『パイレート・クィーン』(11/28-12/25)
初日の幕が開いた『パイレート・クィーン』。キャストの成熟した歌と芝居を見ながら、感慨深い想いにかられました。主要なキャストとして保坂知寿、山口祐一郎、今井清隆、石川禅、宮川浩、涼風真世6人の名前が挙げられています。保坂知寿が帝国劇場のミュージカルの大舞台で主演を務めるということだけでも、ロビーでは待ちに待っていたというコメントを多く耳にしました。彼らはそれぞれの居場所からミュージカルファンを今日まで牽引し、そして時を経てようやく同じ舞台に一堂に会したという感慨があります。さて、物語は16世紀、エリザベス一世(涼風真世)がイングランドを治めている頃、一方アイルランドではオマリー族長(今井清隆)が次の族長に指名した娘、こちらも実在したグレイス・オマリー(保坂知寿)がイングランドの圧制からアイルランドの自立を目指して孤軍奮闘していました。一族のためと恋人ティアナン(山口祐一郎)との恋を諦めてまで結婚した夫ドーナル(宮川浩)。頼りにならないどころか、イングランドに降伏しようとする始末です。イングランド勢を一度は追い返したものの、ついにグレイスは捕らえられ、イングランドで幽閉されることになりました。7年の時を経てティアナンが自身と引き換えにグレイスの釈放を求めます。そこで初めて膝を突き合わせてエリザベス一世と話す機会を得たグレイス。立場が違えど互いに理想と女性としての尊厳を持っての話し合いの末、グレイスは釈放されました。互いの国を守るため、指揮をとるエリザベス一世とグレイス。涼風真世と保坂知寿、宝塚歌劇団と劇団四季でともに看板女優として名を馳せた二人ですが、声質の違いが役柄に反映されて、これぞミュージカルの楽しみを味わいました。「彼女を支えていたのは一人の男・・・」つぶやくエリザベス一世の言葉の意味が幾重にも重なる女性の物語です。実際にアイルランドへ行ってみて感じるのは、イギリスに近いけれど文化は全く独立したものであるということ。この作品では、ケルト音楽とアイリッシュダンスが舞台を盛り上げます。体に響くそのリズムが静かに客席に広がりました。脚本・アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク、リチャード・モルトビー,Jr.音楽・クロード=ミッシェル・シェーンベルク歌詞・アラン・ブーブリル、リチャード・モルトビー,Jr.、ジョン・デンプセイ原作・モーガン・ルウェリン著「GRANIA―She-King of the Irish Seas」翻訳・吉田美枝、訳詞・竜真知子、演出・山田和也振付(アイリッシュ・ダンス)・キャロル・リーヴィ・ジョイス装置・松井るみ、衣裳・小峰リリー、照明・高見和義、音響・山本浩一※公演詳細は、東宝の公式サイトで。☆モーガン・ルウェリン著「GRANIA―She-King of the Irish Seas」