ガイジン様大争奪戦!
今週の「週刊ダイヤモンド」が面白い。折しも今日の午後、いつもの本屋(アキバの裏側にある大型書店)のコミックス売場で、ガイジン客相手にスタッフが四苦八苦している姿を目撃したばかりだった。去年同じ売場で手助けしたフランス人のにいちゃんみたいな、いたいけな受け……もとい、美青年ならまだしも、今日のガイジンさんはジジムサイ二人組で、どうやらパプリッシャーらしかったので、ヘルプはせずに遠巻きにして横目でみていた。連中、売上ランキングトップ10を全部お買い上げ。2,000~3,000円はするイラスト集も何冊もレジに積み上げていた。いい客だなあ。そんな光景が珍しくなくなったアキバをはじめ、原宿のゴスロリファッション、キディランドがイマドキのガイジン観光客ご用達らしい。なにしろキディランドの年間売上の4割はガイジンだという。これ、すごすぎる。アニメやフィギアに群がる「オタク」は狭義で、キャラクター物(中国人観光客にはキティが人気)やファッションをもひっくるめての新潮流日本ブームは「クールジャパン」と言われているらしい。くーるじゃぱん……な、なんか激しく恥ずかしいのはなぜだ? アキバのカーネル・サンダースはメイドの格好しているぞ。あれがかっこいいというのか?村上隆の作品のどこがクールなんだか、私には理解不能だし、日本の伝統文化じゃなくて、軽いポップカルチャーだけが取り沙汰されるのは、なんだか居心地が悪い。だって所詮は使い捨ての流行りもんって気がするから。貨幣経済の過剰な蕩尽だろうって思うんだ。オタクの定義をソマリアの人に説明しろって言われたら、きっとできない(唐突)。それと、欧米の20~30代のガイジンが好きなのは、日本で大人受けしているマニアックなアニメではなく、現在かの国で放映中の、日本では低年齢対象のアニメだったりするのだ。彼らがそういう作品のどういうところに具体的に萌えているのか、一度じっくり聴きたいものだ。……連中、ディズニーで育ってないのかなあ。ディズニーランドを受け入れない彼らを、私は「あっぱれ!」と思って眺めていたけど、心の底では、ああいうコマーシャリズム先行の子ども文化を欲していたのだろうか?同誌によると、オタク書店・虎の穴の社長が「ガイジン観光客は成長分野」と息巻いているそうだ。あのつましいヨーロッパ人が、アニメやマンガやフィギュアに金を浪費するのかと思うと、なんだか涙が出てくるよ。ピューリタニズムの崩壊に近いと私なんかは危機感感じてしまうのだが。でも古いものは敷居が高いし、伝統だの文化だのに金かけられるのは中流以上のごく一部だから、垣根なんて最初からなくて、しかもいつでも途中からの参加が可能なポップカルチャーは、とりあえず「自分たちと同時代の、自分の金で買える愉しみ」だったりするのかもしれない。そういえば、NHKで009の特集を観ていたら、ハリウッドの有名な映画プロデューサーが「ぜひ009をハリウッドで実写化したい!」とか言っていた。なんか腐女子の黎明期にあった、トルーパーや聖矢はヨーロッパの神話を下敷きにしていて、それが再びヨーロッパに逆輸入されていくのかと思うと、長生きはしてみるものだと思ったり。自分はマンガもアニメもBLも好きだが、根っ子はクラシック音楽だの古典文学だの泰西名画の画集がゴロゴロする家で育っているから、ヨーロッパ行って劇場(オペラハウス)と美術館通いするのが何より好きだし、そういう意味では過去に属する人間だろうな。若くてなんでも吸収できる10~20代に、金のかかる趣味をひととおり経験できてよかった。あの頃は家にも自分にも余裕があったからな(無論、今はない)。ちなみに、在京のガイジンの知り合い(アメリカ、イギリス、スイス、フィンランド)は、全員バリバリのワーカホリックで、アニメなんて観たこともないに違いない。もうひとつ、同誌では原宿、アキバに群がる「クールジャパン」(含:萌え)好きのガイジンとは対照的な、「ディープジャパン」に群がるガイジンたちを紹介していた。これは私も結構目からウロコだった。ヨーロッパには盆栽の専門誌が28誌もあるという。ボンサイ。まあかの地にはガーデニングの伝統があるから、ボンサイまで興味の対象が及ぶのは分からないではない。もとより日本庭園はどこでも結構人気で、去年行った時は確認できなかったが、シェーンブルン宮殿にも日本庭園があった。そのうち枯山水のワビサビも、欧米人から教わるようになるんだろうか。そういえば、4月ごろWOWOWでやっていたブランドの特集が面白かった。全部観ていたわけじゃないけど、ウェッジウッドは今日本文化を取り入れた製品に社運をかけていて、なんだか支社長だか社長だか(30代だった)の奥さんが日本人で、やたら日本文化に傾倒していて、茶道具までつくっていた。それが、ありがちなオリエンタルモチーフの茶器とかじゃなくて、作家にデザインさせたモダンなものだったりして、ちょっとひかれるものがあった。あと日本食な。NYじゃ、公式に街のシンボル食を「スシ」と決めたらしい。はあ? そういえば今日は、六本木の逆輸入スシ屋でデザイナーさんとおすしをつまんできたのだが、そこのネタは生魚と非魚が半々だった。ローストビーフだの鴨だのアボカドだの。マグロもサーモンもみんなステーキになってギラギラになってシャリに載っているなんて、スシへの冒涜だよ。