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ソマリアの飢饉が問題になっている。干魃もさることながら、内戦による国土の荒廃が大きな原因になっていることは間違いないだろう。
内戦の背景には欧米の利権が深く関係している。最近、日本もソマリアの隣国、ジブチに自衛隊の基地を建設して隊員を常駐させ始めたが、このジブチはソマリア支配の拠点であり、日本もソマリア問題に手を突っ込んだということを意味している。 欧米、特にアメリカやイギリスがソマリアを重要視するのは国が位置している場所に起因している。インド洋から紅海を経てスエズ運河を抜け、地中海へ入るための入り口に面しているからだ。 このルートが封鎖されると船は南アフリカの喜望峰を回らなければならなくなり、物資の輸送に大きな影響が出てくる。「アフリカの角」と呼ばれるように、その突き出た形もソマリアの軍事的な重要度を高めた一因だろう。 言うまでもなく、このスエズ運河の建設を着想したのはフランスの外交官だったフェルディナンド・ド・レセップス。1859年に着工、1869年に完成している。 当初はフランスとエジプトが出資するスエズ海洋運河会社が経営していたが、1875年にイギリスがエジプトから同社株のうち44%を買い取って会社を支配、1882年にはイギリス軍が運河地帯を占領している。スエズ運河社はイギリスの世界戦略を実現する役割を負っていたと見るべきだろう。 現在、中東/北アフリカにおいて大きな影響力も持っているイスラム同胞団の創設にもスエズ運河社は深く関わっている。1928年、同胞団が創設される際に資金を出しているのである。 この団体を組織したハッサン・アル・バンナの娘と結婚したサイド・ラマダンはイギリスやアメリカの情報機関に協力してたとも言われているが、この人物は第2次世界大戦が終わった直後、ハマスのルーツとも言える組織を作っている。 つまり、ヤシル・アラファトが健在だった当時のPLO(パレスチナ解放機構)を揺さぶるため、米英やイスラエルがハマスにつながる団体を支援していたのは必然だったと言えるだろう。 また、同胞団は1954年、ガマール・アブデル・ナセルの暗殺を試みている。ナセルのようなナショナリスト、あるいはコミュニストを壊滅させようと必死だった米英両国の思惑に合致した行動だったと言える。 同胞団は組織が巨大化するにつれ、さまざまな考え方の人間が参加するようになっているという側面もあるが、歴史を振り返るならば、少なくとも反欧米団体と単純に分類すべきではない。 ホスニ・ムバラクを大統領の座から引きずり下ろしたエジプトの民主化運動でもイスラム同胞団の影がチラチラするが、こうした状況をアメリカが嫌がっているとは言えない。この組織は少なくとも一時期、米英の別働隊として動いていたことがあるのだ。 パレスチナ問題でも言えることだが、米英をはじめとする「先進国」が最も恐れているのは「名もなき民衆」の覚醒と蜂起であり、そうした動きの芽が出てきたなら、速やかに摘んでしまおうとするだろう。そのためにも監視システムの強化は急務、ということだ。 監視/治安システムのほか、軍事力、食糧、エネルギーはアメリカの支配層にとって世界を支配し、富を吸い上げるための重要な柱になっている。武力は破壊と殺戮のためにあるわけだが、食糧やエネルギーも一種の暴力装置として機能している。兵糧攻めは最も残虐な戦術のひとつであり、エネルギーを断たれれば近代社会は成り立たない。 要するに、食糧を国外に依存し、石油にしろ原子力にしろ、エネルギーをアメリカに支配されている日本はきわめて危うい状態の中にいると言える。 燃料の供給源が限られ、アメリカからの制約が多い原子力の場合、原発自体の危険性を度外視しても、国の安全保障を考えると選択すべきではない。 また、原子力も石油もアメリカの巨大資本が支配しているわけで、どちらに転んでも彼らにとって本質的な問題ではない。逆に、だからこそ、アメリカの支配層は日本が自然エネルギーへシフトすることを嫌うはずだ。 福島第一原発の事故で北日本の農業は壊滅的なダメージを受けた。放射能汚染に対する対策を講じず、「安全デマ」を流すだけの政府の信用は失墜、その影響は国産作物への不信へとつながっている。つまり、食糧支配という観点から見ると、こうした日本政府の政策はアメリカの利益に合致しているわけだ。 本ブログでは何度か書いているので今回は深入りしないが、ソマリアの状況を悪化させた張本人はアメリカである。そのアメリカ次第では、日本がソマリアのようになっても不思議ではない。そんな国と日本は「同盟」を組んでいるのである。 日本の「名もなき民衆」が覚醒したならば、アメリカは食糧やエネルギーを「棍棒」として利用するだろう。「そのとき」のためにも食糧やエネルギーにおけるアメリカへの依存度は少しずつでも小さくし、イスラム同胞団のような存在にも気をつける必要がある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.07.27 17:45:29
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