JR西日本-車両NO
JR 西日本関係
■JR福知山線で脱線事故、107人死亡
4月25日朝、JR福知山線塚口~尼崎間で、通勤・通学客らを乗せた上り快速電車が脱線。運転士を含む107人が死亡、555人が負傷し、JR史上最悪の惨事となった。カーブでの大幅な制限速度オーバーが直接の事故原因。列車自動停止装置(ATS)の不備や、余裕のないダイヤ編成、懲罰的な運転士教育なども背景として指摘された。JR西日本をめぐっては、危機意識に欠ける社員の不祥事も立て続けに発覚。6月19日、同線は55日ぶりに運転を再開したが、「安全最優先」の企業体質構築が重い課題となった。(4月25日撮影)
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<電車脱線>50人死亡、200人以上けが JR福知山線
毎日新聞) - 4月25日16時54分更新
25日午前9時20分ごろ、兵庫県尼崎市潮江4のJR福知山線塚口―尼崎間の第一新横枕踏切(警報機、遮断機付き)手前約100メートルで、宝塚発同志社前行き上り快速電車(7両編成、乗客約580人)の1~4両目が脱線した。このうち、先頭の2両が進行方向左側の線路脇にあるマンションに突っ込み「L」字形に折れ曲がり大破した。別の3両も傾くなどした。
尼崎市消防本部によると、この事故で少なくとも50人が死亡した。また、同県警の調べでは200人以上がけがをし、周辺の救急病院などに搬送された。高見隆二郎運転士(23)が車内に閉じこめられ重体、松下正俊車掌(42)にけがはなかった。
JR西日本などによると、現場は「R300」(半径300メートル)と呼ばれる最も急な右カーブで、制限速度は時速70キロ。5年前の東京・地下鉄日比谷線脱線事故を契機に当時の旧運輸省は、急カーブに脱線防止ガードを設置するよう、指導していたが、現場には設置されていなかった。横転する際の速度は分からないとしている。高見運転士は経験11カ月。松下車掌は15年9カ月のベテランだった。
事故を起こした電車は事故直前に、停車するはずの伊丹駅で約8メートルオーバーラン。その際、通常の停車位置に戻るのに、1分半かかり、現場手前の塚口駅通過時点では、1分の遅れだったという。
県警は遅れを取り戻すためにスピードを上げて運行していたとみて調べている。
JR西日本は、福知山線宝塚―尼崎間の上下線で運行を見合わせている。
現場は、尼崎駅北西約約1キロの住宅街で、尼崎市中央卸売市場の近く。
電車は脱線後、ワンボックス型の乗用車を巻き込んだ可能性があるという。
◆最も古いATS
国交省によると、事故のあった区間に設置された自動列車停止装置(ATS)は、速度オーバーには対応しない最も古い型だったという。現場付近の制限速度は時速70キロだが、事故当時の速度は不明。旧国鉄時代のATSで、赤信号を無理に通過しようとすると列車のブレーキがかかるシステムだった。最新式のATSは、制限時速を超えると運転席の警報が鳴り、自動ブレーキが働く。
◆陸自に派遣要請 兵庫県
兵庫県は午前10時20分、事故対策支援本部(本部長、井戸敏三知事)を設置。同11時4分、自衛隊法に基づき陸上自衛隊第3特科連隊(同県姫路市)に隊員約50人と人命救助のための大型重機などの派遣を要請した。
また、総務省消防庁にも緊急消防援助隊を派遣要請。大阪市消防局の25隊と県内の神戸市、西宮市、芦屋市など消防応援隊40隊が出動している。井戸知事も午前11時半、事故現場に向かった。
◆対策本部を設置 国交省
国土交通省は25日午前、北側一雄国交相を本部長とする事故対策本部を設置、午前10時45分から省内で会合を開いた。情報収集のため近畿鉄道局から職員2人を現地に向かわせた。北側国交相も同日午後、鉄道局長らと現地に入る。
また、同省航空・鉄道事故調査委員会は同日、事故調査官3人を現地に派遣した。
◆警察庁も対策本部
警察庁は25日正午、瀬川勝久警備局長を本部長とする対策本部を設置した。大阪府警は午前11時までに広域緊急援助隊員41人を現場に派遣。兵庫県警は約700人態勢で事故の対応にあたっている。
◆非常に申し訳ない
JR西日本の垣内剛社長の話 快速電車が脱線し多くのお客様が負傷されています。私をトップとする対策本部を設置し、救済にあたります。警察情報では亡くなった人もおり、鉄道事業者として非常に申し訳ないと思っております。
◆けが人収容病院
兵庫県尼崎市消防局などによると、負傷者の搬送先は次の通り(25日午前11時40分現在)。
県立塚口病院50人▽尼崎中央病院40人▽関西労災病院12人▽兵庫医大病院89人▽安藤病院16人▽近藤病院2人▽県立尼崎病院2人▽県立西宮病院10人――の8病院となっている。
神戸市消防局によると、事故現場からヘリで神戸大医学部付属病院に救急搬送された1人はすでに心肺停止状態だった。また、関西労災病院に運ばれた12人のうちの1人の死亡が確認されたという。
(毎日新聞) - 4月25日16時54分更新
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<尼崎脱線事故>2両目で奇跡的に生き残った乗客の証言
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兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故では、死者107人のうち約70人が、マンション側壁に衝突し「く」の字形にひしゃげた「2両目」に集中した。毎日新聞は、2両目で事故に遭って奇跡的に生き残った乗客に事故当時の詳しい状況を聴いた。助かったのは、大半が脱線後の車両の傾きと反対側の右側にいた人で、つり革を持っていたり、折り重なった人の上方に位置するなど、衝撃のショックや窒息状態を緩和する要因が重なったケースだったことが浮き彫りになった。2両目は定員163人。58人が座れる座席は埋まり、ほぼ同数の立ち客がいたという。
■事故直前
乗客が“異変”を感じたのは伊丹駅でのオーバランから。発車後、さらに不安が増す。右側に座っていた西宮市の会社員、西田貴善さん(26)は「ウイーンというものすごいモーター音がして、ジェットコースターのように加速した」。右側にいた宝塚市の大学生、加藤英樹さん(20)は「荷物を足元に置いて、両手でつり革を持たないと耐えられなかった」と証言する。
■地獄絵
その直後、大きな衝撃が乗客を襲う。左側で立っていた伊丹市の大学生、真島光徳さん(20)は「ギィーというブレーキ音と同時に車両が横倒しに。目の前でガラスが粉々に砕け散った」。左側に座っていた西宮市の大学生、福島襟香さん(18)は「(眠っていたが)ガターンという強い衝撃で目が覚めた。進行方向とは逆向きに強い力で倒された」と話す。
脱線後、2両目は先頭車両に引きずられるように左側に傾きながらマンション側壁に激突。福島さんは「3層くらい山積みになって人が覆いかぶさってきた。人と人の間に頭が抜けてかろうじて息が出来た。周囲に『助けてー』と叫び続けた女性や頭から血を流してぐったりした中年男性がいた」。真島さんは「つり革を持っていた左手を上げたまま、多くの人やかばんに挟まれて身動きが出来なかった」と車内の様子を証言した。
■救助
一方、折れ曲がった中央付近は衝撃で車両に大きな穴が開いた。右側に座っていた西宮市の会社員、小椋聡さん(35)は「宙を飛ぶようにはじき出された後、逆さまになってぶら下がる形になった。近くの住民が車両とマンション廊下の間の鉄板をはずしてくれたおかげで脱出できた」。同じく右側にいた西田さんは「気がつくと、人の上にあおむけ状態だった。無我夢中ではい出した」。
乗客や付近の住民は助け合い、相互に励まし合った。軽傷で済んだ加藤さんは「自らはい出した後、電車シートを担架代わりに救助にあたった」。右側にいた三田市の会社員、中田義樹さん(42)は「閉じこめられた時、何度も意識が遠のきそうになったが、ピアスの若者に『おっちゃんと一緒に死ぬのだけはご免や』と冗談交じりに励まされた」と話した。
■教訓
犠牲者を検視した監察医は、大半が頭部や首の骨折、もしくは内臓(特に心臓)破裂で即死と確認。監察医は「衝突から命を守るためには、後ろの方の車両に乗り、体を確保する手すりやつり革を持つこと。座席はロングシートより対面シートの方が衝突の衝撃が緩和される可能性が高い」と指摘した。
(毎日新聞) - 5月1日22時36分更新
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<尼崎脱線事故>目撃者5人証言 衝突までの「異変の瞬間」
見慣れたはずの電車が異常なスピードで目の前を駆け抜け、脱線・転覆、マンションに激突した。兵庫県尼崎市で4月25日に起きたJR福知山線脱線事故。「車輪が30センチ浮き」「電車の裏側が見え」「スーッとマンションに突っ込んだ」……。近所の主婦や工場で働く人たちは、事故直前から衝突までの「異変の瞬間」をそれぞれの位置で目撃していた。そして、誰もが白い土煙の舞う現場へと救助に駆けつけた。目撃者5人の証言を重ね合わせ、未曽有の脱線事故にいたる直前の「数秒間」を再現する。【大場弘行、八田浩輔】
《証言1 現場北約240メートル、福知山線をまたぐ陸橋》
「えらい飛ばしとるな」。自転車を押して陸橋を渡っていた鉄工所経営、挟間(はざま)美喜雄さん(59)は、いつもと違う電車にふと目をとめた。電車がごう音を立てながら足元を通り抜けていった。
《証言2 北西約120メートル、線路西側の路上》
金属加工場の従業員、谷本英樹さん(36)は、工場前の道路から50メートル先を走る電車を見た。遠目から見ても、明らかに電車の窓が流れるスピードが速かった。「事故るんやないか」。不安が走った。
《証言3 北約90メートル、線路東側の工場前》
線路側を見ながら知人と携帯電話で話していた鉄工所経営、灰山季久雄さん(65)は、わが目を疑った。電車が「ジェット機の逆噴射のようなごう音」をたてながら通り過ぎた。そう思った途端、「ドーン」という衝突音が響いた。3年前にできたマンションの方で土煙が上がり、目の前に最後尾の7両目が止まっていた。
《証言4 北約90メートル、線路西の側道》
線路をはさんで灰山さんとちょうど反対側にいた。自転車に乗っていた男性会社員(63)は、電車に追い抜かれる際、不思議に思った。「いつもの『ゴーッ』という走行音が、フッと軽い音になった」。横を向くと、「先頭車両が斜めに傾き、内側の車輪が30センチほど浮いていた。そのまま『スーッ』とマンションに突っ込んだ」。3両目の車両が横向きになった2両目に激突。ごう音とともにガラスの破片がバラバラと飛んできた。立ち木に身を隠した。足が震えて止まらなかった。「阪神大震災で自宅が全壊したが、今回の方が怖かった」
《証言5 南西約80メートル、踏切》
踏切で電車の通過を待っていた40代の主婦は、金属がこすれるような音がしたので、何気なく電車の方を見ると、1、2両目の内側の車輪が浮いていた。いつものガタンゴトンという音もせず、「電車の裏側が見えたと思ったら、浮いて滑り込むような感じでマンションに突っ込んでいった」。鉄が焼けるにおいが辺りいっぱいに立ちこめた。すごい風と煙でよろけて転びそうになった。うめき声、叫び声が聞こえたので、遮断機をくぐって現場に向かった。
(毎日新聞) - 5月9日0時37分更新
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車両
事故にあったのは、(進行方向側から)Z16編成(クハ207-17+モハ207-31+モハ206-17+クハ206-129の4両編成)+S18編成(クモハ207-1033+サハ206-1019+クハ206-1033の3両編成、途中の京田辺駅で切離す予定だった)で、このうちZ16編成全車とS18編成の先頭車両の5両が脱線、Z16編成の先頭車がマンション1階の立体駐車場に横転した状態で突っ込み、前から2両目が横転した状態でマンション1階側壁に衝突、それぞれ大破した。ほかの車両も部分的な損傷を受けている。
運転士(23)を含む106人が死亡し、JR史上最悪の事故となっている。事故についてはJR福知山線脱線事故も参照のこと。