2006/02/13(月)10:12
「ミュンヘン」(第3回)■呪われた作品
この映画はスピルバーグ作品の中では「シンドラーのリスト」
と同系列に扱われるが、必ずしも同じ系統の作品ではない。
「シンドラーのリスト」にはシンドラーというユダヤ人を虐殺
から救う正義の主人公とユダヤ人を虐殺するナチスという明確
な対立軸があった。
しかし、この「ミュンヘン」にはそのような明確な対立軸は
ない。
更に、この映画には泣かせるシーンはない。サスペンスを盛り
上げるシーンはあるが、情緒的なシーンはない。
だから見ていてもカタルシスを得ることはできない。
そして、ここで投げられる課題に対して回答も示されない。
作家も観客も混迷の中で試行錯誤をしながら考えることを迫ら
れる。
そのような回答を示されない作品には救いを感じることはでき
ないし、さらにはそれゆえに失敗作というレッテルを貼られる
こともありうる。
これはスピルバーグのフィルモグラフィーの中では「呪われた
作品」と位置づけられるかも知れない。