2009/11/30(月)20:06
6Y6G カソフォロ・アンプ 設計編
依頼のアンプは、6Y6Gカソフォロ・出力アンプとする。
TUNG-SOLのテクニカル・データを読むと、五結での標準動作例が載っている。
これは、メーカーが自信を持って公表する例なので、信用して良いだろう。
<標準動作例>
プレート電圧:200V
スクリーン・グリッド電圧:135V
グリッド・バイアス:-14V
プレート電流:61mA
負荷抵抗:2.6kΩ
出力:6W
とある。
今回はこの動作で設計を進める。
なお、負荷抵抗2.6kΩは一般的ではないので、2.5kΩで計算する。
テクニカル・データには、Esg=135Vでのプレート特性曲線があるので、
Ep=200V、Eg=-14Vを通る2.5kΩのロードラインを引いてみた。↓
Egは-14Vを中心に0V~-28V振ると、プレート電圧は300Vp-p強動く事になるが、
カソフォロは利得が1以下なので、グリッドに300Vp-p強のドライブ電圧を入力する。
その時の出力は(300/2/2の平方根)^2/2500で、4.5Wと算出される。
出力トランスの損失が加わり、最大出力は4W強がいいトコだろう。
ロードラインから、6Y6Gが最大出力時カットオフ・プレート電圧は350Vである。
前段を抵抗結合増幅器とする場合、その段のプレート電源電圧は余裕を見て400Vは必要。
これが2階建てとなる要因なのだが、前段の負荷をチョーク・コイルとすることで問題は解決。
6Y6GのEp200Vでも、プレート・チョークであれば300Vp-pのドライブ電圧は容易に得られる。
入力1Vでフルパワーとするには、前段の増幅度は140倍必要である。
6AN5WAヘッドフォン・アンプと同じく、五極管が必要。
今回も5654/6AK5Wを採用するとしよう。
ニー特性に優れ、十分なドライブ電圧が得られるからだ。
ここでプレート・チョークのインダクタンスを100Hと仮定すると、
1kHzにおけるインピーダンスは2*3.14*1000*100で628kとなる。
6Y6Gのグリッド・リーク抵抗値が250kΩだとしても、合成インダクタンスは200k弱となり、
5654のプレート特性曲線上のロードラインはほぼ水平となり、
300Vp-pのドライブ電圧は余裕で得られる。
今回採用の、真空管↓
回路図は6AN5WAヘッドフォン・アンプと似たような構成。
CR結合になっているだけである。
出力トランスは春日無線のKA-6625Sを採用した。
1次2.5k、10Wのオリエント・コア採用の、シングル用出力トランスである。
1次巻線抵抗が219Ωであり、6Y6GのIpとIsgを流すと14Vの電圧が発生。
それをそのまま、6Y6Gのバイアスとしている。
6Y6Gのプレートと5654プレート・チョークの間のダイオードは、ストッピング・ダイオード。
チョークのキック電圧が、6Y6Gに悪影響を及ぼすのを防ぐ狙いがある。
安定化電源と大容量のフィルタ用電解コンデンサがあるので、
このダイオードは要らないかもしれない。
左右別チョークで電流を供給し、クロストークの改善に努めた。
何度も書くが、カソフォロ出力は良質な電源が必要である。
6Y6Gの内部抵抗が140Ωともなると、電源の質が音質となって現れよう。
低電圧・大電流向きの真空管なので、尚更である。
たまに6Y6Gでひどい音と聞くが、Esg電圧の選定を誤ったか、電源がプアなのかもしれない。
電源トランスは、ここ最近贔屓にしているノグチのPMC-130M。
2次タップが180V130mAと、6Y6Gシングルに設計されたかのような巻線構成である♪
予算が限られているので、コア材はハイライトとした。
プレート・チョークは、同じくノグチのPMC-80H。
コイツもハイライトだったかなぁ・・。
コア材に縞模様が無いから、多分・・ハイライトだろう。
5654のプレート電流は3mAを予定しているので、このチョークの定格8mAは余裕の動作。
それ以上のチョークは、サイズも大きくなるし価格も巻線抵抗値も高いし、
ストレー・キャパシティーで高域特性が悪化しそうなので、パスした。
次は電源トランスと出力トランスの位置関係による、ハムチェックに移る。