『隣人には秘密がある』秀香穂里
『隣人には秘密がある』秀香穂里なんだかなー。秀さんらしくないほのぼの擬似ファミリーもので全然のめり込めなかった。秀さんって、イケイケな業界やスタイリッシュなリーマンやなんちゃってセレブ(笑)とかの、いかにもBL的な設定で、えろも粘着なものが多い作家さんかと思っていたのに、これってどうしたの?新宿区にある今にも朽ち果てそうな木造アパートって、確かにまだ現存する。6畳一間、トイレ・台所所・洗面所共同で、朝食つきの下宿って、早稲田当たりの学生下宿を思い出したけど、もっと歌舞伎町とかが近くて、ホストにキャバ嬢にポルノ作家にパチプロ(スロットだったかな?)という水物商売の人たちが住んでいる。下北当たりの芝居小屋で知り合って、芝居が好きで自分たちでもやってみたくて、人のいい高齢の管理人さんを父とも師とも慕っているふうな設定は、あまりに昭和中期で、私だってしらない時代だ。でも現代なんだよね?百戦錬磨なお水の人たちが、他人との縁だけでこういうところに住んでいるのって、借金まみれでもない限り、奇跡のような確率のような気がする。そしてみんなで素人芝居の練習って、田舎のママさんバレー並に健全すぎて、この設定にえろいふぉもを乗っけるのは無理だよ。なんで今このご時世にこんなレトロな設定にしたんだろう。秀さんらしくない。そして年寄りとサークル活動がからむと、どんなに堅物な大学生(受・管理人の孫)だろうが、鉄面皮なポルノ作家だろうが、全然主役になりきれなくて、散漫になっちゃう。中盤ぐらいから、つまんないなーと思っていたけど、きっとなにかどんでん返しがあるに違いないと最後まで一縷の望みをかけていたんだけど、結局思ったとおりな平和なエンディングだったよ。秀さん、じいちゃんの人となりとか、病室仲間の柏木さんとか、すばる荘の由来とか、なんら消化しきれていないよ。なんのためのエピソードなのか不明だよ。たけうちさんとか月村さんあたりなら、こういう年の離れた大人から学ぶ青少年、そしてやがて成長して…というのもありだけど、秀さんでは無理だ。この人は、つっこみどころ満載であっても、ちょっととんがった設定のほうがいい。