ボックスアート
プレイエリア
キックスターター発のゲーム。デザイナーはフィンランドのJukka Höysniemiでこれがデビュー作。パブリッシャーはLudiCreationsで、これが1作品目。はいはいいつものいつものw
タイトルからスチームパンクものかと思ったが、テーマは自動車製造。「オートモービル」のような大規模製造と販売を扱ったものではなく、1台の試作品を完成させることを目指す。といっても、プレイヤーはベンツやディーゼルといった歴史に残る有名人ではなく、夢半ばにひっそり消えていった凡才なので、作る自動車もポンコツ。そのポンコツの中でもいくらかましなものを作って投資家に認めてもらったプレイヤーが勝ちという、何とも世知辛いゲームだw
ゲームシステムはワーカーを置くフェイズとアクション実行フェイズが完全に分かれている「ケイラス」方式のワーカープレイスメントで、非常にシンプル。計画フェイズ中に3枚か4枚(プレイ人数によって変わる)のアクショントークンを1枚ずつ、4カ所あるアクションエリアに置く。アクションの実行順はトークンを置いた順で、各エリアにおけるトークン数には限りがある。まあ難しいところは何もない。
全員がトークンを置ききったら、各エリアを順番に処理していく。まずは「裏通り」。アンダーグラウンドな界隈の住人と秘密裏に接触し、ぎりぎり合法の手段を用いて他プレイヤーのパーツタイルを奪ったり、他のエリアにあるアクショントークンの位置を入れ替えたり、闇市場でパーツを手に入れたりできる……どのへんがぎりぎり合法なのかは謎だw 危ない橋を渡るとなると慎重にならざるを得ないため、ここに置いたトークンは1回休みエリアに移動し、次のラウンド中は使えなくなる。これはちょっと面白い仕掛けだ。
次は「特許局」。ここでは新品のパーツタイルを1枚取ることができる。ラウンド開始時に6枚が表向けられていて、そこから取ることもできるが、欲しいものがなければ山札から引いてもいい。新品パーツは試作品自動車の快適性、長距離走行能力、パワーを向上させるアイコンを持っていることが多い。これらはゲーム終了時に得られる勝利点に直結しているので、当然できるだけたくさん取るのが望ましい。
新品パーツの例。上が長距離走れる蒸気供給機。つまりボイラー。下が快適な車輪。タイルの種別とボーナスは、それぞれ左端と右端のアイコンで示されている。
その次の「廃物置き場」も似たような処理を行うが、ここではタイルを2枚まで得ることができる。ただし手に入るのはジャンクパーツなので、組み込んだ自動車の安定性(後述)が下がりがち。新品パーツの獲得に比べると難点も多いが、倍の速度でパーツが手に入るのはメリットも大きい。中には安定性を下げない掘り出しものパーツもあるので、そういうのが表向けられていたら率先して取りに行ってもいいだろう。もちろん、山札の上にあることに賭けて引いてもいいw
ジャンクパーツの例。上2つは不安定な車輪と電力供給機(つまりバッテリー)。一番下はボーナスもないが不安定アイコンもない、掘り出しもののガソリンエンジン。動力パーツは電力、ガソリン、蒸気の3種類があるが、これはアイコンではなくパーツの色(緑、赤、黄銅)で表されている。
最後に「作業場」。ここでようやく、獲得したタイル(手札になる)を手元に置いて試作品の製造に取りかかることになる。ここに置いたアクショントークン1枚ごとに、プレイヤーは手札のパーツタイルを1枚選び、手元に置いて試作品に追加するか、逆に試作品からいらないパーツを1枚取って捨て札にすることができる。また、すでに置かれているパーツと手札のタイルを何枚でも交換することもできるが、色と種類は一致しなければならない。ジャンクの車輪を快適な車輪に置き換えたりはできるが、ジャンクのバッテリーを長距離走行できるボイラーに置き換えたりはできないってこと。試作品は上下2段にタイルを並べて作るとか、タイルによって上段と下段のどっちに置くかが決まってるとか、細かいルールがあるが、そんなに難しくはないのでここでは割愛。
こんな感じで置いていく。ゲーム終了時には全パーツに車輪が隣接してなきゃならないとか、ギアとエンジンと燃料供給機が最低1つはなきゃダメとか、操縦システムはちょうど1つなきゃダメとか、エンジン1つにつき対応する燃料供給機(モーターにはバッテリー、ガソリンエンジンには燃料タンクといった感じ)が1つ以上なきゃならないとか、いろんな制限がある。
ラウンド終了時、表向きで「特許局」と「廃物置き場」に置かれてたタイルを全部捨て、新たなタイルを補充。補充ができなくなるか、誰かがパーツ12枚以上からなる自動車を完成させた場合、ゲーム終了。この時点で試作品を完成させられなかったプレイヤーは、投資家にお披露目するために無理矢理にでも完成させる必要があるので、不足したパーツや不要なパーツをスクラップタイルで置き換えなきゃならない。ジャンクパーツはかろうじてパーツとして機能するが、スクラップパーツは完全にぶっ壊れてて単なる穴埋め要員なので、つければつけるほど試作品の価値は下がる。
投資家はゲーム開始時に2人選ばれており、1人は快適性、パワー、長距離走行能力アイコンの数に応じて得点をもたらす。もう1人は条件を満たしたプレイヤーにのみ得点をもたらす。一番でかい自動車作ったプレイヤーとか、最も安定してる自動車作ったプレイヤーといった感じ(複数いる場合はその全員)。また、1台の試作品に電力、ガソリン、蒸気で駆動するパーツを混在させても(ちゃんと動くなら)いいのだが、同色のパーツを連続してつなげると、それによる得点も得られる。これらの得点と不安定性による失点を合計して、最多得点プレイヤーの勝ち。
ちょっとルールを読んだだけでは、あまり目新しいところのないゲームといった印象を受ける。特に「廃物置き場」に率先していく理由があまり感じられないかもしれない。だが、たぶん細かいルールがうまく機能しており、実際のプレイでは「行きたくはないけど『廃物置き場』に入ってあのパーツを取るしかない」とか「置きたくないけどこのパーツをここに置くしかない」ってことがしょっちゅう発生するゲームなんだと思われる。試作品製造に関するパーツの配置制限が結構厳しいので、たとえ新品パーツであっても、取ったタイルをただ漫然と置くだけではなかなか完成しないのだ。そしてラウンド終了時にはタイルがばんばん入れ替わるので、ゲーム終了は意外に早い。新品パーツは毎ラウンド6枚が表向けられるが、このタイル、なんと42枚しかない……つまりゲームは7ラウンドで必ず終わるのだw それまでに最低でも車輪2つ、エンジン1つとそれに対応する燃料供給機1つ、ギア1つ、操縦システムちょうど1つを置かないと試作品は完成しない。どんぴしゃでそんなタイルばかり取れることもないだろうし、投資家の勝利条件によってはもっとたくさんタイルを置きたいだろうから、さらに時間は限られる。そしてゲーム終了時に試作品が完成していなければ、足りないパーツや機能してないパーツ(主に燃料が供給されてないエンジン)は全部スクラップパーツになるのだw
たぶん、このゲームの楽しさは「シップヤード」に通じるものがある。勝敗を競うのは大前提だが、「ぼくのかんがえたかっこいいじどうしゃ」が作れればそれいいのだw 3種類のエンジンを載せたスーパーハイブリット車や、車輪が8個ついててパワーアイコンがやたらめったらあるモンスターカーとか、男の子なら想像しただけで脳汁溢れるw そういうのが好きな人専用ゲームと言っても、あながち間違ってはいないだろう。
英語サイトだが、Board Game Arenaというところでお試しオンラインプレイもできるので、遊んでみてから購入を検討してもいいんじゃないかな。
BGGの和訳ルール
キックスターターのページ
(日本時間で2013年5月21日13時まで)