何を<誰も知らない>のか?
題名の「誰も知らない」とは何を意味するのだろうか?おそらく戸籍上は存在しない子供達のことは、社会の誰も知らないであろう。あのアパートの一室で、子供たちだけが、あのような共同生活を行って必死になって生きているであろうことは、管理人も含めて誰も知らないであろう。一番幼い女の子が、あの場所に埋葬されていることは誰も知らないであろう。本来ならば、彼らを保護したり、支援したりする人々の誰もが、あの子供達のことを知らないであろう。実際にあった事件。そのことを聞いたときに私たちは様々な想像をするが、本人たちの心情は、おそらく我々の想像とはかけ離れたものであったと思う。あの子供たちの本当の心情のことは誰も知らない。この映画は、その心情を共感するでもなく、拒絶するでもなく、描いている。そこがいい。是枝監督がどのような演技指導や演出を行ったのかは知らないが、子供達は非常に素晴らしい。もし、主演俳優がカンヌで受賞しなかったら、この素晴らしい映画は、これほど早くいい条件で地方都市で公開されることはなかったであろう。タランティーノ審査委員長をはじめとするメンバーに感謝である。優れた日本映画を地方でも鑑賞できる為には、国際映画祭で評価されることである。