2005/05/13(金)00:30
「甘い人生」■テーマにかかわる二つの場面と会話
映画「甘い人生」にはキーになる場面が二つある。
ひとつは主人公が歩く場面。
彼が歩く場面のほとんどは狭く薄暗い路地と回廊である。
狭い道で、左右に曲がるという選択肢はない。
彼女に男が存在することが判ったときに、もうひとつの
選択もあったのかも知れないが、それはあくまで第三者の
考えで、彼としてはあの選択しかなかったのだ。
あの狭い路地や回廊は彼のそのような運命を暗示している。
もうひとつは、ラスト近くの主人公のシャドーボクシング
の場面。
これは何を意味するのだろうか。
冒頭に師匠と弟子との会話がある。
「柳が揺れている。柳が動いているのか。風が動いているのか」
という弟子の問いに師匠は、
「それはお前の心が揺れているのだ」
と応える。
また、ラストにもこの二人の会話があり、
弟子の
「甘い夢でした。かなわない夢でした。」
という答えがある。
この二つの会話は、この映画のテーマに関わるものであることは
明確である。
すると、あのシャドーボクシングは、
主人公が死ぬ間際に見た幻なのか、
それとも、シャドーボクシングが現実で、
この映画で描かれたドラマが、主人公が彼の心の揺らぎの中で見た
幻なのか?