2008/02/14(木)13:20
私は夫に殺される??? 「断崖」
(夫は私を殺そうとしている!?)妻の恐怖心は増幅する・・・
ヒッチコックの見事な心理サスペンス!!
数々のテクニックを駆使して、見る者の恐怖心を高めていく。暗い階段の光と影。
その1: プレイボーイと結婚した名門の令嬢は・・・
ハンサムなジョニー(ケイリー・グラント)に一目ぼれして結婚したリナ(ジョーン・フォンティン)だったが、"社交界の花形”だと思ったジョニーは実は文無しのギャンブル狂だったと判る。
「レベッカ」に主演し、脚光を浴びたフォンティンの2度目のヒッチコック作品だが、この作品で彼女は見事オスカーを手にした。夫が財産目当てで自分と結婚したのではという疑惑と疑心、愛情に揺れ動く演技が認められたのである。
結婚前の二人がパーティを抜け出し車の中でのシーン。
「車でキスしたことは?」
「冗談言わないで、返答に困るから」
「真面目だよ。・・・車でキスしたことは?」
「無いわ」
「してみたい?」
「ええ」
「本心を素直に言った女性は初めてだ」
「・・・云ってはいけないことかしら? あなたを愛しているわ」
「いけないことじゃない」
「どこへ?」
「分からん、怖いんだ。君を愛してしまいそうだ」
恋の駆け引きも見栄も、男の歓心をかおうとする媚もみせないうぶなリーナに、プレイボーイもつい本気になるシーンだ。
その2: 一歩一歩階段を上がるように恐怖が忍び寄る・・・
リーナの父親が死に、遺言に従って遺産の分配がなされるが、定職を持たず賭け事に熱中している遊び人を夫にしたリーナには、僅かな遺産しか残されなかった。
日々の出来事の中で、夫に対するリーナの疑念は募り、保険金目当てに自分を殺すのでないかと疑いはじめる。
ある日、ジョニーがリーナに聞く。
「結婚を後悔したことは?」
「なぜ聞くの?」
「ぼくと結婚していなければ、遺産をたくさんもらえた」
「くだらないわ」
「答えてくれ」
「あなたは後悔してる?」
「ただ一つ満足してること、それは君との結婚だ」
「本当?」
「本当だ、君と生涯を送りたい」
遂に夫は”毒”の研究を始める。彼女の恐怖心は急上昇、体調を崩すのだ。
暗い階段を上がって、ジョニーがリーナにミルクを持って行く。この中に毒は入っているのか、いないのか?
このシーンでは影の陰影を強調し、コップの中に豆電球を入れ、ミルクだけを明るく浮かびあがらせた。
その3: 「夫は殺人鬼??」妄想に取り付かれたリーナは・・・
やがて妄想の虜になったリーナは、実家の母に会いに行くと云って家から逃げ出すが、送るといって車を運転する夫の車から飛び出そうとする。果たして夫は殺人鬼か、それとも妻の被害妄想か・・・・
最初の設定では夫は妻を殺すことになっていたが、映画会社のRKOが2枚目のケイリー・グラントを悪役にすることを許さなかったそうである。
1941年 アメリカ・モノクロ 監督 アルフレッド・ヒッチコック 出演 ケーリー・グラント ジョーン・フォンテーン サー・セドリック・ハードウィック ナイジェル・ブルース ディム・メイ・ホイッティ アザベル・ジーンズ
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