酒井嘉七「ある完全犯罪人の手記」・本
1952(昭和27)年「黄色の部屋」12月初出。朗読時間約44分。もうなんかね、タイトル通り、完全犯罪人の独白で構成されるんすが、その文章がけっこうな見事さで寝不足なのも手伝ってついうつらうつらで気づいてはちょい戻って聴き直しての繰り返しでキーワードを聞き逃したりと、面白いけど難儀したのです。で、感想はむずいんで、読後の手記(メモ)をだらだらと残しておくのです。以下、メモ。・主人公は40半ばの科学者、病弱で療養中。それも環境の悪い土地で。・過去に赤沢荘三郎なる人物を殺している。が罪に問われず。・赤沢殺しは多くの人を救うためのものであったらしい・赤沢は完全な液体となり粉末と化して暗渠に流された・母は主人公が生まれるとすぐに亡くなり父が愛情深く育てた・父は母のことを話さない。なぜか。語らないまま死んだ・父は主人公が大学卒業後かなりの資産を遺して死んだ・そして主人公は療養のためK市からS町の離れの二階、土蔵の家屋に越した・この離れは倉としても珍しい作りで隔離部屋として作られたことは間違いない。・そこで主人公は散歩中に死んだ赤沢と出会う・主人公はK市生まれK市育ちと思っていたが実はK市の生まれではなく他国で生まれK市に移された・子供の頃、主人公にはソーべと呼ぶ11違いの異母兄がいた・ソーべの母は早逝し、主人公の母は後添え・名はキセといい兄を座敷牢に閉じ込め虐待した・そのためソーべは14の時に家を出て消息不明になった・父の死後に漏れてきた話によれば主人公の母は彼の生後すぐ亡くなったのではなく四〜五年もの長い病気を経て狂気の末没したらしい・赤沢を殺したのは彼が37歳頃。今から20年前。主人公は20台半ば。・赤沢の亡霊は赤沢の息子・主人公はこの世に未練はない。赤沢の亡霊が死を求めるなら応える覚悟。・赤沢の息子が主人公に父親殺しを告げる・主人公は証拠がなかったので警察も証明できなかったと答える・でも肝心なところ(赤沢との因縁・なぜ離れの二階に越したのかなど)は謎。これが自分が霊能とかを信じる最後の科学者という由縁?これくらいメモっとけば後から読み返しても内容を思い出せると思うのです。