Bacchus Antiques

2009/02/22(日)00:54

5A6ヘッドフォン・アンプ

自作真空管アンプ(372)

半年以上、ブログを放置プレイしてしまったバッカス・・^^; 備忘録として、また日記を書くことになりました。 話は変わって、年末・年始を利用して 真空管式のヘッドフォン・アンプを設計・製作してました。 部品のエージングが進み、音がだいぶ落ち着いてきたのでupします。 そもそもの発端は、自宅の1Fリビングにある真空管アンプの老朽化。 17年も経っているから、電解コンなんかはかなりアヤシイ!! 手持ち部品の残飯整理も兼ねて、 ヘッドフォンも聴けるように小出力のアンプ製作と相成った。 設計ポリシー 1.繋げるスピーカーの能率が91dBなので、出力は1W前後 2.できるだけ手持ち部品を活用する 3.出力段には、今までに使ったことの無い真空管を活用してみる 4.増幅回路はシンプルに済ませる 出力1Wなら6V6,6F6,6BQ5の3結、71A,12BH7などでシングルが常套。 でも3.の主旨に適わずパス・・。 製作記事も多いしな(笑) そこで電池管なるものを登場させてみることに。 ストックには5A6という電池管がある。 これは携帯型無線機なんかに使われていた、 乾電池でも動作するように設計された真空管だ。 手持ちのTUNG-SOL発表の5A6データシートには、 Vf/If 2.5V/460mA,5.0V/230mA Ep max 150V Esg max 150V Pp max 5w Psg max 2W Ip max 40mA となっている。 プレート損失5Wなら、出力1Wは容易だろう。 スピーカーの制動力の観点から、3結動作としたいところだ。 だがメーカー発表のデータには、5結のデータしか無いっ!! そこで3結にして、何本かデータを取ってみることに・・。 Ep=100V,Eg1=0V,Ip=55~60mA Ep=150V,Eg1=-15V,Ip=25~30mA 6L6の3結より若干内部抵抗が低いといったところだ。 Ep=150V,Eg1=-15V,Ip=28mA,Rl=3.5kΩあたりで動作させてみるとしよう。 出力はトランスの効率90%として、2次側0.6Wと見込む。 36Ωのヘッドフォンに0.6Wだと、電圧では4.65Vかかっている。 Eg=-15Vは実効値で10.6Vだから、出力段の増幅度は0.44倍。 6dBの局部負帰還なりオーバーオールの負帰還をかけ、仕上がり利得は5倍を見込む。 パワーアンプとして10倍は妥当だが、ヘッドフォンでそれは大き過ぎるだろう。 ヘッドフォンなら1倍でも良いので、中間の5倍にしてみた。 仕上がり利得5倍にするには、初段の増幅度は11.4倍必要。 負帰還6dBかけるなら、その倍の22.8倍が初段に要求される。 初段に電圧増幅用三極管を起用するとすると、μ=25~30のがちょうど良い。 増幅率がこの辺の電圧増幅用真空管は、6211あたりか・・。 手持ちに無いので、増幅率のやや低いμ=20の12AU7に決定。 これなら5814,5963,6189WAなどと差し替えて楽しめる☆ JJのECC802Sも、音質比較で試してみたい電圧増幅管である。 いきなりではあるが、回路図↓ 出力段は固定バイアスで、シングル動作。 TUNG-SOL、MAZDAの5A6データシートにはグリッド・リーク抵抗の上限値が無い。 とりあえず100kΩでやってみることに。 グリッド電流が流れ過ぎるようだったら、FETによるソース・フォロワを追加するとしよう。 12AU7には出来るだけ電圧・電流を流したいが、供給電圧との兼ね合いから Ebb=157V,Ep=100V,Ip=2.5mA,Rl=27kΩ,Ek=4Vの動作としてみる。 クロストーク改善の目的から出力段には5H×1000μF、 初段にはトランジスタ式のリップル・フィルタを設けた。 負荷電流30mAチョイのトコに、Π型リップル・フィルタに1000μF・・。 過剰投資かもしれないが、相手は効率110dBに迫るヘッドフォン。 普通のアンプ設計では常識的に考えられない事を、敢えてやってみる。 初段のプレート供給電源も、 トランジスタを利用したリップル・フィルタで強力にサポートしている。 また5A6は直熱管のため、フィラメントは定電流点火とした。 要である出力トランスは何種類かの中から、春日無線のKA3250に。 容量5Wで1次2k,3k、2次4,8,16Ωのユニバーサル・タイプで、 バンド型のリード引き出し。 インピーダンス特性も素直で、オリエントコア使用の割りに価格はお手頃♪ ミニ・アンプ兼ヘッドフォン・アンプなら、この辺りがちょうど良いだろう。 負帰還は出力段のプレートから初段のプレートへ、150kΩで直結。 低域まで十分帰還を掛けたかったので、DCカットのコンデンサはあえて使用しなかった。 初段のカソードに戻しても良いのだが、部品が増えるのでP-P帰還(P-G帰還と同じ原理)。 それにP-K帰還は、音の線が細くなるような気がする。 正面↓ 両サイドにウッド・パネルと、 正面にはアルミのヘアライン加工された化粧版を付ける予定。 おなじみのハラワタ・・↓ 回路図には初段ヒータ用の定電流点火回路が掲載されているが、実態には無い。 ハムが殆ど聞こえないので、暫くは交流点火で行く予定。 電源トランスからの漏洩磁束による、ごく僅かなハムがヘッドフォンから聞こえる程度。 ヘッドフォンの効率が108dBなので、まずまずかな・・。 電源トランスをRコアにすれば、だいぶ改善されるだろう。 ジー・・とゆ整流ダイオード由来のノイズは、ヘッドフォンからも全く聞こえない。 trr=400nSの中速ダイオードを使ったのだが、10年前のダイオードでもまだまだ現役だな。 手元に600V8A、trr=18nSの超高速ダイオードがあるのだが、 こちらは何かの機会に換えてみるとしよう。 制震材のオトナシートは、要所要所で張る予定。 今のままではシャシーを叩くと、ヘッドホンからカンカンと音が聞こえてしまう。 シングル・アンプなので調整は至って簡単☆ 定電流回路の電流調整VRを回して、5A6のフィラメント電圧を5.1Vに設定。 定電流回路なので電源ON直後から、フィラメント電圧がじわじわと上昇する。 1時間見て5.1Vとなるようにした。 0.1Vの上乗せは、エミッションup程度と思って頂ければ良い。 あとは固定バイアス電源を調整し、出力管のアイドリング電流を28mAに調整。 固定バイアス電源の出力は、 出力管を刺す前に-20Vくらいに予め設定しておくのは、言うまでも無い。 音のほうは・・。 これが0.5Wのアンプとは思えないくらい、制動力の効いた低音が出る。 ヴォーカルは艶やかで非常に澄み渡り、バイオリンの倍音が素晴らしい。 直熱管シングルの特徴なのか、音の分離が今まで使っていた6L6の3結とは全く違う。 ジャズもクラシックも、綺麗に鳴らしてくれるのがこのアンプの最大の特徴だ。 真空管式のヘッドフォン・アンプは、電源トランスと出力トランスの位置による 誘導ハムを最小にするのが大変。 他にも電源のリップル・ノイズや真空管のマイクロフォニック・ノイズ、 ヒーター&フィラメント・ハム、クロストークと、 一般的なパワー・アンプとは比較にならないほど条件が厳しい。 実際本機も、組み込む前に誘導ハムが最小となる配置を探した。 この配置確認だけで、半日も費やしてしまったよ・・。 リップル・ノイズやフィラメント・ハムは物量と半導体を利用した回路のおかげで、 全く問題にならないレベルとなった。 組み込みにはかなりアクロバティックな配置となったため、 シャシー加工よりも時間を要してしまった。 昔のコンデンサの、何とサイズの大きいことか!! 今度ヘッドフォン・アンプを作るとしたら、もう少しゲインと出力を下げて プッシュプルにチャレンジしてみようと思う。 今回の仕上がり利得だと、音量VR9時でちょうど良いヘッドフォンの音圧だ。 サイズも今回の1/4程度で、ヘッドフォン専用。 もう回路は決まっていたりする(笑) ヘッドフォン・アンプ、それは単純そうで奥の深い、大人の遊びゴコロを擽るアイテムだ。

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