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2007.07.07
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カテゴリ:評論・エッセイ
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『鴎外の三男坊』
去年の暮頃、ワインを飲みながら、森茉莉がパリで飲んでいたワインはなんだったんだろうとか考えて、久々に森茉莉全集など引っ張り出してパラパラめくっていたら、ふと、そういえば末っ子の弟はなにしてたんだっけ? と考えた。

以前、森まゆみさんの書いた森家の評伝を読んで、まるで「渡鬼」のごときファミリードラマが妙に面白かったのと、そういえば森茉莉も小堀杏奴もエッセイを読んでいたり、なぜか家には昔から森鴎外全集があったりしたので、森一族は自分の好みに合っているんだろうと思っていた。
長男は立派な医者だ。二人の娘は文筆家として名を成した。しかしまてよ、一人いたな……。それが末っ子の類だということに気がついた。

明治時代に国費でドイツ留学し、医学だけでなく文学も文化もすべて吸収して帰国した森鴎外(林太郎)のすごいところは、子どもたちにドイツ名の和名を与えたところだ。
長男:於兎(オットー)、長女:茉莉(マリ)、二男(夭折):不律(フリッツ)、
二女:杏奴(アンヌ)、三男:類(ルイ)。
そして於兎の子供たちは漢字忘れちゃったけど、マックス、レオ、ハンス、ジョージとか、そんなの。明治時代だよ。最初に知ったときは、少女マンガの世界かと思ったよ。
そんでもって茉莉の長男は爵(じゃっく)だし。明治~大正時代にこの名前はさぞや目立っただろう。

森類のことが気になり始め、でも唯一知られた著書『鴎外の子供たち』がなかなか手に入らず、たまたま仕事の資料を探しに来た会社近くの小さな区立図書館で『鴎外の三男坊』(山崎國紀)という評伝を見つけた。

初めて知る、森家の末っ子。かな~り面白い。
父親が偉大すぎるのと、兄姉がユニークすぎる家に生まれ育った彼の不幸は、まず勉強嫌いから始まった。小学校にあがった類が、あまりに勉強ができないので、教師が心配して「確かに脳の病気で勉強のできない子供はいます。しかし類くんはどこも悪くないのに、一番勉強ができません」と母親に言いにきた。そしたら母は、「いっそ頭の病気だったらどんなに肩身が広かろう。どうか病気でありますように」とか言って、病院連れていくのだ。すげえ。
前妻の子である長男於兎はすでに医学の道で父と同様に留学するほどの秀才であり、鴎外が愛してやまなかったおばかな茉莉は16でさっさと資産家の家に嫁に出していた。
類は2歳違いの姉、杏奴の奴隷だった。父が亡くなり、年の離れた長男はとうに独立し、茉莉が嫁に行くと、偉大な欧外の名を汚すまいとする母の元で、杏奴と類はふたりだけでひっそりと育つのだ。なんかすでに淫靡なんですけど(笑)。

どうにも勉強に興味がもてず、中学を中退すると、類は母に命じられて著名な画家に弟子入りする。そして後日、杏奴と二人でパリに遊学したりするのだ。
でも画家になれなかった類。
小さな本屋を開業しながら、文学同人に参加し細々と文筆に励むも、書くことで身を立てることもできなかった類。店番を妻に任せ、自転車で本を配達をする欧外の息子。

妻を愛し、4人の子供たちを均等に可愛がり、よき父親だったところは、欧外とそっくりだ。でも抜きん出たものがない類には「森鴎外の息子」という肩書きだけが生涯まとわりついた。
彼の最晩年の、長女へ宛てた手紙は涙ものだ。老いて、こんなにも美しい手紙を娘に書き送ることができるなんて、彼の才能は開花するのが遅すぎたのだろうか。

それにしても晩年の類が、激いい男(老人だが)なのに萌えた(笑)。






Last updated  2007.07.07 09:33:53
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