『成層圏の灯』(2)鳥人ヒロミ
『成層圏の灯』(2)鳥人ヒロミあわわ文庫は上下巻でなく、1、2巻表示だった。三浦しをんさんの絶賛ぶりに、わざわざ古本屋で探して読んだのが去年。書き下ろしはないと知りながらも、文庫化を待って再度読む。再度面白がる。これ、世に出るのが早すぎる作品だったんじゃね?最初に読んだ時は、後半の英ちゃんの壊れっぷりが見事だと思ったが、読み直すと生い立ち暴露編の前半のほうが面白い。なぜここまで壊れるかの裏づけは、ほとんどのラノベやBLではかかれることのない部分なので、作家さんの力量を感じる。ああいう壊れた人、実際にいるから怖い。それに、ご本人があとがきで、発表当時、ベリショートでリバという英ちゃんの設定がリアルゲイすぎて不評だったと書いていて爆笑。そうそう、自分のツボもそこだった。こういう人、デザイナーにもカメラマンにも山ほどいたんだよ。そんでもって本気で好きになって告白して撃沈したのは自分だ(爆)。ああ~レズに走らなくてよかった。それにしても、読み返してみると、つくづく聖さんに同情する。手塩にかけた甥であり愛人である20歳も年の離れた男の子が、いつの間にか自分の背丈を追い越してガタイも大きくなって、気がつくと襲われる側に立っていたというのは恐怖だろうな。英ちゃんの不安定な精神状態は、勝手な思い込みと罪悪感なんだろうが、終わってしまった過去の出来事が、今の淫乱さ(性に対するモラルの欠如)という異常さの説明にちゃんとなっていて、そこまで考えてストーリー練っていたかと思うと、鳥人さん、もうあと何も描かなくてもいいよという気になる。映画監督や作家にも一発屋は多いけど、若い時分に我知れず代表作描いてしまった人の人生を思いやるのであった。まあ、生きているうちにセレブレートされるだけましかな。