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# 455
その日、くつしたは一人ぼっちでした。 昨日の夜おそく、 アパート1階のいつもの部屋の窓が開き、 またクロちゃんはうれしそうに走って 行きました。 お皿に入った食べ物を差し出され、それに誘われるまま 窓から部屋の中に入って行きましたが、 その後 窓は閉められてしまいました。 階段下の部屋のドアが開き、しっぽも またいつかのように招き入れられて 中でごはんをもらっているようでしたが、 その晩は再びドアが開くことはありませんでした。 くつしたはアパートの影でしばらく待ちました。 夜がもっと夜になり、辺りがすっかり静かになっても クロちゃんとしっぽは戻ってきませんでした。 くつしたはひとりで公園のねぐらへ帰り、 いつもは3匹で寝ている場所に小さく丸まって眠りました。 朝になって公園が明るくなると元気が出ました。 朝はいつも 何をやっても楽しい気分で、この日も木の高いところまで登って遠くを見たり、 茂みの虫を追いかけたりして遊びました。 他の2匹と追いかけっこをしたいと思いましたが、どこを探しても姿が見えず、 長いかくれんぼは夕方になっても終わりませんでした。 公園が暗くなってくると おなかが空き、少し不安になりました。 いつもなら、みんな別々に遊んでいても どこからか声が聞こえたり 葉っぱの上を走り回る足音がしたり、茂みの中に匂いが残っていたりするのに 今日はクロちゃんもしっぽも気配すら感じません。 いつもより公園は広くて、そのどこからもクロちゃんやしっぽの自分を呼んでくれる声はありませんでした。 どうして2匹はいないのか、何をしているのか、考えても答えは分からず ただ心細いという気持ちだけが大きくなっていきました。 遊んだあと疲れたねと毛をなめ合ったり、おしりとおしりをくっつけて座ったりすることも ひとりでは出来ないことばかりで、くつしたは何もすることがなくなり 公園の中をぽつぽつと歩きました。 あとは、夜になって おなかが空いたときごはんを持ってくる いつもの人間が現れるのを 待つしかありませんでした。 公園を出たくつしたは すぐ向かいの駐車場へ行き、いつももぐりこむ車の下に小さくうずくまりました。 何も考えずに じっと、じっと薄暗い道路を見つめ続けていました。 しばらくすると遠くから音が近付き、一台の車が角を曲がって駐車場に入ってきました。 くつしたの目の前に大きなタイヤが止まり、大きな音も止むとドアが開いて 中から靴を履いた 足が地面に下りてきました。 嗅ぎなれた匂いがして、 くつしたは弾かれたように車の下から飛び出しました。 車のドアを閉めた人間は、すぐ足元の小さな影に気付き 「おー、くつした。」 と優しく呼びかけてくれました。 その瞬間、くつしたは さっきまで考えまいとしていた空腹や寂しさ、不安な気持ちや そして何だか分からないさまざまな感情が止め処なくこみ上げ、 思わず 「 にゃー 」 と大きく一声 鳴きました。 母がいなくなってしまったある日。 その日から今日まで、強くあろうと精一杯に頑張ってきたくつした。 それもクロちゃんやしっぽが一緒にいたからこそ 辛いと感じることなく楽しく暮らしていられたのでした。 夜、あたたかさが恋しいときは共に眠り、 元気が出ないときも追いかけっこをしてるうちに何だか楽しくなれた、 そんな2匹がいなくなることなど 昨日まで考えたこともありませんでした。 ひとりぼっちになり、ほかに頼るものがなくなったくつしたは 寂しさのあまり、 そのとき初めて泣いたのでした。 さりげなく応援して下さると感謝です。 HOME はじめましての方 * この話の登場人物 * ネコチビーズ 子猫たち グレーの尾長「しっぽ」 真っ黒「クロちゃん」 足先だけ白「くつした」 大人その1 人間のオス ○○さん 仮に「まる」とする 大人その2 人間のメス 私(me) 仮に「みー」とする 7/13 00365 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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くーちゃんの生い立ちは胸が締め付けられます。
1匹で過ごす夜は寂しかったろうな。 もっと寂しいのは、1匹を実感する起きている時間。 読んでて、涙が出てきてしまいました。 くーちゃんの「にゃー」と家の猫のゴハン頂戴「にゃー」が重なって、さらに感情移入してしまいました。 まだ、お話は続くようですが、この後のくーちゃんは幸せ続きであってほしいなと思います。 くーちゃん、市長さん家の子になれてよかったね。 (2008年07月13日 20時19分51秒)
独りぼっちの夜・・・くーちゃんの心の内を想い量ると胸がキューっと詰まります・・どれだけ心細かったか・・・・・
『にゃー』と思わず発した一声は・・まるさんを人恋しいと想った瞬間のくーちゃんの『心の声』ですね。 (2008年07月13日 21時13分13秒)
クロちゃんとしっぽちゃんはどうなってしまったのかしら?
優しい人に保護されたのならいいけれど(><) 臆病なくつしたちゃんは、どんなにか寂しかったことでしょうね・・ 今まで、3匹で肩を寄せ合って生きてきたんだものね。 くつしたちゃんに声を掛けてくれた人は・・ひょっとして?! (2008年07月13日 22時27分09秒)
これ・・・切な過ぎて・・
何でこんなに上手に猫の心が描写できるのか ・・・・・・・・ それだけ、猫が好きだからなのよねー 市長の優しさが伝わってきます。 知り合えてよかった♪ありがとう~ (2008年07月14日 03時22分55秒)
うまく言えないのですが・・
こういう話って難しいんです。あまりにもリアルで苦しい涙を思い出します。 うちのみぃと出会いを思い出してしまいました。 さくらもち市長さんは正直ですよね。勇気があるんだなって。 ある意味、たかが野良仔猫ちゃんに恋して、嫉妬して。 私達夫婦も以前から大の野良猫好きで・・ 人間に依存しない、自由気侭な猫さんたちを愛していました。 室内飼いなんて、絶対理解出来ない、可哀想と思っていました。 頭では理解していても(それがいけないとわかっていても) でも流浪のみぃについ鰹節を与えてしまったのも 保護をしたとはいえ、都合で彼女の子供を産ませてやれなかったのも、私達でした。 一緒の家族として暮らす今も、その小さい命の尊さには変わりがないはず。 ごめんね、本当に。みぃは幸せなのかな? その時々で、多少知識も状況も考え方も変わったかもしれません。 地域猫を広めようとする人、野良猫を餌付けする人、 処分猫の里親探しをする人、猫を処分する人。 取り留めがなくなってしまいました、ごめんなさいね 今は傍らで無防備に寝息を立てているふたりが、いつまでも仲良く元気で居てくれる事を願うばかりです。 (2008年07月14日 13時12分30秒)
くつしたちゃんの気持ちに感情移入してしまいます。
そら豆さんもおっしゃっているけど、絵本を読んでいるようです。 次回も楽しみにしていますよ~ (2008年07月14日 16時18分03秒)
◆その当時 くつしたが本当にどう思ったかは
私には分からないことなんですが、 でも頑張って想像してみると きっとこんな感じだったんじゃないかと。 いや、もしかしたら全然ケロッとしてたかも しれませんけどね。 ネコは言葉でしゃべる訳ではないので 「にゃ~」の中に含まれる意味を 想像するしかないんですよね。 (2008年07月14日 17時13分30秒)
◆突然クロちゃんとしっぽがいなくなって
しまったようで。 ハイ、ここに出てくる「人間」は、まるです。 私はその場にいなかったので話で聞いたのを 精一杯 想像するだけなんですが、 それはそれは心細そうにしてたそうです。 (2008年07月14日 17時15分27秒)
◆当時の私は自分のことばっかり考えていたので
あまりくつしたの気持ちを深く考えなかったのですが 一緒に暮らすようになって、後から振り返れば そのときどんなに寂しかっただろうと 考えて苦しくなりました。 それまで鳴かなかったくつしたの一声を 直接聞いたまるは、これを読んで うるうるしちゃってます。 (2008年07月14日 17時19分21秒)
◆そうですね。
クロちゃんとしっぽ、どこかで幸せに 暮らしていることを願うばかりです。 クロちゃんと暮らしている人、 しっぽと暮らしている人も もしかしたらくつしたのことを同じように 心配して思っているかもしれないので、 私は目の前のくつしたを精一杯 大事にするしかないですね。 (2008年07月14日 17時21分49秒)
◆私もクロちゃんやしっぽが幸せで
いてくれることを願っています。 きっと楽しく暮らしていることだろうと 思いますが、 2匹に関しては、私はもうどうすることもできないので ただただ、くつしたを目一杯幸せにしようと思うだけです。 (2008年07月14日 17時23分56秒)
◆できるだけ当時のくつしたの心境を
想像して書いたのですが、 実際のところはどうなのか、 まだまだ表現し切れてない部分はあるかと思いますが。 なんか毎度、苦しい思いをさせてしまって すみません。 でも読んで下さってることがうれしいです。 (2008年07月14日 17時26分13秒)
◆なんか楽しい話じゃなくて
ごめんなさいね。 書いてる本人も、ちょっとうるうるしちゃったり。 これから結末に向けては だんだんハッピーな感じになっていきますからね。 (2008年07月14日 17時29分32秒)
◆読んで下さってありがとうございます。
それぞれ苦しい思い出や感情がありますよね。 私は勇気があるってわけではなくて、 何て言うか、忘れないように書き留めておきたかったんです。 漠然と「当時は色々考えたなー」と思い出したりしても 具体的にどう思ったかや細かい状況は だんだん忘れて行ってしまうので 美化されるというか、自分の至らなかったところは 思い出さないようになっちゃうんですよね。 (だからこそ途中、自分のダークな部分は何ヶ月も 書き進まなかったり放置したりしてたんだけど…。) 私も野良猫に対する考え方は、自分でも なかなか答えが出せなくて、 保護や地域猫の活動も大事なことだと思うけど 自分がそれをするかは別で、 で、それらだけが正しいとされていくことは 本当にいいことなのか、なんかモヤモヤしてしまって 自分では手が出せないのが現状です。 あー、私も取りとめなくなっちゃったな。 私もebinyu~maさんと同じく、目の前のくつしたを 大切にするだけです。 (2008年07月14日 17時38分51秒)
◆ありがとうございます。
できるだけ、当時のくつしたの目線に なるように想像して書いたのですが、 実際のところは分からないだけに 難しいですね・・・。 でも読んで下さって感謝です。 (2008年07月14日 17時41分57秒)
くつしたちゃんに気持ちが同化して
胸が締め付けられるようでした くつしたちゃんがさくらもち市長さんの子になって ただただ、よかった こうして私とも出会えたし…(^^) (2008年07月14日 22時17分45秒)
(T-T)ダラダラ(T^T)ズルズルー
くぅ~ちゃんは 今、さくらもち市長さん家で幸せに 暮らしているのは分かってるのに (┯_┯) ウルルルルル さくらもち市長さんと出逢えて良かったね~ (T(T(T(T_T)T)T)T)うるうる (2008年07月15日 00時49分50秒)
◆読んで下さってありがとうございます。
ズルズルーしちゃいましたか…。 これから、くつしたがどのようにして 我が家にくることになるのかを 展開して行きたいと思います。 (2008年07月15日 05時56分25秒) |
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