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《櫻井ジャーナル》

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2015.03.17
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 FOXニュースの番組に軍事アナリストとして登場したロバート・スケールス退役少将はロシア人を殺せと発言した。そこまでアメリカの有力メディアは戦争に関して鈍感になっている。ロシアには脅しが通用しないと認識、実際に多くのロシア人を殺すしかないということのようだ。シリアの体制を転覆し、ウクライナを制圧する作戦が思惑通りに進まないことに苛立っているのかもしれない。

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 ロシア人を皆殺しにするべきだと主張している人物はウクライナにもいる。例えば、元首相で西側の覚えがめでたいユリア・ティモシェンコ。国家安全保障国防会議の副議長を務めたことのあるネストル・シュフリチと話した内容が盗聴され、YouTubeで公開されたのだ。クリミア情勢について知人と話した内容をシュフリチがティモシェンコへ伝え、それを聞いて彼女はロシア人を殺すと繰り返している。

 言うまでもなく、クリミアでロシアへ加盟する動きが吹き出した原因はキエフで起こったクーデターにある。2013年11月に始まった反政府運動は年が開けると暴力的になり、2月に入るとアメリカ/NATOを後ろ盾にするネオ・ナチのグループがクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチを大統領の座から引きずり下ろした。勿論、これは憲法違反だが、日頃、護憲、護憲と繰り返している日本の「リベラル派」や「革新勢力」も、このクーデターを支持していた。

 2013年12月にはアメリカからネオコン/シオニストがキエフへ乗り込んで体制転覆を扇動している。例えばジョン・マケインとジョー・リーバーマン両米上院議員。ビクトリア・ヌランド国務次官補はジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使は反政府運動の拠点になっていたユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクッキーを配るというパフォーマンス。1960年代の後半から70年代の前半にかけ、戦争に反対するアメリカの若者が行った「フラワー・パワー」の猿まね、中身のない猿芝居にも見えた。

 2月4日、そのヌランド次官補とパイアット大使が電話で「次期政権」の閣僚人事について話し合う内容が盗聴され、音声がYouTubeにアップロードされてしまった。その中でヌランドが高く評価していたのが銀行出身のアルセニー・ヤツェニュクだ。現在、首相として活動している。

 その当時、EUは話し合いで争乱を解決しようとしていたのだが、ヌランドはそれが気に入らない。そこで、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という表現が出てきたわけである。下品な表現を使ったことが問題なのではない。彼女は暴力的にヤヌコビッチ政権を倒し、ヤツェニュクを含む傀儡政権を樹立させようとしていたのだ。明らかな内政干渉。日本のマスコミはこうしたことに興味がないらしい。

 ヌランドの意向通り、2月18日頃からネオ・ナチは暴力をエスカレートさせた。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を警官隊に投げつけ、ピストルやライフルを持ち出して街を火と血の海にしたのである。

 21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印するのだが、翌22日には屋上からの狙撃で多くの死者が出始め、協定は実現しなかった。この日、議会は憲法の規定を無視してトゥルチノフを大統領代行に任命した。

 こうした状況の中、エストニアのウルマス・パエト外相が2月25日にキエフ入りして調査、その内容を26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者/イギリス人)へ電話で報告している:

 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(後の暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。

 この狙撃を指揮していたのはネオ・ナチを率いるひとり、アンドレイ・パルビーで、少なからぬ狙撃手がグルジアから来ていた可能性が高い。国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長を務めた後、議会の第1副議長に就任している。少なくとも、狙撃していたのは親米勢力だということをEUも2月26日に時点で認識していたわけだ。

 クーデターで排除され、場合によっては殺されていたヤヌコビッチの支持基盤は東部や南部。そうした地域の住民がキエフのクーデターに怒り、警戒し、拒否するのは当然。そうした中、最も早く動いたのがクリミアで、ロシアの構成主体としてロシアに加盟するかどうかを問う住民投票が3月16日に実施された。

 その投票率は80%を超え、そのうち95%以上が加盟に賛成したという。棄権した人も含め、全住民の4分の3以上が賛成したということになる。住民の意思は明確に示されたのだが、日頃、民意、民意と叫んでいる日本の「リベラル派」や「革新勢力」も、この住民投票を無視していた。

 アメリカの好戦派にとっても、ロシアにとっても、クリミアは戦略的に重要。セバストポリはロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしてきた。1991年にソ連が消滅するとクリミアはウクライナ領になるが、1997年にロシアとウクライナとの間で締結され、99年に発効した条約により、基地の使用と2万5000名までのロシア軍駐留が認められ、その当時から1万6000名が駐留。このロシア軍をキエフ政権や西側のメディアは「侵略軍」だと宣伝、今でもウクライナの東部や南部にはロシア軍がいるという偽情報を発信し続けている。

 キエフ政権はクリミアを軍事制圧すると主張、アメリカ/NATOは周辺に艦船や航空機などを配備し、軍事パレードや演習でロシアに圧力を加えている。スケールス少将のロシア人を殺せという発言には具体的な動きが伴っている。過去を振り返ると、カーチス・ルメイのようにソ連を先制核攻撃したがっていた軍人はいたわけで、スケールス少将の発言を軽く見てはいけない。

 スケールス少将と同じようにFOXニュースがアナリストとして雇ったポール・バレリー退役少将はIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を実際に指揮している、あるいは生みの親だと言われている。

 コンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューで、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないと語っているが、そうした考え方は以前からある。その代表例がヘンリー・キッシンジャーを育てたフリッツ・クレーマー。外交の基本を「脅し」だと考えているのだ。

 アメリカ/NATOの軍事力増強に対抗、ロシアも戦闘機や爆撃機を西部地域に配備するなど受けて立つ構えだ。クリミアには超音速の戦略爆撃機TU-22M3も演習のためい移動しているという。クリミア情勢によっては核兵器を臨戦態勢に置くことも検討していたとロシアのウラジミル・プーチン大統領が語ったそうだが、当然だろう。

 キエフではネオ・ナチを使ってクーデターを行ったアメリカ/NATOはクリミアを押さえ、ロシア軍の重要な基地を手に入れたと思っていたら、住民が反発しただけでなく現地のウクライナ軍もロシア側についてしまう。少数派を扇動することにも失敗、残された道は軍事侵攻という事態になっていたのだ。NATO軍が動けばロシア軍も出るということ。西側のメディアは、ロシア軍がアメリカ/NATO軍に抵抗することは許せないという立場から報道している。アメリカの脅しに怯え、従属するべきだとでも思っているのだろうか。

 当時、アメリカ/NATOの行動はロシアとの全面核戦争に発展する可能性があると警告する声が出ていた。それはそうした背景があるからだが、今、プーチン大統領が核兵器に言及し、軍事演習を実施している理由は今後の展開を念頭に置いているのだろう。

 すでにキエフ軍は東/南部で劣勢。ネオ・ナチを総動員し、国外から傭兵を投入しても追いつかず、アメリカ軍がウクライナへ入り始めている。ロシア軍がウクライナにいるという作り話とは違ってこれは事実。アメリカの好戦派がこのまま暴走すれば核戦争になるとプーチンは警告しているように思える。フランスやドイツの首脳がロシアへ乗り込み、ウクライナの和平について話し合いを始めたのも、暴走するアメリカの好戦派は正気でないと見切りをつけたからだろう。アメリカを何とかしないと核戦争になるという危機感を持っているように見える。ヌランドはまた「EUなんかくそくらえ」と叫んでいるかもしれない。日米メディアの反応を見ると、プーチンの警告は効果があったようだ。






最終更新日  2015.03.18 13:53:50

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