『WILD WIND』松岡なつき
『WILD WIND』松岡なつき大分前から移動本としてバッグに入れっぱなしにしておいて、ちまちま読んだ本。特に感想らしい感想がないんだけど、読み終わったことは記しておかないと忘れちゃう。アメリカンなナイスガイ×帰国子息組ナイーブティーンネージャー前者は自分がゲイであることと家族愛に恵まれていないことにうしろめたさを感じていて、後者はよくある、日米どっちも中途半端でアイデンティティーを見失っているという設定。ストーリーは王道だし、プロットにもエピソードにも破綻なくて安定しているんだけど、全然萌えがないんだよなあ。自分の好みの男子じゃないってこともあるが。インテリ好きなもんだから、唯一魅かれたのはスタンフォード出のジェシーだな(笑)。いや、単におやじが好きなだけかもしれん。とりあえず石油発掘のプロ集団と埼玉の豪農という組み合わせが異様。どうしても物足りなく思うのは、この作品が書かれてから相当時間が経っているからだろうか。映画のように遠い世界を舞台にするのではなく、日本が舞台だったら身近な高校生だのヤのつく人たちから会社しゃちょーまでなんでもありで、海外物だと執事だのアラブの石油王、ファンタジーだと遊郭ものとか、今はニーズが多角化しているから、いいとこどりみたいな日米ミックスって、今は流行らないのかもしれない。特には自分はワーキングクラスにはなじみがないから、近寄りがたい感じ。そして松岡さんは多人種間交遊がお好き。なんか雪舟さんの絵があのとおりなので、どうしても受ちゃんの崩れた言葉遣いが最後までなじめなかった。ああそうか、平凡(でもないが)な日本の高校生と、アメリカのレッドネック発掘プロ集団という、本来接点のない異質なものがぶつかっているからだな。自分は保守的だからありえないと思っちゃうと思考が前向きにならない。いっそ時空も超えてファンタジーにしちゃえばいいのに。「FLESH & BLOOD」みたいに。