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《櫻井ジャーナル》

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2014.05.18
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 小学館が発行している週刊ビッグコミックスピリッツ誌に「美味しんぼ」という漫画が連載されてきた。その中で東電福島第一原発の事故による影響が取り上げられたのだが、その内容が気に入らないとして環境省、福島県、福島市、双葉町、大阪府、大阪市などが抗議、福島大学も教職員を威圧するような「見解」を出した。それに対し、小学館は「編集部の見解」を掲載、この作品は次号から休載するのだという。

 伝えられているところによると、5月1日に編集部が12日発売号に掲載される「美味しんぼ」のゲラを環境省へメールで送り、環境省は7日深夜に回答したという。鼻血に関する見解を質問するだけでなく、作品の全ページをメールに添付したという。「検閲」を求めたと言われても仕方がない。

 その7日に双葉町が小学館へ抗議文を送り、9日には石原伸晃環境相が記者会見で「風評被害を呼ぶことがあれば、あってはならないこと」と述べ、同じ日に福島県が「容認できない」と出版社に抗議し、県のホームページに掲載、福島県の佐藤雄平知事は13日の記者会見で「全体の印象として風評を助長する内容になっており、誠に残念で極めて遺憾だ」と発言、福島市の小林香市長は作中に登場する福島大学准教授の発言を「全く理解に苦しむ」と批判、福島大学ではその准教授の発言に関し、「大学人の立場をよく理解して発言するよう教職員に注意喚起する」という見解を出している。そして「美味しんぼ」は「休載」されることになった。

 鼻血がよく出る、あるいは口内炎が同時にいくつもできるといった話は事故後、間もない頃から言われていた。アメリカの原子力技術者、アーニー・ガンダーセンも事故から3カ月ほどした段階でこの問題に触れ、鼻血や下痢などの症状が出ているという報道を気にしている。(PDF

 通常、放射線はガンマー線を測定しているのだが、アルファ線とベータ線という放射性線もあり、それらを出す物質は「ホット・パーティクル」と呼ばれている。これらが体内に取り込まれると深刻な影響を及ぼす。福島第一原発から放出されたホット・パーティクルは東京でも発見されていたが、最近では北アメリカ、そしてヨーロッパでも見つかっているようだ。

 放射線の影響は疫学的に調べるしかないのだが、ガンダーセンは事故の翌年に出された著作の中で次ぎのように書いている:

 その影響は「甲状腺がんだけでなく、まずは甲状腺の異常が現れるでしょう。ホルモンの分泌が多すぎたり少なすぎたりするのです。最初の2〜3年、主に若い人に起きると考えられます。次に肺がんが、最低でも20〜30パーセント増えるだろうと思います。5年後には心臓疾患で、やはり若ければ若いほど細胞が速く分裂しているため被害を受けやすいはずです。その後は各臓器のがんです。チェルノブイリでは膀胱がんの増加が指摘されていますが、すべての臓器に可能性があります。さらに、血液のがんが考えられます。」(アーニー・ガンダーセン著、岡崎玲子訳『福島第一原発----真相と展望』集英社新書、2012年)

 事故直後、原発の風下にいて放射性物質を浴びたアメリカ海軍の空母ロナルド・レーガンに乗船していた水兵たちが東京電力を相手に集団訴訟を起こしている。東電は事故で破壊された原子炉から放出された放射性物質に関する正しい情報をアメリカ政府に提供せず、結果として乗組員が深刻な被曝を強いられたとしている。元乗組員によると、被曝後に甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ている。

 訴訟を担当しているポール・ガーナー弁護士が昨年1月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に語ったところによると、原告のひとりになっている女性乗組員の父親が娘の体調が悪いと言って訪ねてきたのが始まりだという。

 調査していくと、ほかの乗組員の中にも具合の悪い人がいることが分かり、腸からの出血や鼻血、甲状腺に問題が生じた人も複数いて、中には胆嚢の摘出手術をした女性もいたという。その全員が20代の若者で、いずれも以前は健康だった。

 鼻血はチェルノブイリでも報告されている症状で、福島の事故から5カ月後の段階で千葉県にある船橋二和病院の柳沢裕子医師は鼻血と激しい下痢、インフルエンザのような症状が子どもに増えているとアル・ジャジーラ紙に語っている。そのほかの地域でも似た現象が報告されている。福島県で大きな問題にならない理由は、「美味しんぼ」の問題で福島大学がとった行動が暗示している。

 漫画にも登場する双葉町の井戸川克隆元町長は鼻血の話をしているだけではない。町長時代に心臓発作で死んだ多くの人を知っていると外国メディアの取材で語っているのだ。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしている。元町長の話以外にも、相当数の作業員が死亡したという未確認情報はある。

 要するに、「美味しんぼ」の作者は慎重に表現している。原発が事故を起こした後も小学館の週刊誌は政府や電力会社の側につき、「安全神話」の宣伝を続けていた。つまり、会社の経営者や編集幹部は原発推進派だということだ。今回の一件は「出来レース」だったのではないか、という疑問が消えない。






最終更新日  2014.05.19 13:33:13



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