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テーマ:読書(9944)
カテゴリ:読書
文庫本にして800ページを超える大著、町田康の「告白」を読まずして本好きは名乗れない。 私はこの本の存在を何かしらのメディアで知り、読みたいと常々思っていたのだが無意識のうちに手に取るのを先延ばしにしていた。しかしある日、久しぶりに訪れた大型書店に堂々たる貫禄で鎮座していたので即購入した。 手に取るとその厚みに驚く。普通の文庫本の2,3倍の厚みがあり、「俺は果たして諦めず読み切れるんやろうか?」という不安が頭をよぎる。 それは大学4回生の冬休み。「人生の夏休み」と揶揄されるような大学生活のなかでも、まったくやる事がない最も暇な時間が私に訪れた。 ついに読む時が来たか、と実家に帰省する新幹線のなかで「告白」を読み始めた。 取っつきにくい見た目とは裏腹に、文章は軽快なリズムで読みやすく、読み始めたらページを繰る手が止まらなくなる。 しかし内容は重く暗いため、時々顔をあげて心を落ち着かせなければ、大きな感情の波に自分がさらわれてしまう。 未読の方のために簡単にあらすじを紹介しよう。 とある村の内気な少年であった熊太郎が、ある日村のはずれで人を殺めてしまい、それが誰にもばれないようにもっと内向的になり、さらには人生を悲観して極道となる。百姓仕事にいそしむ家族や友人からは遠巻きにされ、権力者たちに博打でだまされ恋路も邪魔をされ自暴自棄になった熊太郎はついに大量殺人を犯してしまう。実際にある「河内十人斬り」をテーマにした大長編小説である。 このちょっとしたあらすじをよんだだけでもタイトルの「告白」の意味に重みがます。 そして物語を読み終えれば、熊太郎のみじめさ、純朴さに共感し、自分にも似たような経験があったと振り返ることになるだろう。 これまでの短い人生のなかでいまだに「告白」できていないこと。墓場まで持っていくと決めた恥ずかしいこと・秘密。 それらすべてを思い出し、熊太郎のように非行したい気分に駆られる。枕を口元で抑え力の限り叫ぶ。隣人からの壁ドンが聞こえる。それでも湧き出てくる自己嫌悪。それでもこれらを抱えて生きていかねばならない。人生の難しさを改めて実感させてくれる。 何回でも読み直したい現代文学の傑作がここにある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2026.04.09 08:04:08
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