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2008.09.02
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カテゴリ:BL小説
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『薔薇色の人生』木原音瀬

久々に木原さんの作品で真剣に泣けた。
もうさ、こういうマージナルというか、社会から差別されても仕方のない人間書かせたらBL界では右に出るものがいないよね、木原さん。

なんかこれは「モモ&ロンちゃんシリーズ」と言われているようだけど、エンタテイメントとして楽しい「ルコちゃんシリーズ」(榎田さん)とかと違って、「あー面白かった!」って読後感じゃなくて、二人の幸せが今後もずっと続くようにと願わずにはいられない気分になってしまう切迫感がある。それほど、社会的には薄氷の上に立っているような二人なんだもの。
今年に入って読んだ木原さんの作品のなかではいちばん好きかも。
だって、ダメ人間なのに嫌なやつじゃないってのが、ファンタジーだと思うんだ。こういう、モモみたいな人間は庇護愛をそそられる。そう思ったが最後、ヤられるがな(笑)。物に依存しない生活を送っているのもファンタジーだと思う。

なにしろ高校中退・前科三犯(覚醒剤取締法)・デリヘル店長、そして不細工という、社会の底辺でうごめくチンピラ中年男が、よりにもよってクソ真面目な警察官とできちゃう話だ。
もう、二人が体を合わせる経緯も、なんつうか強制的な合意のもとで、チンピラに警官がヤられるという筋書き。ありえねえええっとか思いつつも、これまでの木原さんのなかでは、「箱の中」に最も近いノリだったので、食らいつくようにというか、なにかに憑かれたように読んでいった。

それにしても、デリヘルのシステムだの池袋の風俗店街だの鴬谷だの、木原さん、一体どうやって調べてるんだろうな。東京暮らし20年以上の自分だって、歌舞伎町の映画街まで行き着くのは結構勇気が要るのに。まさか取材はしていないよな。

でも風俗業界の求人情報誌(きゃぴきゃぴしてるやつ)をこないだ偶然手に入れて、このお仕事の仕組みは知っていたので、確かに人妻専門、あるあるとか妙にリアルに感じてしまった。「苛めて♪エマニュエル倶楽部」は風俗なのに、デリヘルなのに夜9時には店じまい、本番なし、コスプレ無料って、どんだけ人のいい経営者なんだよって思う。その経営者もちゃんと登場していて、暴力団がらみでないことも不思議だし、不細工なモモの人の良さをちゃんと見抜いて、前科三犯だろうと信頼して店を任せるだけの度量がある人、って設定でよかった。

モモのようにある意味純粋な人間が、ロンちゃんに出会えて本当によかった。モモにはなにもないからな。ロンちゃんへの愛しかない。だから彼のためならモモはなんだってする。現にロンちゃんに手柄を立てて欲しくて、ヤクザにサンドバッグにされて、海に沈められる。
ロンちゃんの弟も、変わった名字の先輩も、最初「油断ならん奴」とか思っていたのに、どんどんいい人になっていって、「えええ~木原さんの作品じゃありえない~」とか、これまた感心しながら読めたし。

基本、木原さんは、「どんな鬼畜にも男に対する愛だけはある」ってスタンスでBLを書いているから、性格の悪い奴はずっと性格悪いまんまで改心なんてしない。鬼畜でSMな攻めも、それが彼流の愛し方なので、やさしくなんてならないのが普通なのに、この作品の攻のモモは、刑務所出て来てすべてを無くした(両親は死に、帰るところはなく、兄からも絶縁を言い渡される)と思って覚せい剤飲んで自殺しようとしたところを、巡査で巡回中のロンちゃんに拾われる。
現在時点と過去がいったりきたりする構造もうまいと思う。6年かけていかにモモがいい人間になったかがわかる。

最初は無理やりだったけど、ロンちゃんと体を合わせているうちに、どんどんロンちゃんが好きになる。「この人に嫌われたくない。この人のためならなんだってする」って感覚は、「惚れた弱み」で相手が上位の恋愛ではよくあることだ。すごくよくわかる。私は恋愛じゃなくて、仕事でこういう感覚に襲われることがある。たいてい後で後悔するけどな(笑)。

ロンちゃんは、モモから「愛している」と言ってももらってないのに、こんなにつまらない自分のどこが好きなのか解らない、と思っている。これも不思議。立場上、前科三犯と警官だったら、年齢に関係なく自分のほうが上だろうって。でもそんな社会的なスタンスでものを考えないロンちゃんは、非常に変わっている。こんな人間は、現実には絶対にいない。

でもそんな二人だからこそ、月に1回しか会えなくても、会話がなくても、セックスだけでも、お互いに「おまえには自分しかいない」って信じられる。この不思議な信頼関係はなんだろうって思う。ありえない。だからこそ面白いんだけど。

これ、恋愛っていうより、お互いが相手を必要としている、ソウルメイトとか、半身とか、そんな感じだよね。ラブラブというより、モモはいつもロンちゃんをハラハラさせ、ロンちゃんも不器用な態度でモモを不安にさせる。でもそれでいい。

なんていうか、読んでいるとモモがどんどん落ちていく過程とか、BLじゃなくてもすっごく面白くて、例によって幸薄い育ちとか、でき過ぎの兄がいたからグレたとか、そのエリートの兄が、自分から絶縁しておきながら、最期はガンにかかって前科者の弟に会いたがっていたとか、残された妻子のためにモモは働いたお金を仕送りするとか、昭和なニオイがプンプンするけど、きっと底辺層にはこういう生活って、いまでもあるような気がする。今回の最大の救いは、そんな状況におかれても、モモは社会を責めるんじゃなくて、自分を責めているところだな。こういう人間は更正できる。現にロンちゃんに出会ってからは二度と覚せい剤に手を出していない。

そして「前科者のモモと警察官の自分は、今は結婚できないけど、定年退職したら籍を入れよう」なんて真面目にプロポーズして指輪まで送る。このマクロ視点(笑)な人生設計はまさに「箱」と「檻」の設定を思い出す。それにしてもロンちゃん、純粋すぎてママは心配よ?

そうそう、あんなにぼこぼこにされたモモの治療代は、誰が払ったんだろう。風俗では厚生年金や健康保険はちゃんと事業主が負担してくれるんだろうか。

おまけのショートは、ロンちゃん視点の「あらすじ」と、おせっかいなロンちゃんの先輩視点。おいしいデザートでした。
それにしても表紙含めて、イラストはいまひとつだったなあ。ヤマシタさん、マンガは面白いけど造形歪んでいるから、イラストにはむかないよ。草間さんあたりのがよかったけど、それだと「箱」と「檻」と同じになっちゃうな。





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Last updated  2008.09.02 09:08:29
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