Clear Gray

さっき、電話がかかってきました。

父からでした。


母に用だったんですけど、もう寝てるよと伝えて、
母の変わりに、知ってる限りのことを伝えて。

で、切ろうとしたら。


「あ、そういえば、お誕生日おめでとう。」

急に、言われました。


おいおい、今日何日だと思ってるの～
とかって一瞬苦笑いしたけど。

そういえばここ一か月、アメリカに出張してたんだっけ？
ということを思い出して。

素直に、ありがとう、と返事をしました。


「２１歳になったんだっけ？」

久しぶりに聞く父の声は、なんだかとても柔らかく聞こえました。

うん、そう。もう２１だよ。

「もう大人だね。」

そうだね～。。おとうさんも、年とるわけだね（笑

「そうだなぁ」




そういえば去年、２０歳の誕生日の時は。

完全に彼はその存在を忘れていて。
６月も半ばを過ぎたあたりの頃、何かの用で電話で話した時に。


私２０歳になったんだよ、と自分から言ったんでした（笑


愛娘の記念すべきハタチの誕生日を、完全にスルーするとは。
なんとも見上げた父親だこと。

と、ちょっと呆れたんですけど。

今年は、一応思い出してくれたんだね。



私は急に、お父さんと話がしたくなって。
適当に話題を探しました。


そういえば、知ってた？
お兄ちゃんが今年、お母さんが結婚した年になるんだよ。


「そうか～もうそんな年になるか」

なんだか気持ち悪いね。ってこの前お母さんと話たの。

「おばあちゃんがすみこの年のころは、
　もう結婚してて、３人子供がいたんだよ」

そういえばそうだね。
なんだか感慨深いね～。

「そうだね。」

…うん、じゃあそういうことで。


と、結局その後すぐ電話を切ったんですけど。


なんだか、どういうわけか。
すごくあったかい気持ちになりました。

こんなに長くお父さんと電話したのは初めてだな、と思い。
どれくらい話したんだろうと、電話のモニターを見てみると。


３分ちょっとしか話していませんでした。



…そうか。。。

私はお父さんと、たった３分話す事すら、もう何年もなかったのか。。。

１０分くらいに感じた、３分でした。


たった少しの事だったけど、
用事以外のことを話したのも、本当に久しぶりな気がします。



小さい頃私は、お父さんっ子でした。
仕事仕事で、昔から家にほとんどいなかったので、

一緒に遊んでもらった記憶なんて、まったくないんですけど。

それでも私は、優しい父が大好きで、
ちょっと抜けた、子供っぽい性格も大好きで。



…まぁ、とにかく。
電話をきってからいろんなことを考えてしまって、

胸の中がいっぱいになってきて。
なんだか泣きたい気持ちになりました。



いや別に、両親が離婚したとかいうわけではなく。
ただの単身赴任なんですけど。

退職するのが８年後。
その頃には、私は２９ですもん。



…もう、お父さんと一緒に暮らす事は無いんだろうなぁ。

会うたびに、なんだか年老いている気がする、
（たぶん気のせいじゃなく、本当に年老いてる）
父の姿を思い出して、


今年の夏は。
ゆっくり時間を作って、お父さんに会いに行って。

初めて一緒に、お酒を飲んで。

それで、
のんびり話をしてみたいな。


そんな事を、ふと思いました。