深海魚






               尾鰭を振るって惑い泳ぐ
               何時 何処で 何が起こるか解らないから
               手探りで進む

               苔の上だなんて優しい場所じゃ踊れない
               古びた硝子の破片の上で充分
               痛み故に感じる愛しさ
               尾鰭を血塗れにしつつ踊る

               あたしなぞ上に昇ってはならないのだ
               華々しき空間には此んな禍々しい生物なぞ
               只の屑同然なのだ

               尾鰭を振るって惑い泳ぐ
               最後の居場所を何時失うのかと
               怯えながらあたしは泳ぎ続けて居る


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