映画と出会う・世界が変わる

2011/11/06(日)16:15

「ディア・ハンター」はお嫌い?

作品レビュー(外国映画)(769)

「ディア・ハンター」は嫌いな映画である。俳優も、キャメラも、 音楽も、演出もすべてにおいて完成度が高いのである。この映画 を最初に見たときは、まだ「地獄の黙示録」は公開されておらず、 これを見ながら「『地獄の黙示録』は、地獄のような戦場の描写 は、この作品を上回るであろうか」と考えていたほどであった。 しかし、ベトナム戦争において加害者であるアメリカが、ここま で「アメリカ人も被害者という側面もあるのだ」という主張をし ていいのかと、非常に腹立たしく、嫌悪感をいだいたのであった。 以来、この作品は嫌いな映画のトップクラスに君臨しており、次 にこの映画を見て、この「嫌い」がどのように変化していくのか という点が、ここ何年もの私の最大の関心事であった。「午前十時の映画祭」で、やっとその検証の場が叶えられたわけ で、改めて見て、どうであったかと、マイケル・チミノ監督には、 ベトナム戦争がどんな戦争であったのかの関心は全くなかったの ではないかという点を強く感じたのである。 ひとつの世界(共同体)が、社会の出来事(ここではベトナム戦 争)によって、どのように変貌、あるいは崩壊するか、そのこと とそれを構成する個々人の変化が、どのように関係づけられるの かを描いたものではないだろうか。 結婚式のシーンが延々と25分ほどもあるが、そのシーンから多少 無理なこじつけをやってみると、これはアメリカローカルの庶民 版「山猫」ではなかろうか?そういう解釈の方が、ベトナム戦争 論的解釈より非常にすんなり受け入れられるというのが現在の私 のこの作品への評価である。「ディア・ハンター」とは、また、何年後かにお会いしたい。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る