演劇、観劇のカフェ

2008/02/10(日)00:08

『ファントム』(2/7-22)

ミュージカル、観劇(95)

大阪と名古屋での上演を経て、東京公演の幕が開きました。 『ファントム』は、ストーリーはアンドリュー・ロイド=ウェーバーの楽曲で世界的に有名な『オペラ座の怪人』と原作は同じものです(原作・ガストン・ルルー)。 しかしミュージカルとは言っても、脚本、音楽、演出ともに『オペラ座の怪人』とは全く別のものとなっています。 この作品のストーリーは、パリのオペラ座の舞台で歌ってみたいと願う少女・クリスティン・ダーエ(徳永えり)の、通りで歌いながら楽譜を売る声を聞いたシャンドン伯爵(東京公演初日はルカス・ペルマン。パク・トンハとWキャスト)が、彼女に歌のレッスンを受けられるようにオペラ座の支配人に宛てた紹介状を書いてくれたところから始まります。 しかし経営難からその支配人は解任されていましたが、クリスティンは次の経営者であるカルロッタ(大西ユカリ)の付き人となり、ついに彼女は自身の実力で周囲も認めるほどの大役を掴みます。 その影にはクリスティンに自ら歌って指導するファントムと呼ばれる青年(大沢たかお)の存在がありました。 誰にもその存在を知られたくないという青年は、声だけでなく彼女を愛するようになります。 独占欲に満ちた彼の愛が導くものは・・・。 脇を固める俳優や歌手にオペラを歌える経歴のアンサンブルも配し、作品を支えます。 この作品ではファントムの生い立ちが詳細に語られており、人に知られないように生きて行く青年にとっての幸せとは何かが切なく描かれています。 そして歌唱も、彼女自身も成長するクリスティンの感情の変化が、この作品の鍵となる・・・はずでした。 しかし、結果的にファントムとクリスティンがパリのオペラ座を制するほどの実力を備えているという実感を、このミュージカルで得ることはできませんでした。 ファントムのその切ない心情を語った後に歌い上げる場面では、そのまま感情をセリフで聞けたなら、という想いを抱きました。 さらには、シャンドン伯爵が見つけたのはダイヤモンドの原石ではなかったのか、クリスティンのファントムによって成長する姿は見られないのか、最後までその懸念は拭えないままでした。 プレイガイドの情報から、既に東京公演のチケットは完売に近く、観客が作品とキャストへ大きな期待を寄せていることは明らかです。 ミュージカル作品である以上、何をもって観客を説得し、満足させるかということを、作り手に認識して欲しいと思います。 観客が本当に期待するのは、舞台に立つ俳優の姿だけではないのですから。 上演台本・演出・鈴木勝秀、脚本・アーサー・コピット、作詞作曲・モーリー・イェストン、翻訳・伊藤美代子、音楽監督・前嶋康明、美術・二村周作、照明・倉本泰史、衣裳・前田文子 ※公演詳細は、主催の梅田芸術劇場のサイトで。 (青山劇場にて) ☆原作・ガストン ルルー、翻訳・長島良三「オペラ座の怪人」角川文庫  

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