今日もプレイミス

2013/11/18(月)11:15

【ゲーム紹介】遺言:お払い箱(Last Will: Getting Sacked)

和訳(133)

ボックスアート 内容物  多くのボドゲは大なり小なり現実世界を模しているため、たいていは何をするにもお金(またはそれに準ずる基礎資源)が必要だ。まずはお金を得る手段を用意して、得たお金を使ってアクションを実行し、さらにお金や勝利点を得る手段を用意し……とプレイしていくことになる。それをまったく逆にした画期的なゲームが、2011年に発表された「遺言」だ(実際には表現を逆にしただけの拡大再生産なので、さほど画期的でもないがw)。今作はその拡張で、ただでさえなかなか減らない所持金がより減らなくなるハイパーマゾ仕様となっているw デザイナーとパブリッシャーは変わらず、Vladimír Suchý(ルール内ジョークが少なめの、いい方のチェコ人デザイナー)とCzech Games Edition。  拡張として誰でも思いつくのが、追加のイベント、助力者、不動産カード。これらは当然入っており、その大半は基本ゲームにはなかった効果を持っている。と言っても、もちろんすべての効果はアイコンで示されており、ルールブック巻末に一覧が載っているので、一度目を通せばすんなり頭に入るだろう。不動産カードには、愛人が住んでいると傷みやすい建物や、購入時に馬がついてくる農場などがある。  イベントカードでは、新たな種類として指輪アイコンを持つ「結婚」カードが追加された。結婚カードには「婚約指輪」「結婚式」「結婚祝い」「独身お別れパーティー」の4種類があり、プレイすればその分浪費できるのは他のイベントカードと同じだが、種類の違う結婚カードは1アクションで同時にプレイできるのが特徴だ。このため、1アクションで最大4枚(4種類各1枚)のカードをプレイし、11ポンドを浪費することができる。基本ゲームでの初期資金は70ポンドだったので、1/7以上を1アクションで浪費できるというのはなかなかの効果だ。もちろん、アイコンに対応した助力者カードを持っていればさらに浪費することができる。  イベントカードの例。左上に指輪アイコンがある3枚が結婚カード(これ以外に「結婚祝い」カードがある)。左上の「独身お別れパーティー」(欧米の習慣で、新郎と男性の友人がストリップ鑑賞などするらしい。ダメな習慣だな……もちろん新婦側もパーティーするらしく、その内容はやはり下世話なもののようだw)はアイコンを4つ持っているので、多くの助力者の効果を同時に発動させることができる。きちんと準備すれば莫大な額を浪費できるだろう。  新たな計画ボードも目を引く。上の内容物の写真では少し分かりにくいかもしれないが、中央にあるのが新たな計画ボードで、何と計画部分がくりぬかれてて空洞になってる。ゲーム開始時に、ここに計画タイル(写真中央左)を1枚ずつランダムに置いていくのだ(各タイルを置く場所は決まっているので、完全にランダムではないが)。こうしてプレイごとに異なる計画ボードが用意され、違った戦略が必要になる。  最後に職業カード。なんと言っても、これがこの拡張の目玉だ。叔父の遺産を受け継ぐためには、手持ちの現金と不動産をすべて失うだけではなく、職も失わなければならないことが明らかになった。わざとクビになるなんて簡単そうだが、もちろんそうは問屋が卸さない。実はプレイヤーは、生前の叔父に紹介してもらった仕事に就いている。その雇い主は生前の叔父に恩義を感じているため、プレイヤーが少々馬鹿なことをやっても簡単にはクビにしてくれないのだw このため、仕事中に豪遊して遊びほうけているところを計4回(上級カードだと5回)見つからなければならない。  職業カード。医者とか銀行員とか弁護士とか、結構いい職に就いてる。無理に遺産受け継ぐ必要ないだろ……まあ男なのにガヴァネスというのはどうかと思うけどw  各職業カードには、収入を示すバーが4本(上級カードには5本)ある。毎ラウンド開始時に、プレイヤーはすべてのバーに示されている額のお金を得なければならない。通常カードなら7ポンド、上級カードだと何と11ポンドだ。2ポンド3ポンドを使うのにヒイヒイ言わなきゃならないのに、毎ラウンド7ポンド……やってられねーw  各収入バーにはシンボルも描かれており、プレイ中に対応するシンボルを持つカードをプレイすると、そのバーの上に減給トークンを置くことができる。これは遊んでいる現場を雇用主に見られたことを表しており、以降のラウンドではその分だけ収入を減らすことができる。すべての収入バーに減給トークンを置けば晴れてクビになるが、手番中に何種類のカードをプレイしても、減給トークンはラウンドごとに1枚しか置くことができないので、ゲームは最低でも4ラウンド(上級カードを使っていれば5ラウンド)続くことになる。  たとえばこの「ガヴァネス(“女性”家庭教師のことだw)」を持っているプレイヤーは、毎ラウンド開始時に7ポンドを得る。仕事をほっぽり出して農園を購入したり、レストランに行ったり、船遊びをしたり、コックを雇ったりすると怒られて収入が減る。全部実行すればクビだが、それには最低4ラウンドが必要となる。  破産は困難を極めると思われるが、職業カードを使うときには拡張用に用意された遺言状カードもセットで使うことになっており、これによって決まる初期資金は基本ゲームより少なめになっているようだ。まあ70ポンド+毎ラウンド収入とかじゃ、いくら何でも無理ゲー過ぎるからねw  多めの所持金をヨーイドンで減らしにかかる基本ゲームはレースゲーのようでもあり、誰にとっても有用(または不要)なアクション/カードというものがあった。もちろん、それはそれで計画フェイズに手番順とアクション数を秤にかける楽しみがあったが、この拡張の職業カードによって、各プレイヤーに個性が追加され、カードの有用性に多少の揺らぎがもたらされることになった。収入を減らすために必要な4種類のカードが絶対に必要で、それがプレイヤーごとに異なるからね。このため、基本ゲームとはまた違ったプレイングが要求されることになるだろう。  もちろん、ラウンドごとの収入がゲームをより厳しくしているのは言うまでもない。一般的なゲームに置き換えて考えると、所持金がいくらあっても足りないゲームで毎ラウンド借金の利息や設備の維持費を支払うようなものだ。つまり、だいたいワレスゲーを想像してもらえばそのマゾさが分かるんじゃないかなw  たぶん、必ず7ラウンドプレイすることになるだろうから(途中で破産するのは大変そうだ)、平均的なプレイ時間はほんの少し延びるだろう。と言っても、基本ゲームだってさして短時間で終わるゲームではなかったし、気になるほど煩雑化・長時間化はしなさそうだ。「遺言」好きなら必須の拡張だと思うよ。 BGGの和訳ルール: 基本ゲーム お払い箱

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