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2008.03.24
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カテゴリ:評論・エッセイ
54  
彼女のエッセイはどれも死ぬほど笑えてためになる

米原さんが自分のガンの再発を告白しながらも、この本を楽しみながら書いていて、もっと調べたいのに道半ばで出版することを侘びているあとがき読んで泣きそうになった。そんな泣ける内容の本じゃないのに。

そして、彼女の最後の仕事がパンツとふんどしのルーツを追求することだったことに、感慨を禁じえない(笑)。なにしろ最初に読んだ彼女の本は「魔女の1ダース」ではなく「ガセネッタ・シモネッタ」だった。昔からシモネタ大好きだった米原さんらしいし、妙齢の女性が、堂々とこういうテーマで物を書く勇気も讚えたい。自分の感覚にぴったりフィットしたよ。シモネタに始まり、シモネタに終わる。人生は素晴らしい。

体制が崩壊してしまった後の旧東欧圏を、40年も前のかつての同級生の消息を尋ねる旅(『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』)を読んだ頃からなんとなく感じていたんだけど、米原さんって、かなりな粘着質とみた。いつもは物ごとにこだわっていられない同時通訳なんて仕事をしていたから、余計に反動がくるんだろうか。ここまで執念を燃やせることがあるのはうらやましい。それはおたくの萌えとか、コレクション魂とかとは、まったく別の時限だから。だってお金で買えたりネットで調べられたりできない領域だし。

なにか一つ疑問にぶち当たると、そのルーツから影響まで調べ上げないと気が済まないというのは、自分も似たところがあるけど、すぐに限界を感じて諦める自分と違って、とことんやるのが米原流。でも、そのテーマがビロウもbelow、パンツとふんどしとは恐れ入る。

内容の大半は歴史好き映画好きコスプレ好きの自分も初めて知る事実ばかりで、驚愕しながらページをめくっていたが、後半、自分の体験や人の話より、文献からの引用が増えるのは、もう相当身体の具合が悪かったんだろうか。そう思うと切ない。

前半の、実際に見聞したことの事実がすごい。
シャツの裾はなぜ前後が長くてサイドが短いか。それはね、お嬢さん方、びっくりしないでよ。西欧ではもともとパンツを履く習慣がなく(というか、下着としてのパンツがなかった)、シャツの前後で局部を覆って、ズボンはいてごまかしていたことの名残なんだよ。(;゜д゜)!
もっとすごいのは、日本人捕虜がシベリアに抑留されている頃に、捕虜の人々が直接見聞した事実。ルパシカ(上着)の裾がみな黄色く変色しているのはね、パンツをはかないどころか、拭いていなかった!

日本人捕虜がもっとも難儀したのが、トイレに紙がなかったことで、ボロ布でもなんでもいいからと要求しても、ロシア人兵士たちは「ポカーン」とした顔。それもそのはず、彼らはもともと大の後でも拭く習慣がなかったそうだ。曰く、シベリアの大地は乾燥しているし、彼らは肉食だからウサギのフンのようなころころしたものしか排出しないから、紙が必要なかったのかもしれない(抑留者の記録)。そそそそそんなばかな!

崩壊前のソビエトで何回かトランジットしたけど、そこのトイレットペーパーもひどいものだったから、さもありなんとは思う。拭かない! 手も洗わない! そして靴のまま家の中を歩き回る! やっぱりむこうに長期は住めないわ(笑)。 まあ、どの国行っても日本人は神経質なぐらい綺麗好きだとは言われるが。「衛生的」と言ってほしいもんだ。

でも、これでビデは普及してもウォシュレットが普及しないわけがわかった。
コトの前後に奥まできれいにするのはエチケットでも、大の後になんでわざわざ濡らすのか、彼らには理解できんのかもしれない。
ヨーロッパにウォシュレットを普及させようとしていたチェリストのロストロポーヴィチは痔主さんだったのかもしれないな(笑)。

まだまだあるぞ。
・もともとヨーロッパでは、騎馬民族がやってくるまで、下着は腰巻状ばかりで、股のあるパンツ状のものはなかった。馬に乗るときはさすがにカバーしないと擦れるから(笑)。
・磔刑図や彫刻に彫られているキリストが下半身にまとっているのは、ふんどしか腰巻か。この謎を解くために「ローマ皇帝史」まで紐解く。
・ふんどしが日本固有の文化ではないことを証明するために「古事記」まで当たる。

等々、その執念やすさまじく、巻末の参考文献は150冊ぐらいある。
こういうのはネットでは調べられないし、研究者の醍醐味でもあるよなあ。ちょっとうらやましい。

ソビエトでは、戦後かなり経つまで工業製品としてのパンツが生産された記録がない(つまり、手づくりか輸入に頼っていた)とか、パンツとズロースの発生起源とか、もうどうして服飾史の専門家の上いく調査ができるんだろう? すごすぎる。頭柔軟すぎる。そしてつくづく早世したのが惜しまれる……。
そうそう、日本人は、「下着は毎日取り替える」が常識だけど、それがかなり特異な常識だってこともわかった。下着なんて替えなくてもビデがあるからいいもんね、というのが欧米流。ああああ~じーざす!

言語学的に面白かったのは、パンツ、ズボン、ストッキングの表記が、孤立語・屈折語(わかりやすく言えば米、欧、露語)では複数扱いなのに、ブラジャーはなぜ単数か、とか。これも発生起源にさかのぼると分かる。乳は1個2個か? 

米原さん、晩年は気の向くまま、こうした日陰の身に甘んじていたテーマを掘り起こして調べて書いていきたかったんだなあ。
改めて合掌……。






Last updated  2008.03.26 08:30:27
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