ゴールドマン・サックスに不都合な電子メールが明らかに
ゴールドマン・サックスにとって都合の悪い事実が公表された。ヘッジファンドを動かすポールソン社と値下がりが予想された抵当関連商品を作り出し、正確な情報を示さずに販売したと批判されている同社だが、それだけでなく、値下がりを予想して空売りしていたというのである。サブプライム・ローン絡みの商品相場が実際に暴落したことで、ゴールドマン・サックスが儲けていたという。要するにタチの悪い「呑み行為」である。 アメリカのカジノ経済はジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した段階で破綻状態になっていた。その象徴的な出来事がエンロンの破産なのだが、その年の9月に航空機による突入攻撃があり、「戦争」という麻薬で人々は経済破綻をしばらくの間、忘れていた。 イラク攻撃は石油供給への不安を引き起こしたが、これをチャンスだと考えたのが投機資金で、石油相場は暴騰している。もっとも、永遠に上がり続ける相場はない。資金の流入が細れば相場は天井を打って反転するのが道理である。 規制緩和と民営化が叫ばれたアメリカでは、労働者に適切な対価を支払わないシステムが広がり、その代わり庶民に借金させて不動産を買わせるという仕組みが作られていた。不動産相場が上昇し続ければ担保価値が膨らみ、購買力が増すという一種の「マルチ商法」なのだが、これがアメリカの経済政策だったから驚く。 上がり続ける相場はありえない。不動産相場も同じことで、必ず下がる。下がれば借金で不動産を購入した庶民は破綻してしまうわけで、サブプライム・ローンも崩壊する。その崩壊が始まっていることをゴールドマン・サックスもわかっていたはず。だからこそ空売りしたわけだ。 相場が天井を打って値下がりが見通されるとき、確実に儲ける方法がある。自分で暴落の引き金を引くのだ。事前に周囲が気づいていなければ、それだけ儲けは大きくなる。 こうした手法は日本でも珍しくはなかった。大手企業が倒産する前、メイン・バンクが保有していた株券が市場に出てきたことがあると、某相場師から聞いたことがある。証券会社はその会社を「買い」だと宣伝し、値上がりするという噂を流していたのだが、その相場師は株券を見た瞬間に空売りし、大儲けしたという。1980年代になると、さすがに銀行は現物を売ることはなくなり、空売りしていた。 どこまでSEC(証券取引委員会)や議会がゴールドマン・サックスなど金融機関の強欲な「ビジネス」にメスを入れるのかは不明だが、マーケットは不安だろう。徹底的に調べ上げたなら、金融システムどころか、資本主義経済が崩壊するかもしれない。それほど、問題の根は深い。