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日本に続き、アメリカでもプロ野球が開幕するらしい。約半年にわたるリーグ戦を経て秋にはナショナル・リーグとアメリカン・リーグの勝者が対戦、7回戦制で優勝チームを決めることになっている。これは「ワールド・シリーズ」と呼ばれているが、アメリカ国内のイベントに「ワールド」とつけてしまうところにアメリカ人の傲慢さが出ている。「ワールド」の回りが見えていない。
そのアメリカに従属することで自らの特権的な地位を維持しようとしているのが日本のエリート、つまり偏差値秀才の集まり。出題者が求める解答を出す能力はあるが、想定された正解のない問題には答えられない。そこで彼らはアメリカ支配層の命令を「正解」だということにしている。彼らが言うところの「世界」や「国際社会」はアメリカ支配層にほかならない。 そのアメリカ支配層も最近は内部対立が顕在化、バラク・オバマ大統領の周辺もネオコン/シオニストをはじめとする好戦派の暴走を懸念するようになっている。リチャード・ニクソンが言うところの「凶人理論」はアメリカの基本的な戦術だが、ロシアや中国を軍事的に脅すのは正気でないと考える人が増えているということだ。 かつて、ソ連を軍事的に殲滅するという計画はドイツだけでなくアメリカやイギリスも持っていた。例えば、第2次世界大戦の末期、ドイツが降伏した直後、イギリスではウィンストン・チャーチル首相の命令でJPS(合同作戦本部)はソ連を奇襲攻撃する計画を作成している。「アンシンカブル作戦」と名づけられ、7月1日に米英軍数十師団とドイツの10師団が「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。(Stephen Dorril著『MI6』Fourth Estate、2000年など) アメリカでは1945年4月12日にフランクリン・ルーズベルト大統領が執務室で急死すると政府内では反ファシストから反コミュニストへ方針が転換している。ルーズベルトを引き継いだハリー・トルーマンは上院議員時代、「ドイツが勝ちそうに見えたならロシアを助け、ロシアが勝ちそうならドイツを助け、そうやって可能な限り彼らに殺させよう」と提案した人物。イギリスの参謀本部が「アンシンカブル作戦」に反対しなければ、アメリカはソ連攻撃に参加していた可能性がある。 アメリカの外交部門にはロシア革命の直後からソ連を敵視する勢力が存在した。1917年3月の革命で成立した臨時革命政府の中心は「ブルジョア自由主義者」で、反対勢力からは「イギリスの傀儡」と見なされていた。これを見てドイツは亡命中だったウラジミール・レーニンなどボルシェビキのリーダーを帰国させ、11月の革命につながる。社会主義を掲げたソ連が登場したのだ。 このソ連と手を結ぼうとしたのが「ニューディール派」であり、敵対した勢力は「リガ派」と呼ばれている。このリガ派に属していた外交官にはジョージ・ケナンやジョセフ・グルーが含まれ、その背後にはジョン・フォスター・ダレス、ジェームズ・フォレスタル、ポール・ニッツェたちがいた。日本を戦前の体制へ回帰させたジャパン・ロビーと重なる。 第2次世界大戦の終盤、アメリカは原爆を手にする。好戦派はソ連との戦争で圧勝できると考えたようで、1949年に出された統合参謀本部の研究報告では70個の原爆をソ連へ落とすことになっていた。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年) 1955年にアメリカは2280発の核兵器を保有、テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、1957年初頭にアメリカ軍はソ連に対する先制核攻撃計画をスタートさせている。先制核攻撃に必要なICBMを準備できるのは1963年の終わりだと好戦派は見通していた。1961年に大統領はドワイト・アイゼンハワーからケネディに交代、7月になると軍や情報機関の幹部が新大統領に核攻撃のプランを説明したが、新大統領はこの計画に否定的な反応を示す。 この説明より前、4月15日にキューバを空爆、16日の会議で大統領は侵攻作戦を許可、17日に亡命キューバ人を中心とする部隊がピッグス湾(プラヤ・ギロン)上陸作戦を開始した。黒幕はCIAや軍の好戦派で、最初から侵攻作戦が失敗することは織り込み済みだったと見えられている。亡命キューバ人を救援するという名目でアメリカ軍が直接介入するつもりだったのだろうということだ。ところが、ケネディ大統領はアメリカ軍の直接的な介入を許可しなかった。 アメリカの好戦派は軍事侵攻を正当化するため、偽旗作戦を計画する。キューバ軍を装ってアメリカの都市で「テロ攻撃」を行い、最終的には無線操縦の旅客機をキューバ近くで自爆させてキューバ軍が撃墜したと宣伝、「報復攻撃」するというシナリオになっていた。いわゆる「ノースウッズ作戦」だが、これも大統領に阻止された。 そのケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺されてしまう。その直後、CIAは暗殺の背後にキューバやソ連がいるとする情報を流したが、FBIがこれを偽情報だとリンドン・ジョンソン大統領に知らせ、核戦争は回避された。 好戦派がソ連を先制核攻撃したがった理由のひとつは圧勝できると信じていたから。当時、アメリカのICBMにソ連は中距離ミサイルで対抗するしかなかった。そこでキューバが重要になってくる。ソ連がキューバへミサイルを運び込んだ理由はアメリカの先制核攻撃の計画にあると考えるのが合理的だ。 ソ連が消滅した後、ロシアはアメリカの傀儡だったボリス・エリツィンが大統領として君臨して西側やその手先の略奪に協力した。当然、ロシアの国力は衰え、アメリカに対抗するどころではなくなる。そうした状況を踏まえてキール・リーバーとダリル・プレスが書いた論文がフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載された。その論文はアメリカがロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると主張している。今でもネオコンはそのように考えているようで、ロシアや中国との核戦争に向かって暴走中だ。 自分たちを世界の支配者だと考えているネオコンはアル・カイダ/IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を使ってシリアの体制転覆を目指しているが、さらにイランを攻撃しようとしている。イランと話し合いを進めるバラク・オバマ大統領と対立しているということだ。その話し合いに反対する意見をアメリカのふたつの有力紙、つまりニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は掲載した。話し合いなどせず、イランを攻撃しろというのだ。 戦意高揚も「言論」なのかもしれないが、アメリカの有力メディアは平和を訴える声を軽視、戦争を正当化するために偽情報を広めてきた。アメリカは嘘の上に築かれた帝国。その嘘を積み重ねてきた有力メディアに所属、その中で安穏に暮らしている記者や編集者の「御託宣」を有り難がるのは滑稽だ。
最終更新日
2015.03.30 02:39:52
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