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《櫻井ジャーナル》

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2014.10.30
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 スウェーデンのマルゴット・バルストロム外相は10月30日、同国政府はパレスチナを国家として承認する決定を下したとする声明を出した。9月14日の総選挙で第1党になった社会民主労働党のステファン・ロベーン党首を議会が首相に就任することを承認したのが10月2日。その段階でロベーンはパレスチナを国家として承認する方針だと語っていたので、予告通りということになるが、イスラエル政府は強く反発していた。こうしたシオニストの圧力を退けたことになる。

 予告から決定までの期間にスウェーデンでは興味深いことが起こっている。ひとつは潜水艦騒動。外国が水中活動をしている疑いがあるとして、スウェーデン軍はバルト海で大規模な作戦を始めたのだ。1982年10月1日に始まった出来事のデジャビュ。

 このときもスウェーデン領海へ国籍不明の潜水艦が侵入したとされた。結局、潜水艦は捕獲されなかったのだが、明確な根拠が示されることなくソ連の潜水艦であるかのように宣伝され、スウェーデンの反ソ連感情は劇的に高まった。

 しかし、ノルウェーの情報将校は問題の潜水艦はソ連のものではないと断言、西側の潜水艦だとし、ソ連のウィスキー型潜水艦だとする説も明確に否定し、アメリカやスウェーデンの当局者と真っ向から対立している。(Ola Tunander, “The Secret War Against Sweden”, 2004)

 アメリカとは一線を画し、自主独立の道を歩もうとしていたオルオフ・パルメが首相に返り咲く1週間前に幕が開いた「捕り物劇」はパルメの手足を縛ることになるが、それでもニカラグアの革命政権を明確に支持するなど、アメリカにとって好ましくない行動、つまり独立国として自主的な政策を打ち出していく。そのパルメは1986年、妻と映画を見終わって家に向かう途中、銃撃され、死亡してしまった。

 パルメが暗殺された以降、スウェーデンのエリートは自主独立の道を放棄、アメリカの属国になるという道を選んだ。NATOへの参加も目論んでいるが、すでに軍や情報機関はアメリカの強い影響下に入っている。そうしたアメリカとスウェーデンとの関係を象徴するような人物が2011年からスウェーデン駐在アメリカ大使を務めてきたマーク・ブレジンスキー。スウェーデンをNATOへ引き込もうとしていた。

 ブレジンスキーが大使に就任する前年、内部告発の支援を行っているWikiLeaksは米軍のアパッチ・ヘリコプターが非武装の人間、十数名を殺害する場面を撮影した映像を公開したのに続き、さまざまな資料を公表、バラク・オバマ政府は激怒する。そうした中、同グループの象徴的な存在であるジュリアン・アッサンジをスウェーデン政府は犯罪容疑者として逮捕状を出している。

 アメリカの場合、大使が秘密工作の指揮をとることがある。アッサンジの事件とブレジンスキーの大使就任に関係があっても不思議ではない。

 ところで、マークの父親、ズビグネフ・ブレジンスキーは1990年代にロシアや中国を封じ込める戦略を打ち出した人物。デイビッド・ロックフェラーと親密な関係にあり、ジミー・カーターを大統領に選んだことでも知られている。コロンビア大学でバラク・オバマを教育したという噂も流れている。

 そのマーク・ブレジンスキーに替わり、アジタ・ラジを新しいスウェーデン駐在大使にオバマ大統領は10月23日に指名した。指名された女性はイラン系アメリカ人で、JPモルガン証券の元幹部。オバマの選挙キャンペーンに資金を提供したことでも知られている。資金調達に協力した人を大使に据えるということは珍しくないが、今回のケースではブレジンスキーとの交代劇。スウェーデンでの工作は一段落したということかもしれない。

 前にも書いたことだが、現在、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟は大きく揺らいでいる。ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃した際、その攻撃を批判したジェームズ・ベーカー元国務長官とリー・ハミルトン元下院外交委員長を中心とするグループの存在感がここにきて増しているのだ。

 このグループはアメリカ軍の段階的撤退、シリアおよびイランとの対話の開始、パレスチナ問題の考慮などを提唱していた。現政権ではオバマ大統領のほか、レオン・パネッタ前国防長官、チャック・ヘーゲル国防長官がこのグループの指揮下にあるという。

 ズビグネフ・ブレジンスキーはウクライナの制圧がロシアを屈服させ、世界を制覇する鍵を握っていると考え、ネオコンはロシア人を消滅させようとしている。つまり両者の目標に大きな違いはなくい。ただ、ロシアとの全面核戦争をどう考えるかという点で違いがあるだろう。中東/北アフリカにおけるプランの違いはさらに大きい。

 2012年11月にデイビッド・ペトレイアスCIA長官が、翌年2月にヒラリー・クリントン国務長官がそれぞれ辞任した後、ホワイトハウスでの勢力図に変化が現れた。つまりネオコンの影響力が低下、こうした動きに連動する形で登場したのがIS(イスラム国、、ISIS、ISIL、IEILなどとも表記)。その背後にいるのがネオコン、サウジアラビア、そしてイスラエル。

 そうした流れの中、スウェーデンでは潜水艦騒動で大きな効果は現れず、同国駐在の米国大使が交代、そして新政権のパレスチナ国家の承認があった。アメリカの支配層は「世界制覇」の野望を捨てていないだろうが、その目標を実現するための道筋を変えようとしているのかもしれない。






最終更新日  2014.10.31 13:13:32



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