《櫻井ジャーナル》

2010/12/27(月)17:55

アメリカの好戦派が1990年代から描く東アジア破壊計画に乗る日本の運命

 案の定と言うべきなのか、マスコミや出版の世界で中国を敵視する報道や著作が目につくようになった。経済成長を続け、教育面でも技術面でも賃金面でも中国に追い抜かれつつあるのが現在の日本。フラストレーションを感じている日本人は増えているだろう。そうした人々に「敵意」と「差別意識」を提供しているのかもしれないが、その背景にはアメリカの好戦派が計画してきた戦略が存在する。ソ連の消滅を受け、そのターゲットを中国に切り替え、東アジアの軍事的な緊張を高めようとしているのである。  「PNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)」というネオコン(親イスラエル派)の組織は、2000年に「アメリカ国防の再構築」というレポートを発表した。21世紀はアメリカが「唯一の超大国」として君臨するという前提で、潜在的なライバルの出現を阻止するという方針を示している。カギを握る地域としてヨーロッパ、中東、そして東アジアを挙げているが、中でも東アジアを重視、「中国の脅威」を強調している。中国を潜在的なライバルと考えているわけだ。  「唯一の超大国」としての地位を永続させるため、アメリカは十分な軍事力を保持する必要があると主張する。軍事力で世界を制圧しつづけるという考えのようで、そうした方針の下で1992年に「DPG(国防計画指針)」が作成された。ディック・チェイニーが国防長官の時代だ。作成に携わったのはI・ルイス・リビー、ポール・ウォルフォウィッツ、ザルマイ・カリルザードというネオコンのグループである。  DPGの内容を1992年3月8日付けのニューヨーク・タイムズ紙が報道すると、大きな問題になった。(日本は別だが)このDPGでもライバルの出現を阻止することが目的になっていて、西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、西南アジア(中東)が重要地域として挙げられている。このDPGは内容が外部に漏れて問題になったため、ソフトなものに書き改めたのものの、考え方が消えたわけではなかった。その延長線上にPNACのレポートもある。  一連の好戦的戦略で中心的な役割を果たしたのがアンドリュー・マーシャル。1949年にシカゴ大学を卒業して国防総省系のシンクタンクRandへ入った。この時から研究テーマは「核戦争」だったという。  1973年にRandの先輩だったジェームズ・シュレジンジャーが国防長官に就任、同省の内部にONA(純評価局)が創設される。マーシャルはシュレジンジャーに引き抜かれる形でONAの初代室長になった。ソ連が消滅して以来、マーシャルは中国を敵視する主張を続けている。  勿論、アメリカ軍の中にはマーシャルと違う見方をする人も少なくなかった。その一例が1997年にレイモンド・フィンチ少佐が「ミリタリー・レビュー」に発表した「将来の戦争の様相」に示されている。正規軍と正規軍が限られた戦場で戦う時代は過ぎ去り、ソマリアやチェチェンでの戦いのように、民間人と区別のつかないゲリラと地球規模で戦う時代に入ったという考えである。つまり、正規軍を想定したミサイル防衛などはナンセンスということだ。実際、イラクやアフガニスタンでもそうしたゲリラ戦が展開され、マーシャルが考えた「高額兵器」での戦争は民間人の犠牲者を増やし、反米感情を高めるだけになっている。  庶民は中国を「取るに足らない」と笑うことで劣等感を解消し、一部の好戦派は「満州国再興」を夢見、大企業は戦争ビジネスで儲けようと算盤をはじいているのかもしれないが、アメリカの好戦派は東アジアの台頭を抑えようとしている。つまり、東アジアが戦乱で廃墟と化すことも、アメリカが衰退することも気にしていない。また、占領地で略奪して儲けようとしている可能性もあるが、次も同じように儲かるとは言えない。

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