日々是徒然

2010/01/12(火)00:25

『月館の殺人(上)(下)』作画:佐々木倫子/原作:綾辻行人

青年マンガ他(60)

  『月館の殺人(上)(下)』作画:佐々木倫子/原作:綾辻行人 年末に、物置にしている部屋に積み重ねた荷物の一番下から、リサイクルに出す掛布団を引っ張り出そうとした。ところが屈んで引っ張っていたら腰にきそうだったので断念した。これはまた、誰かに来てもらわねば、家の中の始末もつけられないよ。とか思ってふと見ると、本屋のビニールに入った物体が。なにやら大判で分厚い。 誰かに貸してた本かな? と思って中をみたら、この本が入っていた。 どうりで。佐々木さんの単行本を読み逃すわけはないのに、絶対買ったはずなのに、全然内容が思い出せないはずだよ。買ったまま5年近くも放置されていたなんて。どうやら、買ったまま納戸に入って他の用事をするうちに本の存在を忘れ、そのままその上にどんどん荷物が置かれて忘れていたらしい。 というわけで、祖父江慎さんならではの凝った装丁の、マンガにしては豪華な上下巻のミステリを、発行から丸4年以上たって初めて読んだ。綾辻さんのミステリって男子好みの本格ミステリだから苦手なんだよなーと、「メフィスト」を毎号読んでいたころを思い出したが、このお話は原作なしのマンガ用書き下ろしなのかな? ミステリは大好きだけど、本格ミステリは苦手。犯人を先に知っておきたいほうなので、種明かしだけに大枚使うお話は読むのに骨が折れるんだ。でもこの作品は読み終わってみれば、普通のミステリだったが、てっちゃん(鉄道オタク)にはたまらんかも。自分の周囲にも、気がつくとてっちゃんは何人かいて、この作品にも出てくる撮りテツと時刻表テツは筋金入りのがいる。 不定性のものをコレクションするという心理はあまりよくわからないんだけど(だって、いつまでたっても完結しないじゃない?)、誰よりも知っていたい(そしてそれを自慢したい)という気持ちはなんとなくわかる。 そしてこの作品のストーリーを仕掛けた鉄道王みたいな究極のテツヲタも、きっと現実にいそう。 でもさ、このお話の枠組みは、70年代のハリウッド映画「名探偵登場」そのものだよね。なんでこんな古い映画を覚えているかというと、トルーマン・カポーティーが主人公を演じていたからだ。そして子供だった自分は本気で、カポーティーの本職は俳優だと思っていた(笑)。 ストーリーは1巻の終わりで、そのミラクル設定で脅かしておいて、2巻でさらなる謎解きで、鉄道初乗りのヒロインが、仮定の積み重ねで解決してみせる。ちょっとわくわくしたけど、少年漫画での連載だけに、ヒロインがまだ高校生(だか卒業したてだか)だったのが弱いよね。他は有職者ばかりだし、仕掛け人は老人だし、とにかくヒロイン以外全員男性(お屋敷に中年のメイドが一人いたけど)という密室状態でお話が進むのに、えろくならないのは不満だ(笑)。 そして、祖父江さ~ん、作者あとがき、発見するのに時間がかかったよ~(泣)。こういうお遊びはどこかで一言断って種明かしをしてほしいものだ。 それにしても、この佐々木さんの絵に力がないのが気になった。特にヒロインの目が死んでいる。あまりに忠実に写真からトレースしすぎると、人物に魂込めるの忘れるのかな。残念ながら、佐々木さん、私にはどんどんつまらなくなってる。「ヘブン?」までは好きだったけどなあ。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る