【ゲーム紹介】プラネット・スチーム(Planet Steam)
ボックスアートプレイ風景 ドイツのクラウドファンディングサイト「startnext」で出資を募集した(そして残念ながら失敗したw)「Domus Domini」のデザイナー、Heinz-Georg Thiemannが2008年に発表したデビュー作。これはそのリメイク版で、新たなパブリッシャーはFantasy Flight Games。 タイトルから想像がつくように、舞台は惑星スチーム。SFだけどメインエネルギーは蒸気、主要な移動手段は飛行船というアメリカンなスチームパンクだ。プレイヤーはまだ更地に過ぎない惑星スチームに入植する投資家となり、土地を買いあさって水(この星の主要資源)を汲み出すタンクを建設し、そのタンクを改良してエネルギー、鉱石、水晶を抽出できるようにして、市場での売買で利益を上げる。規定ラウンドプレイしたらゲーム終了で、現金と資産価値を合計して、最も財産を蓄えたプレイヤーの勝ち。 ラウンドごとに競りを2回行うのがこのゲームの特徴で、まずは専門家カードを競る。スタートプレイヤーから時計回り順に競り上げていくおなじみの方法で、落札者は残っている専門家カードから1枚を取る。 専門家カードは特殊能力をもたらすほか、ラウンド中の手番順も決める。これ以降は(競りを除いて)カードの番号順にプレイすることになる。 専門家カード。一番右の「レディ・スチーム」は何の能力も持っていないが、これを取ったプレイヤーはスタートプレイヤーとなり、以降あらゆる局面で(次ラウンドの専門家カードの競りまで)一番最初に行動することができる。一番左の「銀行支店長」を取ったプレイヤーは5番手になるが(当然5人プレイでしか使われない)、輸送機を次のクラスに改良する(後述)か、任意の資源を1つ手に入れることができる。常に狙って取るようなカードではないが、輸送機改良にはそれなりのコストがかかるので、資源価値によっては手番が最後になっても取るべきかもしれない。 次に惑星スチーム上の1区画を競る。2番手の専門家カード「投機家」を取ったプレイヤーが、マップ上から空き区画(なければ中立区画)を1つ選んで競りにかけ、「レディ・スチーム」を取ったプレイヤーから時計回り順に入札。落札者はその区画に自分の所有権マーカーを置くことができる。このあとで各プレイヤーは任意の区画を1カ所ずつ無料で手に入れられるのだが、落札者は他プレイヤーの倍の区画を得るわけだから、当然その分有利になる。なお、「投機家」には競売区画を選ぶ能力の他に「区画を落札したときには入札額の半分しか支払わない」というトンデモ能力があるため、序盤は「投機家」が落札すると考えていいだろうw 競りのあと、各プレイヤーは手番順に空き区画を1カ所手に入れる。どこでもいいのだが、建設許可証(4番手の専門家カード「設計技師」を取るか、あとのフェイズで購入するかして得ることができる)を使わない限り、プレイヤーは6面ダイス1個を振らなきゃならない。出目が1~3だった場合、狙った区画を得ることはできない。その代わり、プレイヤーは狙った区画から任意の縦横方向を1方向選び、その方向で一番近くにある空き区画を得ることができる。ここがちょっと分かりにくいが、急ピッチで展開される植民地開発の混乱の中で手違いが生じたってことなんだろう。 たとえばマップがこんな感じのとき、Aの区画が欲しかったのに出目が1~3だった場合、BかCかDを得ることになる。Aから上方向の区画はすでに緑と橙が全部所有しているため、もう取ることはできない。選んだ区画から上下左右どちらの方向にも空き区画がない場合は何も得られないので、建設許可証を使わずにダイスを振るなら、1/2の確率で発生するリスクを考慮に入れて区画を選ぶべきだろう。 2回の競りと区画獲得が終わったら、手番順にいろんなものを購入していく……のだが、ここで非常に重要になるのが「活動コスト」という概念。このフェイズで1回でもアクションしたければ、まず問答無用で水資源1枚を支払わなければならないのだ。フェイズ中に何をいくつ購入しようとも、とにかく水資源1枚を支払う。これを支払えわない(支払えない)場合、ストックから水資源を1枚もらうことができるが、いっさいのアクションができないので要注意。ゲームは長くても7ラウンド、5人プレイなら4ラウンドしかない。わざとならともかく、計算違いで1回購入フェイズを飛ばしたら、間違いなく致命傷だ。 コストが支払える限り、何でも好きなだけ好きな順番で買うことができる。ただし、たいていのものは駒数に制限される。また、タンクは植民地では最大14個しか売っておらず、供給量に応じて価格が変動する。有り余ってるときは10金で買えるが、残り1個のときには22金まで高騰する。売り切れてしまったら母星から輸入するしかなくなり、これには現金の他に資源も必要になるため、極めて入手しにくくなる。これだけ見ても、「レディ・スチーム」に特殊能力がない理由が分かるだろう……1番手であるということは、それだけで非常に有利なのだ。 購入できるタンク(赤銅色)と、それに取り付ける変換機3種類。タンクだけで区画に置いた場合、そのタンクからは水を生産することになる。対応する変換機を取り付けて置くと、それぞれ水の代わりにエネルギー、鉱石、水晶を生産するようになる。各タンクにはいずれかの変換機を1個しか取り付けられないが、それとは別に過給機(右上のタンクの頭に取り付けられてるやつ)を取り付け、生産量を1増やすこともできる(その分非常に高価だが)。 プレイヤーは輸送機を改良することもできる。このゲームの輸送機とは、要するに資源倉庫だ。ランクが低いと少ない資源しか保管できないので、改良によってその数を増やすことができる。輸送機カードは各プレイヤー4枚持ちで、それぞれ対応する資源しか保管できないので、自分がたくさん生産する資源をきっちり保管できるようにしたい。 輸送機カード。左上のアイコンに対応する資源を、その横の数値分だけ保管できる。右上のカードは拡張ルールで使うもので、任意の資源を3枚まで保管できる。 ここまで来たら、やっとタンクを使って資源を生産できる。しかし、このゲームでは生産さえ自動処理ではない。ほとんどのタンクは、資源を生産するためにエネルギーを必要とするのだ(エネルギー生産タンクと、河川区画にある水生産タンクだけは無料で生産する)。このため、プレイヤーは手持ちのエネルギーと相談して、どのタンクで生産するかを考えないといけない。 基本的に、各タンクは対応する資源を1枚生産するが、同じ資源を生産するタンクがいくつかつながっていたり、過給機がついていたりすると、その分余分の資源を生産する。また、マップ右側の係留地点には支援飛行船が1隻置かれており、これと同じ段にあるすべてのタンクは追加資源を1枚ずつ生産する。どの係留地点に支援飛行船を置くかは、3番手の専門家カード「飛行船船長」を取ったプレイヤーが決める。当然、自分のタンクがたくさん並んでいる段を選ぶべきだろう。 最後に資源の売買。基本ゲームでは水晶、鉱石、水、エネルギーの順で、手番順に購入か売却のどちらかを行う。購入すると供給量が減り、売却すると増えて、そのたびに価格が調整される。パスしても現在の供給量に応じて価格調整が入るってところはちょっと珍しいかも。ここでも先手は好き放題できるので有利だが、直前のプレイヤーと逆のことをやれるなら、後手でもそんなに損ではないだろう。 資源の他にも、建設許可証を売買したり、高級住宅所有権を購入したりできる。後者は何の効果も持たないが、ゲーム終了時に高い資産価値を持つので、勝利のためには遅かれ早かれ購入することになるだろう。 このあと、市場に鉱石とエネルギーがある場合、それを使って新たなタンクが生産されて現地市場で流通するようになる。このため、序盤は常にこれらの資源(特に鉱石)が高騰するが、タンクを置く場所がなくなる(=タンクが売れなくなる)終盤にはだぶつくだろう。タンク生産の時点でどちらか(あるいは両方)の資源が0だった場合、タンクは生産されず、その資源は一気に高騰する。これを狙って鉱石/エネルギーを買い占め、値上がったところを狙って次ラウンドに売却して儲ける、なんて戦術もありかもしれない。 これを規定ラウンド繰り返したらゲーム終了。現金の他、タンクや過給機、資源、高級住宅権を現金換算し、資産価値が最も高かったプレイヤーが勝者となる。 とにかく苦しそうなゲームだ。競りゲーというのは基本的に苦しいものだが、その競りが毎ラウンド2回入るんだから苦しくないわけがないw さらに購入のたびに必要になる活動コスト、生産のために支払わなければならないエネルギーなど、とにかく何をするにも、一般的な拡大再生産ゲームに比べて支払いが多くなっている。区画の獲得さえ、確実に狙った場所を押さえるには建設許可証が必要で、それを得るには「設計技師」を取るか、15クレジットで買うしかない……どんだけプレイヤーを絞れば気がすむんだw 間違いなくマゾゲー。だからマゾにはお勧めw これでもまだ物足りないというマスタークラスのマゾのため、さらに条件を厳しくする上級ルールが5つと、市場価格を調査したり、他プレイヤーを直接妨害したりできる拡張カードが3枚入ってる。旧版の拡張カードはプロモ用で入手しづらかったため、これは非常にありがたい。 コンポーネントは旧版から大きく変わっている。特に木製だったタンク類がプラ駒になったところは好き嫌いが分かれるだろう。 旧版のプレイ風景。見栄えはいいが、タンクに変換機や過給機がかちっとはまるわけではなく、ゆるい隙間に挟んだり、タンクの上に置くだけだったりしたので、プレイアビリティは新版の方が上だろう。 だが、なんといっても一番の変更点は箱の大きさだ。新版はよくある正方形サイズで、収納にもさほど困らない。この画像で有名な旧版はとにかくでかく、縦にしても横にしても置く場所に難儀したので、今から買うなら新版一択と言っていい。「我こそは三国一のマゾ」という人には是非プレイしていただきたいw