演劇、観劇のカフェ

2010/04/26(月)22:06

『御名残四月大歌舞伎』一部二部三部(4/2-28)

歌舞伎・古典、観劇(134)

『御名残四月大歌舞伎』ですから、第一部、第二部ともに見逃すわけにはいきません。 第一部 「御名残木挽闇争(おなごりこびきのだんまり)』では、花形と呼ばれている若手の役者が揃って中心となって登場する華やかな演目です。 登場する役名はお馴染みのものですが、内容が歌舞伎座の新築に係わるものであるところが、歌舞伎らしいと思いました。 だんまりでは、闇の中、大切なものが人から人へと持ち主を変えて渡っていきます。 ここで渡ったものは、新しい歌舞伎座の設計図。 一同は、三年後に再びこの地で会うことを約束して去っていくのでした。 「熊谷陣屋(くまがいじんや)」 繰り返しよく上演される名作です。 随分前になりますが、歌舞伎通のえびす組のコンスタンツェに、歌舞伎を昼夜どちらかを観たいけれどどうしたらいいか相談したところ、「熊谷陣屋」のある方だと薦められたことがありました。 そのおかげもあって、努めてこの作品を観るようにしていました。 今回の熊谷次郎直実は、中村吉右衛門。 熊谷と同様に、藤の方、熊谷の妻 相模の役どころも気になります。 歌舞伎のレパートリーシステムならではの、初心者にとっては配役の違いも楽しんでいます。 「連獅子(れんじし)」 この演目も、様々な役者の組み合わせで観てきました。 獅子の親子の舞踊なので、親子など血縁関係にある役者で見ることが多い作品です。 今回は中村勘三郎、勘太郎、七之助親子による舞ですが、さすが中村屋。 獅子の精となってからの毛を振る場面では、息がぴったり合うのは当たり前、どこで呼吸を合わせているのか次第に早くなっても乱れることはありません。 これぞ技、これぞ芸を見せ付けられて、客席からは何度も何度も大きな拍手を送りました。 第二部 先月に引き続いて「菅原伝授手習鑑」の四段目の「寺子屋(てらこや)」から始まります。 こちらの作品も、何度観たことでしょう。 主従の忠義に、親子の情、この深い物語は、観るごとに観客に新たな発見を促します。 「三人吉三巴白浪(さんにんきちざともえのしらなみ)」 お嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三、三人が出会い、義兄弟の契りを交わす有名な場面。 今回はそれぞれ尾上菊五郎、中村吉右衛門、市川團十郎と、なかなか見られない役者が揃いました。 それぞれが表の顔、本性、そして契りを交わすに至る変化を見るのも興味深い。 円熟した役者が綴る名場面を堪能しました。 そしてもう一度第三部 「実録先代萩(じつろくせんだいはぎ)」 初日に観た第三部は、3階席からでしたが、今回は1階席から役者の表情を楽しみます。 浅岡の息子の千代松と主君の亀千代が初めて出会う場面となりますが、子役の堂々とした態度により時には笑いと涙を誘いました。 亀千代に扮する片岡千之助は、片岡仁左衛門の孫で現在10歳。 仁左衛門も『女殺油地獄』の与平を、将来は千之助に教えたいという話しも聞かれます。 その日が待ち遠しいと思わせる千之助、新しい歌舞伎座へと期待が膨らみます。 「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」の茶屋廻りの金棒引きの音で始まる場面はワクワクしますね。 満を持して揚巻の登場。扮する坂東玉三郎の眩いばかりの美しさ。 そして隅から隅まで歌舞伎座さよなら公演最後の演目ならではの豪華な配役です。 歌舞伎ではちょっとした出番にも大きな俳優がつくことをご馳走と言います。 片岡仁左衛門に続いて、中村勘三郎の登場に、客席は沸き、役者もそれに応える日々のアドリブが楽しいお役柄。 昔からその時代の流行を語るのだそうで、助六の團十郎や白酒売の菊五郎に向かって、今旬な話題で観客を笑わせてくれました。 千穐楽には一体どんな大騒ぎになるのでしょう!!! 江戸時代の洒落た風習に感謝しつつ、帰りには名残惜しく歌舞伎座の写真を撮りまくったのでした。 ※公演詳細は、歌舞伎公式ウェブサイトで。 (歌舞伎座にて)

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