今日もプレイミス

2013/04/15(月)10:00

【ゲーム紹介】フランシス・ドレイク(Francis Drake)

和訳(134)

ボックスアートゲームボード(ルールブックから切り出し)  デザイナーは「バラ戦争」で知られている(そしてそれ以外知られていない)Peter Hawes。パブリッシャーは本人が設立したオーストラリアのKayal Gamesだが、アメリカでの販売・流通はEagle Gamesが行うようで、キックスターターでの出資募集もEagle Games名義で行っている。  Wikipediaによると、フランシス・ドレイクとは16世紀半ばのイギリス人。始めは海賊(私掠船船長)として活躍し、のちのその功績を認められて海軍提督となり、スペイン無敵艦隊を撃破した英雄(スペイン人からは嫌われてるようだ。当たり前w)。プレイヤーは駆け出しの私掠船船長となり、第二のドレイクとなることを夢見てカリブ海のスペイン領を荒らし回る。スペインじゃ売れねーな、このゲームw  ゲームは3回の航海に渡ってプレイされ、1航海は準備フェイズと航海フェイズに分かれている。  まずは準備フェイズ。各プレイヤーは小型のフリゲート船を1隻持っているだけなので、航海に必要なものをイギリスのプリマス港で揃えなければならない。プレイヤーはプリマス港に並んでいる船順に、通りにある18の場所にディスクを置いていき、その場所に応じてさまざまなものを得る。各場所にはディスクを置ける枚数が決まっており、各プレイヤーは1カ所に1枚しか置けない。また、ディスクを置いたスペースごとに効果が少しずつ異なり、先に置いた方がより多くのものを得られるようになっている。さらに、この通りは“一方通行”なので、一度通り過ぎた場所にはもうディスクを置くことができない。  こんな感じで、下段中央の場所から時計回りに進んで、右上の「波止場」で終わる。ディスクは10枚持ちなので、全部の場所に置くことはできない。当然、途中の場所をいくつかすっ飛ばすことになるが、いったん飛ばした場所にはもう戻れない。  絶対必要なのは補給品。カリブ海は4つのゾーンに分かれており、より遠くのゾーンに行くにはより多くの補給品が必要になる。補給品を4つ用意できればどこにでも行けるが、1個しか用意できないと一番手前のゾーンにしか行けない。もちろん、1個も持っていなければどこにも行けなくなるw 補給品を得られる場所は3カ所あるので、他プレイヤーに完封されて航海フェイズ中に何もできなくなることはない。忘れないように最低1個は取るようにしよう。他にも、町や砦を攻撃するのに必要な乗組員、スペイン艦隊を攻撃するのに必要な大砲、貿易に必要な商品を得る場所がある。今回の航海で何を目的とするのかに応じて、必要なものをきっちり取る必要があるだろう。  ディスクは10枚あるのだから、常に全部使い切って準備を入念にしたいところだが、そうもいかない事情がある。通りを1周したプレイヤーから順に自分の船を出港用埠頭に置き、これが航海フェイズ中の手番順となるからだ。航海フェイズ中に引き分け判定が必要になったとき、常にこの手番順に従って解決するので、必要最低限の準備をして先に港を出た方が有利だ。  航海フェイズが始まったら、プレイヤーはさまざまな目的地に任務ディスクを置いていく。このディスクはプリマスの通りに置いたものとは別で、1人4枚持ちで1~4の番号が振られている。これを伏せて置き、どの目的地にどういう順番で向かうかをプロットする。このとき、プリマスの通りで特定の場所にディスクを置いたプレイヤーは、ブラフに使える「幽霊船」ディスクや、他のどのディスクよりも早くアクションできる「ゴールデン・ハインド号」ディスクを使うことができる。  こんなふうに、手番順に任意のディスクを1枚ずつ、任意の目的地に裏向きで置いていく。持っている補給品の数に応じて、どのゾーンにディスクを置けるかが制限される。  全員が全ディスクを置いたら表向け、手番順にディスク1から1枚ずつ解決していく。貿易港を除き、基本的にプレイヤーは町、砦、ガレー船を攻撃して略奪するのだが、各目的地にはスペイン軍カウンターや護衛のフリゲート船カウンターが伏せて置かれている。これらはアクション解決時に表向けられ、その分の軍事力や大砲が砦やガレー船の基本軍事力に加えられる。プレイヤーはその数に等しい乗組員駒か大砲駒を消費しないと、その目的地への攻撃を成功させられないことになる。  このカルタヘナの砦は基本軍事力+2と大砲2門を持っており、さらにスペイン軍カウンターが伏せて置かれている。カウンターに“2”と書かれていれば、この砦は4軍事力と大砲2門を持っていることになり、プレイヤーは攻撃のために乗組員駒4個と大砲駒2個を支払わなければならない。  スペイン軍カウンターとフリゲート船カウンターは、通常はランダムに置かれる。しかし準備フェイズ中に「総督」にディスクを置いたプレイヤーは、航海フェイズ開始時にスペイン軍カウンターを自由に割り振ることができる。同様に「提督」にディスクを置いていれば、フリゲート船カウンターを割り振ることができる。持っている乗組員駒や大砲駒の数と相談し、自分で行きたいところには数値の低いものを、他プレイヤーが行きそうなところには数値の大きいものを割り当てることになるだろう。また、「密告者」にディスクを置いたプレイヤーは、任務ディスクを置いたあとで1カ所のスペイン軍かフリゲート船カウンターを見て、そのあと任務ディスクを移動させることができる。  攻撃に成功した各プレイヤーは、その種類の目的地(町/砦/ガレオン船)への攻撃に成功したことをボード左下のチャートで示しておく。その航海終了時、攻撃に成功した種類数に応じた勝利点を得ることができるので、できるだけ全種類の目的地をまんべんなく攻撃しておきたい……言うまでもなく、なかなか難しいだろうけどw  各目的地で最初に攻撃成功したプレイヤーは、その目的地にある財宝(金/銀/宝石)を得る。これは宝箱に隠しておき、ゲーム終了時に得点となる。さらに、各目的地は航海ごとに2回しか略奪できない。つまり2人のプレイヤーが攻撃を成功させてしまったら、3番手のディスクを置いたプレイヤーは何も得られないのだ。ディスクは1~4の順に処理されるので、各目的地に何番の任務ディスクを置くかは非常に重要だ。たとえば先のカルタヘナの例では、黄色は一番最初にディスク2を置いたにもかかわらず、あとから赤と青がディスク1を置いたため、解決順は3番手になってしまう。赤か青のどちらかが攻撃に失敗しない限り、黄色のディスクは置き損になってしまう。  そして前述の通り、ディスクの番号が同じ場合は手番順で引き分け判定を行うのだから、準備フェイズは早く切り上げる方が有利に決まっている。しかしそれは、当然準備不足になる危険をはらんでいる……うーん悩ましいw  貿易品駒を持って貿易港に行けば、そこでタバコやコーヒーなどの産物を得ることができる。この産物でセットコレクションを作るとゲーム終了時に大量得点が可能になるが、各港で入手できるものは決まっており、当然早い者勝ちなので、ここでも順番が重要になる。  3種1組で16点、2種1組で8点、単独で2点入るので、これだけ持ってるとゲーム終了時に26点得られる。    最後に、航海フェイズを早めに切り上げたプレイヤーはボーナスを得ることができる。置いた任務ディスクを何枚か使わず、プリマス港に戻ったプレイヤーは、最低1回の攻撃に成功していれば2点(1番手)か1点(2番手)を得ることができる。ディスク3や4は完全に死んでいることもあるだろうから、そういうときにはさっさと帰って勝利点を得た方がいいだろう。  全員の任務ディスクを解決したら、攻撃成功した目的地の種類数に応じた得点を得て、その航海は終了。宝箱に隠した財宝と、貿易港で入手した商品タイルを除き、すべてをゲーム開始時の状態に戻す。このゲームは拡大再生産ではないので、入手した乗組員も大砲も補充品も失われる。自分のフリゲート船をガレオン船に改良していたとしても、それさえフリゲート船に戻ってしまうのだw このため、2回目と3回目の航海も、やることはほぼ同じになる。しかし、プリマスの通りにある場所の順番が1回目とは異なってくる。1回目はボードに印刷された場所を使うのだが、2回目と3回目は場所タイルをランダムに配置するからだ。一方通行であることは変わらないので、その配置に応じて効率的な準備方法を考えなければならないだろう。  3回目の航海が終わったら、商品タイルのセットコレクションによる得点と、宝箱に隠した財宝の得点を得て、最多得点プレイヤーの勝ち。  想像していたのとはちょっと違ったゲーム内容に驚いた人も多いだろう。船ゲーとか海賊ゲーといったら、たいていはピックアンドデリバリーか、エリアマジョリティを競うゲームじゃなかろうか。そして昨今の流行り(だと思うが)では、ここに拡大再生産の要素が入ってくるだろう。自分の海賊船を少しずつ強くするとか、建物建てて乗組員やら補充品やらを手に入れられるようになるとか。  しかし、このゲームは全然違う。本質は推理ゲームなのだ。それも真相を当てたら終わりというタイプではなく、他プレイヤーの手の内を読んで、その裏をかくタイプ。だからこそ、ほぼ同じことを3回繰り返すゲームシステムに意味がある。推理に全力投球してもらうため、他のマネジメント要素を極力排除したんだろう。  1回目の航海では、手がかりは「準備フェイズ中に何を得たか」しかない。しかし2回目、3回目には、持っている商品の種類が手がかりになる。宝箱に隠した財宝を覚えていれば、邪魔するべきプレイヤーも見えてくる。もちろん、多少得点効率が悪くなっても、他プレイヤーの妨害をかいくぐって予想もつかない目的地を目指すというのもありだ。任務に成功しない限りは1点にもならないのだから。  この手のゲームは、カードゲームにはそれなりにあるが、ここまで内容物のしっかりしたボードゲームでは珍しいんじゃないか。美麗なボードや精巧なフリゲート船フィギュアを使い、お互いの裏の裏を読み合うゲームをプレイしたい人なら、間違いなく満足できるゲームになるだろう。 BGGの和訳ルール キックスターターのページ

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