未熟な作家の気まぐれファンタジー小説blog

2007/03/20(火)00:13

人形遣い 第1章 人形の吐息

人形遣い(4)

冬の早朝。日差しが緩(ゆる)く、まだ寝たいときにこそやってくる時間だ。 剣吾は今15歳。両親は次の世界に旅立ち、寂しく過ごしているが、その寂しさを消し飛ばしてくれるメンバーがいる。 葵や和希も、もう両親はいない。なので、3人同居して、仲良く生活している。生活資金は、住んでいるアパートの住民の人達に貸してもらっている。大家さんも優しく、周りの住民の人も優しいからだ。もちろん家賃は0円。 受験生になり、早半年が過ぎ去った。今は冬休みで、勉強の真っ最中な3人だが、最近3人とも『マリオネット』にはまっている。 時々押し入れに入っている3体のマリオネットで遊ぶのだが、最近夜になると、押入れからカタカタという音が聞こえ、怖さに震える毎日が続いていた。 この3体のマリオネットは、学校から程近いゴミステーションに3体捨ててあったもので、恐らく捨てた人もこの音で怖さを覚え、捨てたに違いないと最近思い始めた信吾達だった。 ある日、3人で買い物に行った。先に自分のアパートの扉の前に来た葵は、その扉をあけて悲鳴を上げた。剣吾や和希が駆けつけると、3体のマリオネットが、立っていた。 「カタカタカタカタカタカタ・・・・・・」 葵は扉をはさんで怯えたままだ。 「ど、どうした葵。この人形自分の足で立ってるぜ?ここは驚く所だろ。」 和希が軽々しく言うと、葵はいつもの元気が吹き飛んでいて、引きつっている。 「お、お、驚くって・・・・・・あんた達さ、よくそんな人形の前で立っていられるわね。マ、マリオネットはねぇ、う、動かない程度が丁度いいのよ・・・・・・。」 そう言い切ると、和希が呆れて部屋の中に入った。 「ちょ・・・・・・和希、それ~・・・・・・なんか危なくないかい?」 剣吾が促すと、葵は激しく首を縦に振っている。しかし、和希の返事がない。 「か・・・・・・和希・・・・・・?」 返事はない。 「和希!大丈夫か?!」 ドアを剣吾が激しく叩くが、いつの間にか鍵が掛かっている。葵はもう半泣き状態に陥っている。口が聞けなくなってしまったようだ。 そうすると、隣に住んでいた若い男の人が気付き、部屋から出てきた。 「剣吾君?一体何が・・・・・・って葵ちゃんまで。どうしたんだ?」 剣吾が短く事情を説明すると、その男の人は驚いて、近くの鉄鋼場から鉄パイプの尖ったものを数本取ってきて、ドアをこじ開けようとしていた。 その騒ぎで大家さんも気付き、ドアを強行突破し、3体のマリオネットと和希のいる部屋へと侵入していった。 「かっ・・・・・・和希・・・・・・。おい!和希!大丈夫か?!」 和希は3体のマリオネットを操るためのテグスのような糸で縛られており、天井から吊り下げられていた。3体のマリオネットからは刃が和希に向かって突き出ていた。 「モゴ?!ンン~ッ!!(剣吾?!葵~っ!!)」 僕は台所の包丁を持ち出し、急いで吊るしているテグスを切断し、葵と男の人、大家さんは、それぞれ各1体ずつマリオネットをバラバラにしていった。 「うぅ~・・・・・・ゴホッゴホッ・・・・・・」 巻かれていたものを全部取り除くと、和希は汗をたくさん流していた。相当焦っていたらしい。 「ハァ・・・・・・ビックリした。入った途端にグルグル巻きにさせられるんだもの。焦った焦った。」 そう和希がいいながら微笑していた。 3体のマリオネットはバラバラになったまま。動く気配もない。 「このマリオネット・・・・・・ただの遊び道具じゃないな。」 男の人がそう述べる。

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