2007/12/12(水)12:30
『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』(12/7-16)
劇場に入って目に飛び込んできたのは、フィレンツェの広場(ピアッツァ)の風景です。
中央にオーケストラピットを作った舞台の、その周囲をプールサイドのごとく登場人物が歩き回り、物語が始まります。
1953年夏、イタリアのフィレンツェが舞台。
アメリカ人のマーガレット(島田歌穂)と娘のクララ(新妻聖子)が美術館巡りを楽しんでいます。
帽子を拾ったことから、イタリア人の青年ファブリーツィオ(小西遼生)とクララは互いに恋に落ちました。
彼の家族とも会い、クララは気に入られますが、この急な展開にマーガレットは気が気ではありません。
彼女の両親が躊躇するのは、クララの抱えるある障害ためなのです。
そのことを言い出せずにいるうちに、ついには婚礼の話にまで進み・・・。
演出は、ミュージカルの演出が『OUR HOUSE』に続いて2度目となるG2。
作品が象徴するのは、クララの素直で純粋な心です。
それを素直に受け止めた人々との関係で、彼女が人間として成長して行く姿を‘愛’を通して描かれています。特別な手法で。
ファブリーツィオと家族がこのフィレンツェで交わす会話はイタリア語。
そして登場人物の家族は皆、イタリア語で普通に話しています。
プログラムの解説を読むと、観客にもクララたちが異国の地で味わうような言葉の通じないもどかしさを感じて欲しいからという演出なのだそうです。
言葉が通じないとわかった時、相手の意志を全身で理解しようとする経験は誰でも持ったことはあるでしょう。
その感覚です。
誠意を伝えたい、そして理解したい。これがクララのことを理解する人々の全てだと思いました。
さらにこの作品の優れているところは、複雑な心の葛藤、愛であったり、不安であったり、それらが乗せられている旋律にあります。
一度で覚えられるような簡単なフレーズではありませんが、歌という表現に長けた役者により、伝えられることに魅力を感じました。
母の心配、クララとファブリーツィオの愛の喜び、そしてファブリーツィオの父親の鈴木綜馬、母親の寿ひずる、兄嫁のシルビア・グラブ、それぞれが不安も喜びも感情の全てを旋律に乗せた高度な楽曲の魅力を存分に聴かせてくれました。
ミュージカルであることを忘れさせるミュージカルとでも言いましょうか。
新妻の透明感ある存在と小西の技量にも勝る真っ直ぐな歌声が、この作品を愛おしいものにしています。
アメリカのミュージカル作品としての存在は知っていましたが、楽曲や作品の内容までは知りませんでした。
輝かしい受賞歴もありますが、まずは自身の目で耳でそして心で感じて欲しい作品です。
演出・翻訳・G2、音楽監督・島健、振付・前田清実、美術・松井るみ、照明・高見和義、衣裳・原まさみ
(ルテアトル銀座にて)
☆洋書「The Light in the Piazza 」
☆作・エリザベス・スペサー、訳・青木秀夫「天使たちの広場」早川書房
この作品の原作の邦題です。