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カテゴリ:ラノベ・一般小説
最初に読んだのは初版が出た直後だから、もう8年も前になるのね。当時は高村熱が一段落して京極や森博詞、藤木禀あたりにはまっていた頃かな。ミレニアムイヤーに事故って救急外来搬送された時、出たばかりの3冊目(「水の中の魚」)を持っていたので、それ持って入院したのを覚えている。 原稿用紙1200枚という大部の小説を読んだのはほんとうに何年ぶり。日曜に断続的に読んでいて読み終わらず、結局昨日までかかった。 久しぶりに読んだら、覚えているのはエディと葉山と、冒頭に出てくるサーシャ、そして「プラチナ・ビーズ」の意味するものだけで、ストーリーはまったく忘れていたので、新鮮だった。昔はそれほどキャラ萌えしなかったと思うんだけど、読み直すと坂下も吾郎ちゃんも、野口女史もみんないい! 坂下みたいなキャラは昔は一番苦手なタイプだったのに、なんか許容範囲広がったな>自分。 坂下が追っている米軍脱走兵の殺人事件と、葉山がごく普通に面会した対象者。なんの脈絡もないこの2つの点が、「北」をキーワードに接近してくる。 非公式な2度目の接触があったために(つまり葉山の不注意で)殺されてしまう対象者。葉山にとりつく尾行。一件なんの脈絡もない2つの事件がつながる瞬間、そして葉山が「プラチナ・ビーズ」の意味を知る刹那。うう~ん何度読んでもぞくぞくするなあ。 エディは現場には出て行かないし、指示するだけだが、ウラでは権力の限りを尽くして葉山をガードしているのがわかってうれしかった。坂下と葉山がインドネシアへコメを運ぶ貨物船に乗り込むのも、その後、米軍のヘリに救助されるのも、すべてエディの力だもんねえ。すごいよ、エディ! 一番萌えたのは、もうなんといっても、ピンクのゴルフシャツを着たエディが、英字新聞を読みながら、まるで「散歩の途中でかたつむりを見た」というのと同じ気軽さで、葉山が気にしていた対象者が遺体で発見されたことを告げるシーン。いいよ、エディ! あえて神経逆撫でするような告知が葉山の心の傷を増やしていくんだな。 岡元らにぼこぼこにされた葉山を自分の宿舎まで連れ帰って手当てをする坂下のくだりもいい。隣に住む軍属の医師をたたき起こしたまではいいけれど、ぞんざいな治療とケアに目をむく葉山。「あの医者の専門は何なんだ?」と問う葉山に「眼科」としれっとして答える坂下。こういうやりとりが、すごくいい。 車の中でのやりとりとかみていると、葉山の前だと坂下はだだっ子になるような気がする。でも、葉山を守ってやれるのは自分だという自負もあるらしい。ここにプッシー以外のもうひとつの選択肢が出てくるわけよ、坂下、わかってる? どこも知っている地名と行ったことのある場所で、「ああ、あのへんか」と推測できるのも楽しい。小説に出てくる地名を訪ねて歩くことを「地どり」というが、万葉集の地どりもしていた自分は、いわばプロだ(笑)。都内も、横須賀も福生の基地の位置もわかるけど、残念ながらゲートも向こうへは行けないのがくやしい。4章「ヘラクレス」に入ってからは、貨物船の内部構造なんてぜんぜんわからないから、さっぱりだったが。でも海軍所属の坂下が生き生きしていて、かわいかった。狭いゲストルームで、船酔いで半死半生の葉山を尻目に、腹筋と腕立てを繰り返す坂下ってば萌え。 人間関係がなかなかいいんだよな。 まずエディを軸につながる人間関係。葉山、坂下、JDほか「会社」関係の人々。エディ本人は本当に脇の脇なのに、なんでこんなに出張って見えるんだ。完ぺきなワスプなんてものは存在しないと思っていたけど、「かすり傷ひとつない軍歴」って、マジ? 坂下と葉山は外見も中身も水と油だが、唯一、陸上経験者という共通点がある。しかしホノルルマラソンに出たときは、熱さでバテた葉山のペースに合わせて伴走したことを美談として報道されたことを、坂下自身は自分の恥だと思っている。こういう、どうでもいい過去のエピソードから、二人の並々ならぬ友情か庇護関係が浮かび上がってくる。 坂下は口が悪く思いやりもなく、大の女好き。だが仕事はできる。葉山はバディのつもりで坂下と行動を共にするのに、エディに言わせれば、坂下は葉山のボディガードであり見張りでありお守りなんだよなあ。でも葉山には、簡単に同情なんてしない、こうした無神経な友人が絶対必要だ。 葉山の父のこととか、弟のことがなかなか語られないので、あれ~? と思っていたら、父については葉山を尾行していた警官上がりの興信所の所長から口ぎたなく暴露される。固まる葉山が哀れ。弟はといえば、ただのゲイだった。なあ~んだとBL脳は考えるのだが、やはり世間一般の常識としては認められないのね。葉山あ、あんたとエディだって相当なもんよお? 洪も、ゲイだのバイだの公言しているあやしいジャーナリストで、チビであばたという外見で油断させておいて骨を断っちゃう憎い奴。ユダヤ人的なだまし方をするんだろうなあ。洪がやたらと葉山に手を出したがるところがなんかおかしい。情報が傷を縫ったところを見せる(そして触る)のと引換えなんて、相当の変態とみた。彼が主役の話もあるらしいけど、葉山やエディを知ったあとでは、ルックス的に魅力が半減するなあ。 吾郎ちゃん、そうそう、あんたはおかまのゲイで2丁目勤務なのに、異母兄弟の葉山を常に心配しているいいやつだった。 坂下とJDは典型的な女好きだから、怪しい関係にはならないが、エディと葉山・坂下の三角関係や、坂下・葉山のパワーゲームは面白い。三度の飯よりプッシーが好きで、プッシーよりも銃が好き。そうですか。わかりやすいですね。こういう人の脳みそをのぞいてみたいよ。 そういえば五條さん、葉山は坂下の2つ上(これは小説の中で語られていた)で、エディは葉山の6つ上とインタビューでバラしていた。まだ30代なの、エディ? 7年前のインタビューでは、エディと葉山父の話とか、エディが最前線に出てくる話についても触れられていた。早く書いてくれ~あと2冊残ってるでしょ~。別に北朝鮮がらみでなくてもいいよ。もしかしてエディと葉山は極東専門なのかな? 北がからまないと、出番がないわけ? でも拉致問題はあいかわらず進展していないし、飢餓も国境紛争も大麻栽培も絶好調だし、核保有問題まで加わったから、一層複雑になって、ますます書くネタ増えていると思うんだけどな~。あ、でも米軍の関心が9.11以降中東へ向いているから、エディも転勤とか? いやあ~~! そうだ、サーシャ。こいつも美丈夫なんだよねえ。くらくら。 彼が主役の話は他にもあるので、今回は目立たないのね。でも吾郎ちゃんが働くオカマバーで泥酔した葉山を介抱したのはサーシャだって、すぐにわかったよん。あんた、いつから日本来てたの? 2時間足らずで読み終わってしまうBL小説と比べて、この本は読みきるのに時間がかかる。BLでは主役の受攻の名前すら覚えずに忘れ去られていく登場人物の名前が、20人以上からんでくるのに、全員しっかり記憶できる。なんだ、これって愛の差かしら? 犠牲になる留美以外、女っ気のほとんどない構造が、また腐女子の妄想を加速させるんだな。自分的には息子を理解しようと、眉間にしわを寄せて少年漫画を読みふける野口女史がかっこいい。そして雑用を一手に引き受けるマメな葉山よ、お前は小心者のA型だろう? 葉山に言葉と態度でセクハラの限りをつくすサド上司のエディは、BLにしか存在しえないような完ぺきさと臭い台詞を縦横に使いこなす。 きっと葉山は、誰からもいたぶられやすいマゾ体質なんだな。坂下も洪も、探偵の水谷からもおちょくられる。その真面目すぎる気質を心配するのは、田所さんと、いたぶりながらも心配する野口女史、そしておかまの吾郎ちゃん。 なんておいしい。 ところで「プラチナ・ビーズ」は一時、白泉社の「メロディ」で漫画化されていたらしい。途中でとん挫してるのかな。見たいような見たくないような。ていうか「メロディ」って、どう考えても掲載誌のジャンル間違ってるだろっ! ちょっと自分のなかの偶像が崩れる可能性があるから探さないぞ。ええ、探すものですか。絶対……。 軍隊のおおまかな階級制度については、銀英伝で学んだけど(笑)、米軍組織についてはうといので、ちょっとウィキってみた。 国内には陸海空合わせて全国27都道県に135施設もある。ええっ! FENのジングルで語られるベースキャンプ(三島、横田、横須賀、岩国、佐世保、座間)だけじゃないんだってことに、まずビックリ。 それらを束ねる総司令部は横田基地にある。エディはここの所属なのね。総司令部。 かっこいいわ~マッカーサー~! 30代の若さで、日本語の新聞も読めるほど(おそらく韓国語も中国語も堪能だろう)東アジア通で、ルックスも体躯も完ぺきなワスプ。確かにねえ、自信満々のワスプに特に日本人はつい卑屈になってしまうからねえ。悪いクセだ。 「プラチナ・ビーズ」を読みながら、それこそ数十年ぶりにFENを聞いていたら、ちょうどベースキャンプの妻たちの人生相談の時間で、夫が浮気をしているようだとか、子供の教育とか、めそめそ泣きながら訴えていて、それに対して階級は聞きそびれたけど、回答者の女性士官がバッサバッサと、途中訴えを遮るように「それはあなたが間違っている!」とか言い切っていて面白い。古今東西、軍人の妻だろうが八百屋の女房だろうが、悩みはおんなじなんだなと納得。 外見日本人なのに中身アメリカ人(坂下)、外見白人なのに心は日本人(葉山)というのは、似たような境遇の知りあいが何人かいるな。両親アメリカ人なのに、生まれも育ちも日本のJ嬢とか(彼女の声はNHK教育でも三越でも新幹線でも聞ける)、かつての上司はまんま葉山と同じで父親が日系二世のハワイ出身で、バイリンガルだった。たしか「外交フォーラム」の編集長をしていたが……はっ、これってまんま葉山じゃない?え、Mさん、みかけ「どらえもん」だけど、葉山!? 萌え……ない(涙)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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鉱物好きとしては嬉しい長いレビューでした。人様のレビュー読むのが大好きなんで楽しませていただきましたv
ほんとにこの話には女が出てきませんよね…(笑) 洪が主役の話は「夢の中の魚」です。文庫化されてますv 何故か双葉から(笑) あと、鉱物キャラクターは最近出版された「赤い羊は肉を喰う」のほうにもチラッと出てます。野口さんが思わぬ大活躍をしてます…出番自体は少ないんですけど(笑)ちょっとだけアナリストと、WASP上司は影だけ。 あ、あとは山さんはO型です(笑) 部長さんはAB型。 レビュー面白かったです、ありがとうございます! (2007.05.15 23:11:51)
杉本恵さん
こんばんは~。 読み終わった直後の興奮冷めやらぬ感情を垂れ流しただけなので、レビューじゃなくて妄想です。キャラ萌えばかりしていてはずかしい限りです。そのうち冷静になったら、もう少しマシなものを書こうと思います(笑)。 「夢の中の魚」は家にあったので、多分読んでますが、忘れてます。「赤い羊は肉を喰う」、知りませんでした! さっそく手に入れますよ~! それより! アナリストはO型なんですか? ウッソー! あの暗さとマメさは絶対A型だと思ってました。ブチョーのABは想定の範囲です(笑)。 続き2冊って、やっぱりもう出す気ないんですかね? (2007.05.15 23:45:06)
葉山好き腐女子は見る甲斐ありですよ!
4回ほど洪と絡みますが、洪が美味しい発言を引き出しまくりです・・!!エディの影が見え隠れvv こっちは洪のラブストーリー(違)になっていますが、結構美味しいので是非読んでください! そしてレビュー、楽しみにしています・・! PB漫画、メロディな上・・軍服やスーツ系でおなじみの有名BL作家さんが書いてたみたいです。笑 (2007.05.17 22:00:02)
匿名さん
こんばんは~「夢の中の魚」、これから腐脳で再読です~。おいしいんですね!? 洪は権力はないけど、したたかさではエディの上を行っているような気がしますよ。情報のためならピロートークも厭わないような……(笑)。 五條作品を腐脳で読んでいるのが自分だけじゃないと知って、なんだかハッピーです。 (2007.05.17 23:06:05)
初めて立ち寄るのに割り込んでしまい申し訳ないです;;もう、腐女子のアタクシはプラチナ話に飢えてまして、素敵レビューについつい・・
800pのスパイ小説を萌で読んでくれ!!とは友達にも進められず・・orz 萌無しでも面白いんですが、萌えてしまう自分に乾杯!!!!!!!! (2007.05.18 11:44:37)
いえいえ~萌え話は楽しいですから、いつでも歓迎です~^^。
初版からもう8年も経っているのに、いまだ腐女子を躍らせるとは、五條パワーおそるべし!です。 (2007.05.18 22:18:02) |