2008/09/12(金)07:57
ダニー・ザ・ドッグ
「ヴィクトリアが卒業したら故郷に戻る。ニューヨークへ。だから・・・どう言ったらいいのか・・・君も一緒に来てほしい。なぜなら君はもう私たちの家族だから。家族はいつも一緒にいるべきだ。少なくとも私たちはそうしたい。」
稀に見る興味深い作品だった。
個人的にとても気に入った内容で、思い立って同じ日にもう一度鑑賞してしまったほど映像・脚本・演出、全てに陶酔してしまった。
まず設定がおもしろい!
アジア人のダニーが、幼いころから犬のような生活を強いられ、首輪でつながれている点。
これは、支配文化の中において“白人”以外の人種が社会的地位の向上を目指すことを好しとせず、有色人種に対する抑圧、アイデンティティの抹殺を表現しているかに見えた。
だが、そのダニーを救うのは盲目というハンディを背負う黒人サムである点が、非常に社会性を感じる。
難い話はここまでにしておこう。
この作品をどういうジャンルに区分するか、実はかなり迷った。
単なるアクション映画とは思えなかったからだ。
かと言ってヒューマンドラマと言うには大げさ過ぎる。
サスペンスにしてはミステリアスな部分がほとんどなく、ストーリーは大味ながらも安心して先が読めてしまったからだ。
結局、アクション監督として起用されていたユエン・ウーピンの名前を見つけたことで、「やっぱりアクションか」と自分を納得させたわけだ。
5歳の時に誘拐され、以後は金貸しのバートのもとで殺人マシーンとして調教を受けて来たダニーは、借金の取立てに連れ出されては債務者を痛めつけていた。
首輪をつけられ、感情を失いかけ、バートの奴隷として薄暗い地下牢に着の身着のままの生活を余儀なくされていた。
そんなある時、骨董品の倉庫でピアノに心を奪われていたダニーは、盲目のピアノ調律師サムに声をかけられる。
このサムとの出会いにより、ダニーの人生は少しずつ変化していくかのように思えた。
ダニー役を演じたジェット・リーは、童顔も手伝ってソフトとハードの面をきっちりと演じ分け、見事な演技力を披露してくれた。
モーガン・フリーマンも、盲目のピアノ調律師サムという役どころを好演。
この映画が社会的メッセージを含んでいるにしろ、いないにしろ、我々はイデオロギー的表現から目を背けるわけにはいかない。
程度の差こそあれ、映画で描かれている人種間の問題やフィクションの中の真実を、しっかりと見据えていかねばならない。
2004年(仏)、2005年(日)公開
【監督】ルイ・レテリエ
【出演】ジェット・リー、モーガン・フリーマン
また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)