幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

2011/08/05(金)09:06

先週のワイン会とさかもとこーひーの話

 毎年恒例となったK氏のワイン会の夏のイベント“シャンパーニュ尽くし”が先週の土曜日にあった。今回は、ボランジェ特集。あの007のジェームス・ボンドがお気に入りの一流ブランド。 スタートは、Special Cuvee Brut (Bollinger)これはノンビンテージのブレンドものでボランジェの看板品。すっきりと辛口で、きれいな酸味。これに合わせて、ラベル・ルージュのマグレ鴨の自家製スモーク生ハムのサマートリュフとトリュフオイル風味。このシャンパーニュは、黒ブドウの配合が多いので肉系にもよく合う。鴨の旨味とスモークとトリュフの香りが最高です。 二番手は、La Grande Annee (Bollinger)2002これは、当たり年にしか仕込まないヴィンテージもの。これも黒ブドウが6割以上で、力強さを持っているシャンパーニュ。合わせた料理は、大分産の旬のイサキのポワレにフォアグラのソテーをソース代わりにのせたもの。定番の甘酸っぱいハチミツ・バルサミコソースは使わずに、イタリアトスカーナのチェルビアの塩(フルール・ド・セルタイプ)をパラリと散らす。魚にフォアグラという異質の組み合わせだが、白ワインの要素と赤ワインの要素をあわせもつシャンパーニュならではのマリアージュ。 メインは、フランス産鳩のポワレに夏のジロール茸を添えて、ソースは鳩のジュ、それにまたトリュフオイルの香りも添えた。合わせるワインは2本。La Grande Annee Rose (Bollinger)2002とAy Rouge "La Cote Aux Enfants" (Bollinger)2002。ロゼのシャンパーニュとボランジェ唯一の赤ワイン。赤はやはり当たり年にほんの少しだけ作られるピノ・ノワール100%のワイン。そしてロゼのシャンパーニュには、先のグランダネの白にこの赤ワインをアッサンブラージュ(ブレンド)して作られている。フランスの高級ワインの中で唯一白に赤ワインを混ぜてロゼを作ってよいのがシャンパーニュなのだ。 La Grande Anneeは、英語でいえばThe great vintage、文字どおり当たり年にしか作らないシャンパーニュですね。"La Cote Aux Enfants" は、子供たちの丘という意味。珍品中の珍品で、私も初めてみました。どちらもシンプルな鳩の料理とキノコのニュアンスによく合うでしょう。 デザートには、ボランジェではなくSublime Reserve Sec (Philipponnat)1996フィリッポナ社のシュブリム・リゼルヴァ・セック。セックというのは辛口という意味だが、シャンパーニュに限ってはやや甘口。シャンパーニュの辛口は、brutと言いますね。合わせたデザートは、焼きたてのアーモンドとアプリコットのタルト。シャンパーニュにもアプリコットのニュアンスがあるので、ナッツやバターの香りも含めて、相性は最高ですね! 食後のこーひーがまたすごかった! 開店以来18年で一番凄いと思うケニアに出会いました。この「ケニア・カングヌ」が今までのさかもとこーひーのケニアで一番だと感じた魅力は、ブルゴーニュの上質な白ワインのような魅力に惹き付けられたからです。熱い時は、まずフローラルや赤いベリーのキャラクターから感じられて...次にシトリック系の味わいが顔を出してきます。徐々に冷めてくると...味わいの繊細さや滑らかさが魅力的に伝わり...優しい口当たりと上質で複雑な香りが一体化してきます。さらに冷めて来ると...優しい口当たり、余韻の柔らかな甘さとシトリックさ...繊細で、きれいな余韻へとご機嫌になってきます。そこにグッと印象的に感じられるのが...ブルゴーニュの上質な白ワインのような際立つ魅力です。香りと滑らかで柔らかな口当たりと甘さに、心地よい上質な酸が顔を出して...このニエリの高地産「ケニア・カングヌ」を際立たせていると思います。是非...このこーひーだけで、ゆっくりと味わい、楽しんでほしいと思います。 上記太字は、毎回このワイン会に参加するさかもとこーひーのさかもとさんのコメント。一口飲んでみると、信じがたいほどの綺麗さ!デザートのアプリコットの後味も引き取って楽しませてくれます。さらに、さかもとこーひー開店18周年記念ブレンドの、、、  さかもとこーひー18周年記念の「アニバーサリー2011」です。使ったこーひーは、18周年のお祝いですから...「ボリビアCOENWアルベルト」「コロンビアCOEパロセコ」「ブラジルCOEカンバラ」という思いっきり贅沢にブレンドしました。コーヒー相場が高騰するなか、原価なんて忘れて、ブレンドしました。イメージしたのは...華やかさ、輝きを第一にして...フローラルさから柑橘系...ベリーな感じからほのかなミルクチョコレートの感じです。口当たりの柔らかな心地よさと上品な甘さ...赤いベリー系のフローラルな余韻へと流れて...夏向けのキレの良い味わいがフィニッシュとなります。「ボリビアCOENWアルベルト」のミントキャラクターが隠し味で活躍しています。 さかもとこーひーの場合、ケニアやコロンビアといった1種類の豆のシングルオリジンのこーひーのキャラクターが際立ったものの味わいも素晴らしいのですが、やはりさかもとさんのブレンドの技術とセンスにはいつも驚かされるんです。このアニバーサリー2011もちょっと言葉が出ないこーひーでした。サンク・オ・ピエの特別コースのデザートに合わせて特製のブレンドをよく作ってもらうんですが、それがまたいつもドンピシャで、、、そのブレンドの技術とセンスには全く恐れ入るばかりです。 振り返れば、2005年のシャンパーニュ尽くしにさかもとさんが、コロンビアのカップ・オブ・エクセレンスを持ってきて飲ませてもらったのが、さかもとこーひーとの出会いでした。 その時のコロンビアのあまりの美味しさとコーヒー離れした綺麗さに、「もし、コーヒーのロマネコンティというものがあるなら、こういうものかもしれません。」と言ってしまったものでした。「ビロードの手袋をはめた鉄の爪」なんて言う事も言いました。これは、どなたかは知りませんが、フランス人がロマネコンティを表現した言葉です。つまり、しなやかで滑らかな中に重厚かつ鋭いニュアンスが含まれているという事なんだと思います。 さかもとこーひーがまさにそんなスタイルで、苦くて濃くてエグいコーヒーに慣れているととてもこーひーとは思えないほど。うっかりすると、さっぱりしすぎているくらいで、物足らないと思う人もいるかもしれません。味や風味をとらえる感性が弱いと、味がわからないようなこーひーだと思います。ただ、さかもとこーひーに慣れてしまうと、もう他のこーひーは飲めなくなります。うちのお客さもにもそういう風にさかもとこーひーにはまってしまう方も多いです。 2009年の年末に開店以来使っていたエスプレッソマシーンが壊れました。ちょうどその日にさかもとさんがお客で来ていて、「マシーン壊れちゃったんですよ。」と相談すると、「じゃあ、うちのこーひー使ってよ。サンクなら儲けなしでキロ¥○○○でいいよ!」、「え!そんな安くていいんですか?」という事で、以来」さかもとこーひーを使わせてもらっています。そのキロ¥○○○でも実は普通レストランで使うコーヒーよりは高い位なんですが、、、。お客様の反応の良さを見れば安いもんです。 食後のこーひーや紅茶はとても大事です。せっかく美味しい前菜、美味しいスープ、美味しいメイン、デザートと続いても、最後のこーひーが淹れて保温して置いたような不味いこーひーが出てきては、せっかくの食事も台無しですからね。   

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