吟遊映人 【創作室 Y】

2008/04/29(火)07:45

ベン・ハー(後編)

映画/アクション(77)

「母親と妹は死んだと思ってるだろう・・・? 勝負もついたと・・・。まだ終わってないぞ・・・二人は生きてる。」 「(母と妹は)どこにいる? どこだ?・・・どこだ!?」 「会いに行くがいい・・・業病の谷へ・・・見分けがつくかな・・・? 勝負はまだつかんぞ・・・勝負は・・・まだ・・・」 いつの時代にも差別はあった。 そしてそれは根強く、なかなか拭い去ることのできない深い傷跡を残した。 それは遠い異国の話などではない。 我が国でも存在する。 寝た子を起こさないように誰もが沈黙を装っているに過ぎない。 あるいは臭いものに蓋をしてどうにか現状を維持しているというところか。 もしかしたら、他人事として捉えていてそのこと自体知らない者も多いだろう。 だが、これだけは確実に言える。 この世は“差別”だらけだ。 罪人としてガレー船の漕ぎ手を経て、ベン・ハーは司令官の養子となる。 司令官は、命の恩人でもあるベン・ハーの横顔に亡き息子の面影を覚えたのだった。 だが、ベン・ハーはローマに止まることを好しとしなかった。 エルサレムへ戻って、母と妹の行方を何としてもつき止めたかったのである。 やがてエルサレムで大競馬の競技で、不敗のメッサラに挑むベン・ハー。 激闘の末ベン・ハーは勝利を収めるが、メッサラから聞き出した母と妹の行方について、思わず愕然とする。 何と二人は不治の病である業病※にかかっており、隔離されて“死の谷”にいるとのことだった。 みどころはやはり大競馬のシーンであろう。 半世紀も昔に撮影されたとは思えないほどの大迫力! もちろんCGなどない時代。全てがアナログ。 馬のいななき、風に舞う砂埃、馬車から振り落とされて絶命する者、そしてそれを固唾を呑んで見守る大衆の群れ。 さらに、ベン・ハー役のチャールトン・ヘストンの彫りの深い顔立ちと精悍な体格は、そこに存在するだけで絵になるから不思議だ。 その存在感たるや周囲の喧騒を呑みこみ、よどみないセリフと鋭い眼力で他を圧倒していた。 そんな彼は、私生活では大変堅実で、ハリウッド・スターには珍しく離婚歴がなく、生涯をただ一人の女性(リディア夫人)と連れ添った。 数々の名作にその名を連ねてきた往年の大スターも、寄る年波には勝てなかった。 本年四月五日逝去。 ご冥福をお祈り申し上げます。 ※業病とは現代におけるハンセン病と思われる。(らい病とも呼ばれるが、現代では差別用語として避けられている。) 【参考】「砂の器」松本清張・著、「もののけ姫」宮崎駿・アニメ映画 1959年(米)、1960年(日)公開 【監督】ウィリアム・ワイラー 【出演】チャールトン・ヘストン また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。 See you next time !(^^)

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