幕張本郷の小さなフレンチレストラン　　　サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

　スペインのイエクラという土地で作られたモンゴというワインです。イエクラというのは、スペインの地図に向かって右下のあたり、つまり地中海側の南東部ですね。

　この辺の地域はイエクラをはじめフミーリャとかバルデペニャスなどワインの産地が点在してます。夏は軽く４０度を超え、冬は氷点下になるというきびしい気候で、昼夜の寒暖差も多く、さらに降水量が少ないので、濃厚な赤ワインが作られる条件がすべてそろっているような地域です。

　ところが、その好条件が災いして今まではただ濃いだけで品のない安ワインしかできなかったんですね。例えば、収穫量にしても放っておけばたくさん実がなりたくさん生産できるんですが、美味しいワインというのはブドウの樹一本当たりの収穫量を減らして、一房のブドウの実にできるだけ味を凝縮させるのが大切なんですね。

　ところが、そんなことをすれば当然コストがかかるので、ワインを高く売らねばなりません。ボルドーやブルゴーニュのようなネームバリューがあれば、躊躇なくできるでしょうし、スペインならリオハとかリベラ・デル・デゥエロみたいな高級ワインの伝統があれば出来るのでしょうが、ハッキリ言って二流の地域でそんな高級ワインの仕込みをするのはなかなか勇気がいることだと思います。

　そんな中で、最近スペインのこのあたりの地域の若い醸造家がボルドー大学の醸造科に留学したり、ボルドーやブルゴーニュの一流生産者に弟子入りしたりして、高級ワインの仕込みのノウハウ身につけて帰ってきて、まだ少ないのですがものすごくクオリティの高いワインを作り始めていて、我々プロの間でも注目されているんです。

　このワインもあの有名な辛口ワイン評論家（辛口ワイン専門の評論家という意味ではなく、評価が辛口で厳しいという意味ですからね、、、念のため）のロバート・パーカーが９０点という高得点をつけたことで注目を集めているワインです。パーカー氏の評価には賛否両論ありますが、彼が高得点をつけたワインの価格が、あっという間に数倍から物によっては数十倍に跳ね上がることもあるので、ワイン業界における影響力は多大なものがあるのは確かです。

　よくワインのインポーターから送られてくるワインリストにRPPという欄があって７５だの８０だのと書いてあるのですが、何かの単位かと思ったらロバート・パーカー・ポイントの略なんですね。

　パーカー氏は、醸造家から招待されたり金で丸め込まれたりするのを嫌い、歯に衣着せぬ評価をするので、出入り禁止にしているメーカーもあるくらいなんです。（当然不当な評価を受けたと思うメーカーは、出入り禁止にしたいですよね。）ボルドーのメドックの２級から５級クラスで格付けの必要なしとか格下げがふさわしいなどと酷評されたシャトーも少なくないですし、もっと下のクラスでも格上げすべきという評価を受け、実際の実力が評価されて価格が上がったところもたくさんあります。

　パーカー氏の良さは、良い意味での独断と偏見にあります。つまり分かりやすいんですね。１００点満点の採点法もアメリカ的と言いますか、彼が高得点をつけたワインというのは飲んでみるとなるほどと思うようなパーカー好み的な味わいがあります。これは確かですね。濃厚で果実味がたっぷりで基本的に無ろ過というのが、パーカー高ポイントのたぶん必要条件ですね。まあ、ある意味芸風が確立しているというか評価においての立場が一貫しているので、うまく使えば結構参考になります。

　というわけで、しっかりと濃厚で果実味がたっぷりのスペインワインが入荷しました。