2009/12/18(金)08:52
バルカン半島の同時代演劇-紛争地域から生まれた演劇-(12/16-19)
国際演劇協会主催のドラマリーディングが、神楽坂にあるシアターイワトの3階で上演されています。
「紛争地域から生まれた演劇」という名のもとに、今回は「日本・ドナウ交流年」に因んで、ドナウ河の文化圏の中でも長く紛争を経験した地域が取り上げられています。
セルビア『足跡~TRACKS』
クロアチア『大統領の殺し方』
ルーマニア『ケバブ』
上演されているのは、この3作品。
11月には「平和の構築と演劇の可能性をさぐる!」というテーマでシンポジウムも行われていたようです。
さて公演初日に観たのは、『大統領の殺し方』
作・ミロ・ギャヴラン、翻訳・舟川絢子、演出・野崎美子
出演・坂本三成、金子あい、関戸将志、篠山美咲
あらすじを紹介すると、
大学で社会学を教えるロバート(坂本三成)と精神病院のマネジャーである妻のステラ(金子あい)、そして二人の子供たち。
夫婦はお互いに忙しいけれど平穏な日々を送っています。
そこへ突然、9年ぶりにメキシコからロバートの弟のイゴール(関戸将志)が婚約者(篠山美咲)を連れて訪れてやって来ました。
その理由とはこの国を訪問するアメリカ大統領を暗殺するため。
自分たちの生活を守るためにステラが考え出した方法とは・・・。
ステラの夫もかつては政治的な信念を反骨精神で貫いてきました。
しかしステラと出会い、家族を持つことで得た幸せを今は噛み締めています。
身内にテロリストがいることが、家族にどんな影響を及ぼすことか。
そして想像を絶するステラの作戦。
家族を守ろうとするが故の恐さ、横暴さが、この地に生きる人々がようやく手に入れた平穏な生活を逃すまいとする状況と紙一重であることを物語っています。
舞台の主な照明は、天井からぶら下がる電灯のみ。
この光の陰影が読み手の心情を映し出し、時折入るパーカッションの音色が徐々に変化する状況の緊迫感を伝えていました。
読み手の俳優全員が舞台にいます。
読む場面に登場していない人物も、物語の中で話題になると、舞台の上でその人物の顔が浮かび上がっている、そんな効果をリーディングで示してくれました。
読み手の俳優の確かな技量も聴き応えがあります。
※公演の詳細は国際演劇協会のサイトで。
(シアターイワト 3階にて)