演劇、観劇のカフェ

2007/11/05(月)00:11

『殿様と私』(11/2-11)

演劇、観劇(304)

作・マキノノゾミ。 事前に知っていた情報(参考:11月に観たい-文学座)以上に、奥の深い、また、巧みに描かれた登場人物一人一人の背景が活かされた作品でした。 1886年(明治19年)、東京・麻布鳥居坂の白河義晃子爵に仕える家令(加藤武)のちょん髷が外務卿の書生から笑われ、家を罵倒されたのを見返すために、鹿鳴館を、というよりも文明開化を嫌っていた白河義晃が、華麗なダンスを披露して世間の鼻を明かしてやろう、ということになりました。 そして白河家にアメリカ人のダンスの講師がやって来ます。 英語と欧米の文化を理解しようとしない当主の白河義晃(たかお鷹)と、欧米のプライドで向かうアンナ(富沢亜子)。 二人の意地の張り合いは面白いのですが、それはこの作品にとって、ほんの導入部分でしかありません。 長い間の鎖国から、いきなり明治の文明開化を受け入れようとする日本人の姿と、欧米の人々には日本はどのように映っているのか、実際にあった歴史の事件を織り込んで描かれています。 この白河家には、足に軽い障害を持った娘・雪絵(松山愛佳)がいます。 彼女を大事に思う家族により、世間から遠ざけられた雪絵を、アンナは開国前の日本のようだと称します。 その雪絵がアンナとの出会いで自ら外の世界へ一歩を踏み出そうとする勇気と、傷心から立ち直ろうとする姿、それを見守る人々に、様々な想いが込められているのを感じていました。 潔く生きようとする日本人の姿に感心する現代にいる自分が、少々情けなく感じられます。 マキノノゾミ作品ではお馴染みとなった浅野雅博が扮する通訳を務める車夫・三太郎のゆったりとした愛情が微笑ましくありました。 演出・西川信廣、美術・奥村泰彦、照明・金 英秀、音楽・上田 亨、衣裳・山田靖子、振付・室町あかね (紀伊國屋サザンシアターにて) ※東京公演の後、兵庫県立芸術文化センター中ホール(11/17、18)、長岡リリックホール・シアター(11/20)で上演されます。 ※チラシ画像については、文学座に掲載の許可を得ております。無断で転載をなさらないでください。

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