幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

2018/09/08(土)18:00

Soupe de poissonsスープ・ド・ポワソン 魚のスープ

南仏風の魚のスープなんです。ブイヤベースのスープですね。私が作るものは本場マルセイユのものとはだいぶ違います。本場のものはpoissons de rocheポワソン・ド・ロッシュというんですが、岩陰の小魚というような意味なんですが、取れたての新鮮な小魚をウロコやエラや内臓ごと炒めて出汁をとるんです、当然内臓ごとですからかなりワイルドな味わいになります。はっきり言って結構魚臭い感じです。作ったスープをムーランmoulinという回転式の濾し器で魚をつぶしながら濾すので、スープは少しドロッとしていて魚のそぼろが入っているような感じです。そのため、かなりニンニクを利かせるし、パスティスというアニスのリキュールを利かしたり、フェンネルという香りの強いハーブも利かせます。薬味として、アイオリというニンニクマヨネーズのようなソース(それも半分おろしニンニクみたいな強烈なやつです)をたっぷり入れて食べるんですね。昔のラルース料理辞典という古い本には、「マルセイユではアイオリソースをたっぷり食すため、人々の吐く息が臭くてテーブルにハエも寄り付かない。」というような記述があったそうな、、。まあ、音楽でいうとfffフォルテが3つも4つもつくくらいの料理なんですね。臭いものを臭いものでねじ伏せるというワイルドな漁師料理なんです。荒ぶる漁師魂ですね。実はこのタイプのものは私は苦手です。それで、全く違う作り方をします。  私の場合は、鮮魚の頭や骨などを使います。もちろん内臓やエラは使いませんし、最低3時間から半日くらいは水でさらして血抜きします。オリーヴオイルで玉ねぎとニンニク(量は控えめ)とフェンネルシードを炒めてそこに血抜きした魚のアラを入れてよく炒めます。完全に崩れてボロボロになるまでやります。  こんな感じです。そこに水とトマト缶詰め、トマトホールでもピュレでもペーストでも何でもいいです。完熟の生トマトでもOKです。トマト濃度により加減するだけですね。  こんな感じですね。沸いたらアクを取りながら10分くらい中火で煮込み、30分くらいアンフュゼ(漬け込んで煎じるイメージ)してもう一度軽く沸かしてからから濾します。私の場合、中目のシノワで濾してから細目でもう1回濾します。そこにサフランを加えて少し煮詰めて出来上がり。普通出汁を取る場合ひたすら煮続けるのが普通ですが、一度火を止めて少し温度を下げることで抽出される旨味もあるような気がして、こうすると丸みがあって穏やかな味になる気がします。  意識としては、南仏風魚のスープを仕込むというより、とにかくきれいな魚の出汁を取るという気持ちでやっています。  クラシックなフレンチでは魚のソースのベースにフュメ・ド・ポワソンという魚の出汁を使いますが、魚のクセや臭みが出ないように細心の注意を払うんです。でないと、それを煮詰めて作る魚のソースが臭いソースになってしまいますからね、、。ですから、トマトサフラン風味のフュメ・ド・ポワソンという感じが近いかもしれません。実際このスープを煮詰めて魚のソースを作ることもあります。  最近やっている真夏のコースでは、オマールのローストを入れて、、、  こんな感じの仕上がりです。グリエールチーズをおろしたものをトッピングして、スペインのスモークパプリカを散らします。  本場の作り方と違って、味わいはとても綺麗で、魚の臭みは全くなく旨味が凝縮された感じのスープです。超絶に美味いですよ!  真夏のコースはそろそろ終わりですが、昨日また作ったのでスペシャルメインディッシュでブイヤベース仕立ての魚をやろうと思います。

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