幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

2020/02/24(月)19:52

19周年&シェフ還暦記念コースの仕込みを少し

 雉のコンソメの仕込みです。  これは、愛媛産の飼育の雉です。雄で1羽約1キロを5羽用意しました。左からもも肉、真ん中は胸肉、右がガラですね。つまり丸どりを捌いたところです。雉は骨や関節がとても固く捌きにくい鳥です。飼育ものだから少しは柔なのかと思っていましたが、野生の雉と変わらないですね。きっと平飼いでよく運動させているんだと思います。脂が鮮やかな黄色なのも雉の特徴ですね。この後、もも肉や胸肉の小骨も全部外してその骨と手羽先と雉のガラと鶏ガラでまず出汁を取ります。それで一日目は終わり。  次の日、雉の肉を粗いミンチにします。雉の肉の約半分弱くらいの鶏胸肉もミンチにします。ニンジン、玉ねぎ、セロリを切って、トマトジュースも500㏄くらい用意します。卵白を5個くらい用意します。そのほかにローリエ1枚、粒黒コショウ20粒くらい、ニンニクを横半分に切って黒焼きにしたものを一株、玉ねぎを横半分に切って黒焼きにしたものを2個用意します。  ミンチにした肉全部と切った野菜とトマトジュースにローリエ、粒黒コショウ、卵白を鍋に入れて手でよくかき混ぜます。卵白がよくなじむようによく混ぜ込みます。そこに前日のブイヨンを入れて火にかけます。  最初は強火。材料が沈むと焦げるので、60℃くらいなるまでは大きな木べらでゆっくりかき回します。  お店にはコンソメ用に長さ70cmくらいのでかい木べらがあります。もし強盗が来たらそれで張り倒せば一発撃退というくらいのサイズ、、。(笑)  それで、鍋の中で自然に対流が起きよるように二重バーナーの外側の火は消して真ん中のバーナーだけにしますしばらくするとミンチの肉や野菜が浮き上がってきて蓋のように固まってくるので、真ん中あたりに穴をあけます。その真ん中からスープが静かに沸き上がって来るように面倒を見ます。このあたりが、コンソメの仕込みのキモです。還暦の私でも緊張する時間帯です。この肉や野菜が蓋のように固まるときに混ぜ込んだ卵白が、アクや濁りを吸着してくれるので、澄んだコンソメになります。いやぁー、分かっているんですけど、毎回緊張するし、うまくいくと(ほとんどうまくいくんですけどね!)感動します。  沸騰が安定してきたら、黒焼きのニンニクと玉ねぎをその湧き上がっている穴に投入します。この黒焼きのカラメル成分がコンソメの美味そうな琥珀色の元です。砂糖を焦がしてまさにカラメルを入れる人もいるんですが、ニンニクや玉ねぎの黒焼きのほうが香ばしい香りも付くので、私はそうしています。  始めは、味を見ても香りをかいでも、肉や野菜の味がばらばらで特に肉の美味さだけが前面に出て、野菜の香りだけ強い感じです。6~8時間くらいたつとだんだんコンソメとしか言いようのない香りと味わいなるんですね。その時にスープを濾して仕上げます。そのタイミングが大事ですね。  そしてこの雉は、一羽焼いて売ると¥14000~¥15000くらいとれる高級な鳥です。それを使って出汁だけ取って棄ててしまうんですから、コンソメっていかに贅沢かという、、。分かるでしょ?  もともと、わがままな王様が「肉を食うなんて面倒くさいから、肉の濃い出汁の美味しいスープを作れ!」と、命じたのが始まりみたいな料理だと思います。近代になって歯医者さんができるまでは、人間30代後半くらいになれば、ろくに歯が無いような状態だったんですよ。それに20世紀になるまでは、牛や豚の品種改良もなかったので、肉は今より硬かったんです。だから、肉を食べるのも丈夫な歯と強い顎がなければ大変だったんです。だからスプーン一杯にスプーン2~3杯分の肉のエキスが入っている、コンソメは、王様用の大ご馳走なんですよ!

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