日本人の象徴が杉本なんでしょうね。 希望に満ちている杉本の目やライトでいっぱいに照らされた舞台を見ていると、その先を知っているだけに、かえって儚さが強調されているように感じられました。 平頂山事件などを境に、抗日運動に立ち上がる中国人たち。 玉林と愛蓮も闘うことを決意するのですが…またこの場面の五東さんがいいんです! 中国人学生の歌もいいですが、そこに愛連が加わると“秘められた闘志”がひしひしと伝わってくるんです! 芯の強い女性ってこういう人のことを言うんだなぁと思います。 香蘭と別れることは辛いけど、闘うことは怖くはないのですね。 ついに日本が真珠湾攻撃を仕掛けたところで1幕は終わり。 背中がすぅっと冷たくなるような…恐いとしか言いようがない終わり方でした。 ニ幕は海軍の『月月火水木金金』のナンバーから。 ちょっと笑いを含んだように話す濱田さんの川島芳子が、素敵でした。 働きすぎの日本人を馬鹿にしているわけではなくて…「おーおー、頑張るねぇ」って可笑しくも微笑ましく思っている感じ。 キツさだけじゃなくて、こういうソフトさが出ているのが濱田さんの川島芳子の魅力かなと。 そして続くのが、李香蘭のリサイタル!!ここだけは本当にリサイタルを見ているかのような美しさでした。 李香蘭を演じる野村さんのオーラとは違った種類の、リサイタルの舞台に立つ李香蘭としてのオーラがばーっと出てるんです。 戦争に突入していく時代にあって、それは本当に夢のような時間だったのだろうなというのがよくわかります。 その頃、玉林と愛蓮は遊撃隊の仲間と共に国のために戦っているのですが…これが中国語で歌われる『松花江上』の場面です。 劇場入口で日本語訳詞の紙をいただきました。 劇中にその紙を目で追うわけにはいかないので…正確な意味は取れないのですけど、美しいメロディーと五東さんの歌で、もう泣きに泣かされました。 意味はわからなくても、国や仲間を思う気持ちがとにかく伝わってくるんです。 よく、戦争に大義があるとかないとか言うけれど、それは国対国の次元の話であって。 実際にいろんなものを背負って闘っている個人にとっては、どちらが良くてどちらが悪いと片付けられる問題ではないのです。きっと。 やがて杉本の元にも召集令状が届き、彼は南方に送られることになります。 この杉本と香蘭の別れにも泣かされました。二人が別れるということよりも、二人の認識のギャップが辛いんですね。 香蘭は、危険は承知だけれども何とか無事帰って来てほしいと思っている。つまりその可能性があると思っている。 一方杉本は、南方に行く以上、生きて戻れないことが文字通りわかっている。 わかっていながら、香蘭のためにその事実は告げないんですね。 全然“ちっぽけなヒューマニズム”なんかじゃないし!! こうやって多くの人々が何かに踏ん切りをつけて、飛び立っていく辞世の場面。 やっぱりここが一番こたえるんじゃないでしょうか。。。 キャストさんの面では、正直ちょっと演技が平均的な気がしたのが残念ではあったけど(深水さんや青山さんのような個性的な若者も観たかった)。 でも一番重いシーンだと思います。 後ろに流れる映像がまた「痛い」んですよね…。飛行機がまるで紙屑のように、クルクルクルクルと落ちていく…。 こんなに色んな思いを抱えて飛び立っていくのに、全然報われてないやん!ってたまらないです。 死が「報われる」っていう言い方が正しいとも思えないけれど。 そして仮に「報われた」としても、その瞬間、他国で同じ苦しみを味わった人が生まれるわけで。 考えがまとまらないけど、この場面だけは絶対に忘れてはいけないと思いました。 そして敗戦。 川島芳子は漢奸罪で捕らえられて処刑。 自嘲しながら、でも最後まで自分の運命を真っ向から受け止めようとする川島芳子の、血の気が引いた表情にも胸が痛みました。 李香蘭も漢奸罪の疑いで裁判にかけられることになり、冒頭へと話がつながります。 日本人である李香蘭に漢奸罪は適用出来ないため、裁判官の判決は… 「憎しみを憎しみで返すなら争いは続くだろう。徳をもって怨みに報いよう」というもの。 安堵するのと同時に、この一言にたどりつくまでにどれだけの命が失われたのかと考えると… 逆に思いは戦争へと帰っていき、より深くこれまで観てきたストーリーを思い返す結末となりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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