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《櫻井ジャーナル》

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2015.07.11
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 ギリシャは外部からの軍事的、そして経済的な侵略、またそうした外部勢力と結託した国内の腐敗グループによって深刻な財務問題を抱えることになった。そうした略奪集団の代理人であるIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカはその尻ぬぐいを庶民に押しつけている。それが緊縮財政だ。

 そうした理不尽な要求を拒否する姿勢をギリシャ人は今年に入って2度示した。1月25日に行われた総選挙で反緊縮を公約に掲げたシリザ(急進左翼進歩連合)に勝たせ、7月5日の国民投票では61%以上がトロイカの要求を拒否した。トロイカの要求で問題は解決されず、単に年金や賃金がさらに減額され、社会保障の水準も低下し続け、失業者を増やすだけ。利益を得るのは金融機関も政党もメディアも支配しているごく一部の支配層だ。

 ところが、アレクシス・チプラス政権は公約に反するトロイカの要求を受け入れた。政党の名前は「急進左翼進歩連合」と勇ましいが、エルネスト・チェ・ゲバラとは違い、革命家の集団ではなかったということだろう。ギリシャを窒息死させる道を選び、自分たちの命運もつきたということだが、国民が納得するとは思えない。混乱が激化する可能性もある。

 そうした混乱に治安当局が備えているとイギリスのサンデー・タイムズ紙が7月5日に伝えていた。この新聞、ネオコン/イスラエル第1派のルパート・マードックが所有し、最近は単なるプロパガンダ機関になっている。同紙によると、暴動に備え、軍も加わったネメシス(復讐の女神)という暗号名の秘密作戦が用意されているというのだ。

 その報道以上に注目されているのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補。シリザの勝利を受け、3月17日にギリシャを訪問してチプラス首相と会談したのだが、友好目的ではないだろう。

Nuland/Greece

 ヌランドとは何者なのか・・・

 5月14日から16日にかけて彼女はキエフを訪問してペトロ・ポロシェンコ大統領、ヤツェニュク首相、アルセン・アバコフ内務相、ボロディミール・グロイスマン最高会議議長らと会談、アメリカはウクライナの政府、主権、領土の統合を完全に確固として支持すると語っている。

 その直前、5月12日にジョン・ケリー国務長官もキエフを訪問、ポロシェンコ大統領と会ってクリミアやドンバス(ドネツクやルガンスク/ナバロシエ)の奪還を目指す作戦を実行してはならないと言明したのだが、それを無視しろと釘を刺すためにヌランドは乗り込んだのである。

 このヌランドはジョージ・W・ブッシュ政権で「摂政」だったと言われているリチャード・チェイニー副大統領の外交担当副補佐官を務め、2005年から08年にかけては大使としてNATOへ派遣されていた。

 2004年から05年にかけてウクライナでは「オレンジ革命」で親米派(アメリカの傀儡ということ)のクトル・ユシチェンコが実権を握っているが、この「革命」にチェイニー副大統領が関与しなかったとは考えられない。

 ウクライナのネオ・ナチは2006年頃からバルカン諸国にあるNATOの施設やポーランドで軍事訓練を受けてきたとも報道されている。言うまでもなく、2006年当時、ヌランドはNATOで大使として活動していた。

 こうしたことを承知でオバマはヌランドを2008年の大統領選挙でスタッフとして雇い入れ、現在に至っている。当初、オバマ政権の国務長官はヒラリー・クリントンだったが、このクリントンがヌランドと個人的に親しいこともヌランドが国務次官補に就任した一因だ。

 さて、今年3月、ヌランドはチプラス首相に対し、ロシアと戦っているNATOの結束を乱したり、ドイツやトロイカに対して債務不履行を宣言するなと警告、さらにクーデターや暗殺を示唆したとも言われている。

 この情報が正しいなら、自分の警告を無視して7月5日に国民投票を実施、その直前にはロシアのウラジミル・プーチン大統領と会って天然ガス輸送用のパイプライン、トルコ・ストリーム建設の話をしたチプラス首相にヌランドが激怒したことは間違いないだろう。

 アメリカの支配層に逆らう国では指導者が暗殺されたり、クーデターで体制が倒されたりしてきたのだが、NATO加盟国であるギリシャには政府がコントロールできない秘密部隊が存在している。イタリアではグラディオ、ギリシャでは特殊部隊のLOKだ。

 ところで、ヌランドを有名にしたのは、昨年2月23日にあったウクライナのクーデター。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領が憲法の規定を無視する形で排除されたのだが、その時に彼女は現場で指揮官的な役割を果たしていた。このクーデターはネオ・ナチを利用して行われている。

 その19日前、インターネット上にヌランドとジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使が電話でウクライナの「次期政権」の閣僚人事について話している音声がアップロードされている。その中でヌランドが高く評価、つまり自分たちに従順で命令を実行できる能力があるとされていたのがアルセニー・ヤツェニュク。実際、クーデター後、首相に就任している。

 その当時、EUはウクライナの混乱を話し合いで解決しようとしていた。それが気に入らないヌランドは会話の中で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉を口にしたのだが、日本のマスコミは話し合いのテーマや、なぜそうした表現をしたのかに触れず、単に下品な表現をしたということに焦点をあてていた。

 ヤヌコビッチ大統領に対する抗議活動が始まったのは2013年11月のことで、その中心になったのはユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)。抗議が暴力の度合いを一気に高めたのは2月中旬。広場ではネオ・ナチのメンバーが棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めている。ネオ・ナチは2500丁以上の銃を持ち込み、狙撃も始まって政権は倒された。

 25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は反ヤヌコビッチ派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査を実行、26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で結果を報告したのだが、それによるとスナイパーは反ヤヌコビッチ派の中にいるというものだった。

 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。それに対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。

 チプラス政権がアメリカの巨大金融資本やネオコンに屈服した背景は明確でないが、過去の例からすると、相当の脅しがあったことが推測できる。ただ、トロイカの要求は事態を深刻化させるだけ。ギリシャの庶民が黙って餓死を待つとも思えない。





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最終更新日  2015.07.12 13:40:31



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