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《櫻井ジャーナル》

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2014.11.06
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 イラクやシリアで破壊と殺戮を繰り返し、残虐さを誇示しているIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)はイスラエルについてほとんど語らず、パレスチナ人の苦境を救おうとはしていない。イスラエルもISを無視している。

 駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンは退任前の2013年9月、イスラエルはシリアの体制転覆が希望だと明言、バシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っているが、明確な発言としてはそれくらいだろう。

 現在、ISはシリアからイラクにかけての地域で戦っているが、元々はイラクを活動の舞台にし、ISI(イラクのイスラム国)と呼ばれていた。この集団は2006年1月にAQI(イラクのアル・カイダ)が中心になって組織されている。AQIは2003年にアメリカがイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した後に入り込んできたグループだ。つまり、ISはアル・カイダ系であり、イスラエル大使はアサド体制を倒すためなら手を組むと言っていたグループだ。

 前にも書いたことだが、ジョー・バイデン米副大統領は10月2日にハーバード大学で行われた講演で、IS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)という「問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦だ」と述べた。後に謝罪したというが、この発言に間違いはない。ただ、ネオコンやイスラエルが抜けていることが問題なだけ。

 ネオコンはアメリカではなくイスラエルを第一に考えるグループだが、より正確に言うとウラジミール・ジャボチンスキー派。ジャボチンスキーは軍事強硬派で、リクードの祖とも言われている。第1次世界大戦でイギリス軍に参加、イギリスの情報機関MI6や破壊工作機関SOEの協力を受け、シオニストの武装集団ハガナを創設、この集団が後にイスラエル軍の中核になった。「テロ組織」と言われるイルグンやロハメイ・ヘルート・イスラエル(レヒ。スターン・ギャングとも呼ばれる)はハガナから派生した。

 バイデンの口から「同盟国」を批判する発言が飛び出した理由は、自分たちがISを作り出したわけでないと認識しているからだろう。副大統領もバラク・オバマ大統領、レオン・パネッタ前国防長官、チャック・ヘーゲル国防長官と同じようにジェームズ・ベーカー元国務長官とリー・ハミルトン元下院外交委員長を中心とするグループに所属しているということだ。

 ベーカーは共和党のロナルド・レーガン政権で国務長官を務め、ネオコンと対立していた。1970年代までは民主党がイスラエルに近いと言われていたが、ジェラルド・フォード政権で台頭したネオコンが1980年代に共和党を浸食、ベーカーたちと対立することになったわけだ。2001年に大統領となったジョージ・W・ブッシュはネオコンに担がれていた。共和党と民主党は表のライバル、裏では政党の枠を超えたネオコンと非ネオコンの対立がある。

 ネオコンはイスラエルのため、サウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国の資金を使い、アメリカの武力を利用して戦っているように見える。サウジアラビアやカタールはISに資金や武器を提供、アメリカ/NATOは戦闘員を訓練し、恐らく情報も提供している。それに対し、アメリカはイラク政府への武器供給を渋り、ISに関する情報も渡していないと言われている。ISが勢力を伸ばしているのではなく、アメリカがISの勢力拡大を支援していると言うべき状況だ。

 こうした状況を理解する上で重要な情報がニューヨーカー誌の2007年3月5日号に掲載されている。本ブログでは何度も紹介しているシーモア・ハーシュのレポートで、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始したと指摘している。この構図は1970年代の終盤、アメリカがアフガニスタンで秘密工作を始めた時点で作り上げられたが、今でも続いている。

 長い間、アル・カイダを動かしていた人物はサウジアラビア王室に所属するのバンダル・ビン・スルタン。王立空軍大学を卒業、アメリカのマクスウェル空軍基地で訓練を受け、ジョンズ・ホプキンス大学でも学んでいる。1983年から2005年までは駐米大使、12年から今年4月までは総合情報庁の長官を務めた。現在は国家安全保障問題担当の顧問。

 総合情報庁長官時代の昨年7月末、彼はロシアを極秘訪問、ウラジミール・プーチン大統領らに対し、シリアからロシアが手を引けば、ソチで開催が予定されている冬期オリンピックをチェチェンの武装グループの襲撃計画を止めさせると持ちかけたという。

 シリアから手を引かないとオリンピック期間中に襲わせると脅しているとロシア側は理解、プーチン大統領はバンダル長官に対し、サウジアラビアとチェチェンの反ロシア勢力との関係を知っていると応じたようだ。脅しに行き、プーチンを怒らせてしまう。ソチでの「テロ」はなかったが、三国同盟はウクライナでの工作を本格化、今年2月にクーデターを実行した。

 チェチェンの反ロシア勢力はグルジアのパンキシ渓谷を拠点にしている。そこでCIAはチェチェン人をリクルート、訓練して戦闘員を養成している。その一部がシリアへ派遣され、ISの戦闘員として200名から1000名が戦っていると伝えられている。

 シリアではウイグル人も戦闘に参加、その人数は今年の夏に急増したという。新疆ウイグル自治区からカンボジアやインドネシアを経由、トルコの情報機関MITの手引きでシリアへ入るのだとされている。その後、戦闘員は中国へ戻って攻撃を繰り返してきた。民族浄化に失敗したウクライナの東部へISの戦闘員を投入する可能性もあるだろう。

 ネオコンにとってISは重要な道具として機能している。中間選挙の結果、アメリカの議会ではそのネオコンの影響力が強まるわけで、アメリカ軍が前面に出るのか、ISが勢いをさらに増すのか。もうひとつの問題はどこまで戦闘員をコントロールできるかということ。

 ロビン・クック元英外相が死の1カ月前に書いたように、アル・カイダ(基地、ベースを意味)はCIAが雇い、訓練した数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル(データベース)。いわば派遣戦闘員の登録リスト。派遣切り、あるいは派遣を辞めた戦闘員を管理しきれるかということだ。派遣を辞め、元の雇い主を攻撃する可能性もある。それが傭兵というもの。いずれにしろ平和からは遠のきそうだ。






最終更新日  2014.11.07 03:19:33

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